出生コホートによる難分解性有機汚染物質(POPs)ばく露の次世代影響の検証

文献情報

文献番号
200941023A
報告書区分
総括
研究課題名
出生コホートによる難分解性有機汚染物質(POPs)ばく露の次世代影響の検証
課題番号
H21-化学・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 洋(東北大学大学院 医学系研究科・環境保健医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 徹(東北大学大学院 教育学研究科・発達障害学)
  • 村田 勝敬(秋田大学大学院 医学系研究科・環境保健学)
  • 奈良 隆寛(宮城県立こども病院)
  • 福土 審(東北大学大学院 医学系研究科・行動医学分野)
  • 仲井 邦彦(東北大学大学院 医学系研究科・環境保健医学分野)
  • 黒川 修行(東北大学大学院 医学系研究科・環境保健医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
32,810,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎児期および新生児期は中枢神経系が発達する時期であり、化学物質ばく露に対して感受性が高い。海外における先行研究により、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニール(PCB)、有機塩素系農薬などの残留性有機汚染物質(POPs)およびメチル水銀などの化学物質の周産期ばく露が出生児の発達に影響することが報告されている。これら化学物質は魚介類を介して摂取されるが、日本では特有の食文化を有しているため、独自の検討が必要であると考えられた。そこで、POPsおよびメチル水銀ばく露に起因した健康影響を明らかにすることを目的とし、前向きコホート調査を進めてきた。
研究方法
本年度は、生後66ヶ月で実施した適応行動と不適応行動に関するアンケート調査を終了し、生後84ヶ月調査(知能検査を含む多角的な検査バッテリー)を継続して進めた。さらに、これまでに終了した生後30ヶ月(Child Behavior Checklist age for 2-3、CBCL)および生後66ヶ月で実施したアンケート調査のデータ整理を行い、臍帯血PCBおよび母親毛髪水銀との関連性を解析した。
結果と考察
生後66ヶ月調査について、580家族に質問紙を送付し、456件から回答を得た(回収率78.6%)。生後84ヶ月調査では、386家族に案内を送付し、318家族が調査に参加した(参加率82.4%)。生後30ヶ月時に実施したCBCLの得点と母親毛髪総水銀との間に関連性はみられなかったものの、臍帯血PCBとCBCLの9つある因子の中の不安神経質因子で有意な関連性が認められた。適応行動および不適応行動とばく露指標との関連性について検討した結果、統計学的に有意な関連性はみられなかった。
結論
周産期における化学物質ばく露と出生児の発達の関連性を検討するため、コホート調査を進めてきた。調査への出席率およびアンケート調査への返送率は70%を越えており、順調と考えられた。さらに、生後30ヶ月で実施したCBCLの得点と母親の毛髪総水銀には関連性はみられなかったが、臍帯血PCBと関連性が確認された。生後66ヶ月で実施した適応行動および不適応行動については、いずれも関連性は確認されなかった。今後、生後84ヶ月調査を継続し、さらに母乳によるPOPsばく露評価を進めて行く計画である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
-