胎児への食品汚染物質曝露による性未成熟のインプリンティングとその評価法開発

文献情報

文献番号
200941021A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児への食品汚染物質曝露による性未成熟のインプリンティングとその評価法開発
課題番号
H21-化学・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 英之(九州大学 大学院 薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 祐次(九州大学 大学院 薬学研究院)
  • 石田 卓巳(九州大学 大学院 薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 最強毒性のダイオキシンと言われる2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)を用いて、以下の検討を実施した。すなわち、1)脳下垂体ホルモンやステロイド合成系タンパク質の胎児特異的な低下が脳のエネルギー生産や神経伝達等に関与する物質の生産低下に起因する可能性を検証するため、低分子化合物群の存在状況を網羅的に解析した(メタボローム解析)。また、2)TCDDが酸化的ストレス亢進を介してゴナドトロピン障害等を惹起するか否かを明らかにするため、抗酸化物質の保護効果について検討を行った。
研究方法
1. メタボローム解析
 妊娠Wistarラットの雄胎児および、成熟雄性ラットより脳組織を調製し、組織中の極性成分を分析した。
2. 酸化的ストレスの影響の解析
 妊娠 Wistarラットに、TCDDに加えてα-lipoic acid (α-LA)等の4種の抗酸化物質を与え、胎児組織の遺伝子等発現状況を解析した。
結果と考察
1. TCDDによる脳メタボロームの変動とその年齢差
 メタボローム変動を解析した結果、胎児の視床下部では多くの成分がTCDD依存的に減少することが示唆された。減少する成分は、エネルギー生産に関与する有機酸や糖類、並びにアミノ酸などが推定された。これらの結果から、胎児ゴナドトロピンのTCDDによる障害は、その上流の機構として、視床下部のエネルギー生産性物質や神経伝達物質等の低下に起因する可能性が考えられた。

2. TCDDの脳下垂体ゴナドトロピン低下作用における酸化的ストレスの寄与
 TCDD曝露母ラットの胎児では、精巣の性ステロイド合成系タンパク質や脳下垂体ゴナドトロピンの発現が対照群と比較して有意に低下した。しかし、母ラットにα-LAを併用した場合にのみ、これらの低下が完全に回復した。α-LAには抗酸化物質としての性質以外に、アセチルCoA合成等に関与する補酵素としての働きがある。このことから、α-LAは補酵素作用に基づいて保護効果を現すものと推定された。
結論
1. TCDDによる胎児脳下垂体ゴナドトロピンと生殖腺ステロイド合成への障害が、必須栄養素であるα-LAによって消去できることを見い出した。
2. TCDDによる胎児ゴナドトロピン障害は、視床下部での生理的代謝プロセスを損傷する機構によって出現する可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-09
更新日
-