化学物質の胎内ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
200941026A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の胎内ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
成田 正明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田代 朋子(青山学院大学 理工学部)
  • 横山 和仁(順天堂大学 医学部)
  • 成田 奈緒子(文教大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の日常生活において使用される化学物質は数万種に及ぶといわれ、国民生活を豊かなものとすることに貢献している反面、ヒトの健康への有害影響が社会的に懸念されている。本研究班では化学物質の胎生期・発達期ばく露に焦点をあて、それによって引き起こされる生後の情動・認知行動異常を、基礎医学・臨床医学・社会医学的側面から包括的に理解し今後の厚生労働行政に資する貢献を目指すと共に、広く国民への啓蒙を目的とする。
研究方法
本研究の遂行、特にヒトが関係する臨床研究、動物実験に当たっては、倫理的規定、即ち当該研究機関における倫理委員会の承認のもとで行った。
初年度にあたる平成21年度は、動物実験を通しての化学物質の胎生期ばく露による生後の情動・認知行動異常に至る機序の解明、ばく露の有無のバイオマーカーの検索、ヒトでの情動・認知行動異常の非侵襲的な手法による客観的評価、全国大規模疫学調査による、生体試料(毛髪や抜けた歯)からの重金属をはじめとする有害化学物質の検出と質問紙による情動・認知行動異常との関連付けを試みた。
結果と考察
1、胎生期の化学物質ばく露による生後の情動・認知行動異常解明のためのモデル動物として研究代表者らが報告してきている、胎生期のサリドマイドや抗てんかん薬バルプロ酸Na(VPA)投与によるばく露モデル動物を解析し化学物質ばく露は生後脳に機能的異常をもたらすことを明らかにした。バイオマーカー候補も見つかった。
2、生後の情動・認知行動の異常のひとつ、自閉症スペクトラム障害(ASD)について、ヒト被験者に協力して頂いて、近赤外線酸素モニターを用いて非侵襲的に脳機能を評価し、情動・認知行動異常に対する非侵襲的な脳機能評価の手法を開発した。
3、疫学的調査として、環境有害化学物質が長く蓄積するとされる毛髪、抜けた乳歯を提供して頂き、合わせて発達に関する調査票(質問紙)も記入して頂き、発達の異常と、有害物質の蓄積の有無について、全国規模で調査を開始した。
結論
化学物質の胎内ばく露による生後の情動・認知行動の異常について、妊娠動物を用いたばく露モデル実験で様々な機能異常が見つかった。この異常はヒトでどう表現型として表れるか、非侵襲的脳機能評価法を確立中である。疫学調査で歯牙、毛髪、発達に関する質問紙の回収率の高さは国民の関心不安が高まっているといえる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
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