公衆浴場におけるレジオネラの消毒方法に関する研究

文献情報

文献番号
200942011A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場におけるレジオネラの消毒方法に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 細菌第1部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉 文明(国立感染症研究所 細菌第1部)
  • 秋山 茂(北里大学 医療衛生学)
  • 坂上 吉一(近畿大学農学部 公衆衛生学)
  • 神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 縣 邦雄(アクアス㈱つくば総合研究所)
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,205,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
入浴施設はレジオネラによる汚染が起きやすい環境である。現行の遊離残量塩素の欠点を補うべく結合塩素(クロラミン)消毒について実験室ならびに実機レベルで検討する。併せて、用時調製が必要なクロラミンの生成・保存ついて検討する。浴槽水等に係る新規消毒薬の検証方法について情報提供する。
研究方法
実機(モデル浴槽)レベルでレジオネラ、宿主アメーバ及び従属栄養細菌等その他微生物に対する無機クロラミンの消毒効果を検証し、浴槽水への効果的な使用方法を検討する。入浴に伴う有機物の蓄積と無機クロラミンの挙動(モノ-、ジ-、トリ-クロラミンの継時変化等)を明らかにする。結合型塩素による消毒に転換することで管理の簡素化を実現し、レジオネラ症の感染リスク低減に寄与する。同時に、浴槽水等に係る新規消毒薬の有効性評価方法について情報提供する。
結果と考察
モノクロラミンはレジオネラの菌種や血清型によらず高い不活化効果を示し、pH7.5でCt99≒4.2mg・min/L、pH 8.8ではCt99≒15.5mg・min/Lと計算された。また、入浴を伴う循環式モデル浴槽(浴槽水2トン)において、モノクロラミンを2?3mg/L程度に保つことでろ過器を含む浴槽系内のレジオネラ属菌および宿主アメーバを不検出の状態に保ち、その他の浮遊細菌類やバイオフィルムにも強い消毒効果を示した。消毒副生成物はジハロアセトニトリル類が主であった。浴槽水等の消毒剤の許認可に向けた国際的な動向としてOECDのガイドライン(ドラフト)を紹介した。モノクロラミンは用時調整が必要なことから、生成方法と保存に係る要点を示した。
結論
結合型の塩素であるモノクロラミン(2?3mg/L)による浴槽水のレジオネラ汚染対策に効果的な薬剤であるとの結論を得た。遊離残留塩素に比べ化学的に安定であることから、浴槽水中での薬剤の濃度管理が容易である。配管系や人工的に作成したスポンジ内のバイオフィルムに対しても消毒効果が認められた。浴槽水中の濃度は簡易測定法であるDPD比色法(全塩素量)が使用可能であった。モノクロラミンは現場で用時調製が必要であるが、連続測定も可能で、自動注入装置の開発に向けた障壁は無い。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200942011B
報告書区分
総合
研究課題名
公衆浴場におけるレジオネラの消毒方法に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 細菌第1部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉 文明(国立感染症研究所 細菌第1部)
  • 秋山 茂(国立感染症研究所 細菌第1部)
  • 坂上 吉一(近畿大学農学部 公衆衛生学)
  • 神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 縣 邦雄(アクアス㈱つくば総合研究所)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
入浴施設はレジオネラによる汚染が起きやすい環境である。現行の遊離残量塩素に換わる、あるいはその欠点を補うべく結合塩素(モノクロラミン)消毒について実験室ならびに実機レベルで検証する。併せて、用時調製が必要なクロラミンの生成・保存ついて検討し、レジオネラ症の感染リスク低減に寄与する。浴槽水等に係る新規消毒薬の検証方法について情報提供する。
研究方法
レジオネラおよび宿主アメーバに対するモノクロラミンの不活化効果を明らかとし、実機(モデル浴槽)レベルでこれらおよびその他の微生物に対する制御果を検証する。モデル浴槽でのクロラミンの挙動(モノ-、ジ-、トリ-クロラミンの継時変化等)を明らかにし、浴槽水への効果的な使用方法を示す。また、動物実験により本薬剤の皮膚刺激性を検討する。併せて、浴槽水等に係る新規消毒薬の有効性評価方法について国際的な動向を把握する。
結果と考察
無機モノクロラミンはレジオネラの菌種や血清型によらず高い不活化効果を示し、入浴を伴う実機試験(浴槽水2トンのモデル浴槽)において2?3mg/Lの濃度で浴槽系内のレジオネラ属菌および宿主アメーバを不検出の状態に維持できることが確認された。本剤はバイオフィルムにも強い消毒効果を示すこと、臭気がほとんどないこと、高pHあるいはアンモニアや有機物の存在下でも消毒効果を示すこと、科学的に安定で濃度管理が容易なことなど浴槽水の消毒剤として優れた特性を示した。有機クロラミンでは十分な消毒効果は得られなかった。本剤由来の消毒副生成物はジハロアセトニトリル類が主であった。浴槽水等の消毒剤の許認可に向けた国際的な動向としてOECDのガイドライン(ドラフト)を紹介した。浴槽水中の濃度は簡易測定法であるDPD比色法(全塩素量)が使用可能であった。モノクロラミンは用時調整が必要なことから、生成方法と保存に係る要点を示した。
結論
結合型の塩素であるモノクロラミン(2?3mg/L)は浴槽水のレジオネラ汚染対策に効果的な薬剤で、遊離残留塩素消毒の欠点を補完あるいは転換する消毒剤であると結論される。化学的に安定なことから浴槽水中での薬剤の濃度管理が容易で、本剤の使用により浴槽水の衛生管理の簡素化が測られるものと期待される。一方、モノクロラミンは現場での用時調製が必要であるが、連続自動測定も可能で自動注入装置の開発に向けた障壁はない。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
結合型の塩素であるモノクロラミン(2?3mg/L)が浴槽水のレジオネラ汚染対策に効果的な薬剤で、遊離残留塩素消毒の欠点を補完あるいは転換する消毒剤であることを検証した。本剤は化学的に安定なことから浴槽水中での薬剤の濃度管理が容易で、本剤の使用により浴槽水の衛生管理の簡素化が測られるものと期待される。本剤は現場での用時調製が必要であるが、連続自動測定が可能で自動注入装置の開発は可能である。
臨床的観点からの成果
本研究は浴槽水のレジオネラ汚染の防止に向けた消毒方法を示したもので、間接的にレジオネラ症の発生阻止に寄与する。
ガイドライン等の開発
今後、浴槽水のレジオネラ汚染防止に係る条例、あるいは対策指針策定(改編)に際しての基礎的研究成果として参照されるものと期待される。
その他行政的観点からの成果
研究内容は各年度末に開催される厚生労働省健康局生活衛生課の主催による生活衛生関連技術者研修会(レジオネラ症対策等について)において報告された。
その他のインパクト
研究内容は各年度末に開催される厚生労働省健康局生活衛生課の主催による生活衛生関連技術者研修会(レジオネラ症対策等について)において報告された。

発表件数

原著論文(和文)
5件
感染症学雑誌 等
原著論文(英文等)
1件
JournalofMicrobiologicalMethods
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
日本公衆衛生学会、日本寄生虫学会、日本防菌防黴学会、日本薬学会 等
学会発表(国際学会等)
6件
European Working Group for Legionella infections 等
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
研究内容は各年度末に開催される厚生労働省健康局生活衛生課の主催による生活衛生関連技術者研修会(レジオネラ症対策等について)において報告された。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
遠藤卓郎、泉山信司、八木田健司
生活用水のアメーバ汚染
化学療法の領域 , 23 (4) , 65-68  (2007)
原著論文2
高橋淳子, 久保田佳子, 小島幸一、et al.
各種浴場施設内における消毒副生成物の曝露評価
ビルと環境 , 117 , 27-32  (2007)
原著論文3
村上光一,長野英俊,野田多美枝、et al.
浴場施設でのレジオネラ属菌と宿主アメーバの関連,およびレジオネラ属菌を塩素消毒により制御する場合の問題点
防菌防黴 , 136 (11) , 749-756  (2008)
原著論文4
烏谷竜哉、黒木俊郎、大谷勝実、et al.
掛け流し式温泉におけるレジオネラ属菌汚染とリスク因子
感染症学雑誌 , 83 , 36-44  (2009)
原著論文5
杉山寛治、小坂浩司、泉山信司、et al.
モノクロラミン消毒による浴槽レジオネラ属菌の衛生対策
保健医療科学 , 59  (2010)
原著論文6
Toshitsugu Taguri, Yasunori Oda, Kanji Sugiyama, et al.
A rapid detection method using flow cytometry to monitor the risk of Legionella in bath water.
JournalofMicrobiologicalMethods (Accepted)  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-11-25
更新日
-