有害作用標的性に基づいた発達期の化学物質暴露影響評価手法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200941022A
報告書区分
総括
研究課題名
有害作用標的性に基づいた発達期の化学物質暴露影響評価手法の確立に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学 大学院 共生科学技術研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 勉(星薬科大学薬品毒性学)
  • 手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部)
  • 渡辺 渡(九州保健福祉大学薬学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発達期の神経毒性、免疫毒性、発がん性に関して、動物を用いた暴露実験を行い、有害作用を受ける標的細胞系譜の同定とその影響メカニズムの解明に基づいた評価系の構築を目指す。
研究方法
21年度は、In vivo神経発達評価ではラットやマウスを用いて、Mnやアクリルアミド(ACR)の発達期暴露及び発達期低栄養に起因する脳発達遅延実験を行い、海馬歯状回での分子発現解析を実施した。In vitro神経発達評価では、Mnを用いて、各種初代培養やマウス神経幹細胞、ES細胞分化誘導による評価系の構築を図った。免疫機能評価及び感染感受性評価ではメタミドホスにつきBALB/cマウスの周産期暴露を実施し、それぞれフローサイトメーターによる細胞性免疫のサブセットの解析、仔マウスにRSウイルスを経鼻感染後の感染病態評価を行った。発がん感受性評価では、ラットENU経胎盤投与モデルを利用してMnの発がん促進実験を開始・継続した。
結果と考察
In vivo神経発達評価では、Mnはマウス、ACRはラットを用いた実験で、今までに報告のない海馬歯状回でのニューロンの移動異常・新生障害の可能性を見出し、感度・不可逆性の点で神経発達毒のスクリーニングに活用が期待される。また、この指標は母体毒性に伴う様な児動物の低栄養による脳発達遅延では変動を示さず、全身毒性に影響されないニューロン発達障害検出系としての活用が期待される。In vitro神経発達評価では、Mnによるニューロンとグリア細胞の発生影響の可能性が示唆され、今後の確立・活用が期待される。免疫機能評価と感染感受性評価では、仔マウスに対するメタミドホスの影響は軽微なものが多く、今後検討する同様のChE阻害剤であるクロルピリホスの影響と比較し、有機リン系殺虫剤として総合的に有害作用を考察する。発がん感受性評価では、今後Mnの評価を終了し、発達期に被験物質投与が可能でかつ感受性の高いラット中枢神経発がんモデルとしての活用を目指す。
結論
各評価系とも21年度予定の物質評価を終了ないし継続し、殊にin vivoないしin vitro神経発達評価では、MnとACRによる新たな神経発達影響と、その指標が全身毒性に影響されないニューロン発達障害検出系として活用し得ることを見出した。免疫機能評価と感染感受性評価では、メタミドホスの影響は認めなかった。発がん感受性評価では、Mnの評価を継続した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-