文献情報
文献番号
202410022A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMならびに類縁疾患の患者レジストリによる診療連携体制および相談機能の強化と診療ガイドラインの改訂
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 原 誠(日本大学 医学部 内科学系 神経内科学分野)
- 磯部 紀子(黒木 紀子)(九州大学 大学院医学研究院)
- 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
- 川上 純(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
- 湯沢 賢治(国立病院機構水戸医療センター 臨床研究部)
- 笠井 高士(京都府立医科大学 大学院医学研究科 脳神経内科学)
- 久保田 龍二(鹿児島大学医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
- 松浦 英治(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 松尾 朋博(長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科)
- 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 田辺 健一郎(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
- 鴨居 功樹(東京医科歯科大学 医学部附属病院)
- 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 脳神経内科)
- 村井 弘之(国際医療福祉大学医学部神経内科学)
- 内丸 薫(昭和医科大学 学長直属)
- 坪井 義夫(順天堂大学 大学院医学研究科 PD長期観察共同研究講座)
- 石原 聡(琉球大学病院 第三内科)
- 新野 正明(国立病院機構北海道医療センター 臨床研究部)
- 永井 将弘(愛媛大学医学部附属病院臨床研究支援センター)
- 梅北 邦彦(宮崎大学医学部内科学講座免疫感染病態学分野)
- 竹之内 徳博(関西医科大学 医学部 微生物学講座)
- 佐々木 信幸(聖マリアンナ医科大学 リハビリテーション医学)
- 曽根 正勝(聖マリアンナ医科大学)
- 勝野 雅央(名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科)
- 佐藤 克也(長崎大学 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先行研究で、我々が作成した「HAM診療ガイドライン2019」の実践度の評価や導入の問題点を調査した結果、脳神経内科専門医であってもHAMの診療経験が少なくHTLV-1に関する認知度が低いこと、HAMの活動性の把握に重要なバイオマーカーの測定が可能な環境が整っていない等の問題があることが判明した。そこで本研究では、HAMねっとを基盤とした診療連携体制(主治医と患者の相談支援)を強化する。また、診療ガイドラインの改訂と、最近バセドウ病との関連で重要な知見が得られたHTLV-1ぶどう膜炎(HU)の患者レジストリ構築と疫学特性の解明を目指す。
研究方法
① HAM診療ガイドラインの改訂は、Mindsのマニュアルを活用しGRADEアプローチに基づいて進める。② HAMねっとを基盤とした診療連携体制の強化として、HAMの診療に重要なバイオマーカー測定を可能とした「新HAMねっとの構築と運営」、「主治医相談支援および患者相談支援のためのホームページ改修」を中心に、従来から継続している「HAMねっとデータを用いた疫学調査」を実施した。③ HU患者レジストリの研究プロトコールを元にHUレジストリの構築をすすめた。
結果と考察
① HAM診療ガイドラインの改訂
HAMと遺伝性痙性対麻痺の鑑別方法やHAMの診断基準に有用な脳脊髄液HTLV-1抗体検査法などに関する報新規エビデンスの収集に努めた。その情報を元に「厚生労働省研究班によるHAMの診断基準」の見直しを行った。また、「HTLV-1関連脊髄症(HAM)診療ガイドライン2025改訂版」のスコープ案を作成した。
② HAMねっとを基盤とした診療連携体制の強化
「新HAMねっとの構築と運営」に関して、2024年4月18日時点で110施設の共同研究機関登録が完了し、順調に数を増やしている。都道府県別にみると47都道府県のうち39都道府県をカバーしており、新HAMねっとの実施によりHAMの全国診療ネットワークの構築につながっている。次に、「主治医相談支援および患者相談支援のためのウェブサイト改修」を行った。昨年度全面改訂された主治医相談支援および患者相談支援のためのウェブサイト「HAMねっと(https://htlv1.jp/hamnet/)」を更新した。主治医からの相談支援については、新HAM ねっとの共同研究機関登録方法、検査依頼後の相談申込方法をウェブサイトに掲載した。この活動は共同研究機関の登録数増加、主治医からの相談件数の増加につながっている。また、患者からの相談支援については、HAM患者に対するリハビリテーションの動画を閲覧可能とし、HAM患者とその家族に有用で正確な情報を提供した。さらに「HAMねっとデータを用いた疫学解析」では、2010年代以降のHAM発症者において、20歳代以下の発症が認められないことが判明し、わが国での母子感染予防対策の効果が現れている可能性が示唆された。一方で、発症年齢の高齢化が進んでおり、母子感染による若年発症者の減少と相対的な水平感染による高齢発症者の増加による可能性があり、今後の水平感染対策の重要性が示唆された。また、「新HAMねっと」では難病プラットフォームと連携し、難病で横断的に健康関連QOLを評価可能であるEQ-5D-5Lスコアを評価した。その結果、HAM患者のEQ-5D-5Lスコア(平均±SD)は0.490±0.210と、日本人の一般人口と比較して疾病/症状の最小重要差(minimal important difference:MID)の推定値(0.05-0.1)以上に大きく低下していることが明らかとなった。
③ HUレジストリの構築と疫学解析
HU患者およびHTLV-1陽性バセドウ病患者を対象としたレジストリ構築のためのプロトコール骨子を策定、HTLV-1感染者レジストリ(JSPFAD)(研究代表者:山野嘉久)にHUレジストリを構築した。
HAMと遺伝性痙性対麻痺の鑑別方法やHAMの診断基準に有用な脳脊髄液HTLV-1抗体検査法などに関する報新規エビデンスの収集に努めた。その情報を元に「厚生労働省研究班によるHAMの診断基準」の見直しを行った。また、「HTLV-1関連脊髄症(HAM)診療ガイドライン2025改訂版」のスコープ案を作成した。
② HAMねっとを基盤とした診療連携体制の強化
「新HAMねっとの構築と運営」に関して、2024年4月18日時点で110施設の共同研究機関登録が完了し、順調に数を増やしている。都道府県別にみると47都道府県のうち39都道府県をカバーしており、新HAMねっとの実施によりHAMの全国診療ネットワークの構築につながっている。次に、「主治医相談支援および患者相談支援のためのウェブサイト改修」を行った。昨年度全面改訂された主治医相談支援および患者相談支援のためのウェブサイト「HAMねっと(https://htlv1.jp/hamnet/)」を更新した。主治医からの相談支援については、新HAM ねっとの共同研究機関登録方法、検査依頼後の相談申込方法をウェブサイトに掲載した。この活動は共同研究機関の登録数増加、主治医からの相談件数の増加につながっている。また、患者からの相談支援については、HAM患者に対するリハビリテーションの動画を閲覧可能とし、HAM患者とその家族に有用で正確な情報を提供した。さらに「HAMねっとデータを用いた疫学解析」では、2010年代以降のHAM発症者において、20歳代以下の発症が認められないことが判明し、わが国での母子感染予防対策の効果が現れている可能性が示唆された。一方で、発症年齢の高齢化が進んでおり、母子感染による若年発症者の減少と相対的な水平感染による高齢発症者の増加による可能性があり、今後の水平感染対策の重要性が示唆された。また、「新HAMねっと」では難病プラットフォームと連携し、難病で横断的に健康関連QOLを評価可能であるEQ-5D-5Lスコアを評価した。その結果、HAM患者のEQ-5D-5Lスコア(平均±SD)は0.490±0.210と、日本人の一般人口と比較して疾病/症状の最小重要差(minimal important difference:MID)の推定値(0.05-0.1)以上に大きく低下していることが明らかとなった。
③ HUレジストリの構築と疫学解析
HU患者およびHTLV-1陽性バセドウ病患者を対象としたレジストリ構築のためのプロトコール骨子を策定、HTLV-1感染者レジストリ(JSPFAD)(研究代表者:山野嘉久)にHUレジストリを構築した。
結論
本研究班はHAM診療ガイドラインの改訂に向け、スコープ案を策定できた。また、主治医への相談支援体制も整備し、患者に対してもリハビリテーションの動画をwebサイトで閲覧可能にする等、相談支援を充実させた。このような主治医と患者の両面から支援体制基盤を強化することで、全国の患者のQOL向上に貢献することが期待される。さらに、HU発症におけるバセドウ病とその治療薬の因果関係については、HUレジストリの構築による疫学解析が喫緊の課題であるが、これまでのレジストリ構築の経験を活かして進捗している。このように、本研究ではHAMに関連する研究や情報が有機的につながることで、全国の診療体制強化と患者のQOL向上に寄与し、HTLV-1総合対策を大きく前進させることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-10-17
更新日
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