確率推論型アルゴリズムに対するヒト胚性幹細胞試験データ適用法の標準化

文献情報

文献番号
200941019A
報告書区分
総括
研究課題名
確率推論型アルゴリズムに対するヒト胚性幹細胞試験データ適用法の標準化
課題番号
H21-化学・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大迫 誠一郎(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 秀子(国立環境研究所 環境リスク研究センター)
  • 藤渕 航(産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
23,110,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ES細胞からの分化培養系は受精卵から成熟個体に至るまでの過程を再現しており、発生影響試験の理想的モデルと言える。本研究では化学物質の安全性評価で重要な問題であるヒトへの生体影響を予測するため、ヒト胚性幹細胞試験(EST)を利用、遺伝子発現や形態情報から数理工学理論に基づき、ヒトへの影響レベルの予測を試みるが、そのために使用する確率推論アルゴリズムに適用するための実験系確立ならびにシステム標準化を目的とする。
研究方法
マウスおよびヒトES細胞の神経細胞分化系で、化学物質3種(TCDD・サリドマイド・メチル水銀)の曝露試験を実施し、遺伝子発現情報ならびに全自動細胞形態解析装置で神経突起形態を測定した。またSVMによる影響類型化の予備試験を行った。
結果と考察
ベイズ推定で「表現型構成要素間ネットワーク」における各ノード間ベータ値のデータテーブル化を行った結果、サリドマイドにも神経細胞分化影響があることが示唆された。神経軸索伸張に関する遺伝子ネットワークでは、TCDDでAhR調節機構異常、サリドマイドでは軸索伸張の抑制作用が示唆された。また、メチル水銀はマウス胚様体の生存率を低下させたが、生存した神経突起の伸長には影響がなく、ヒト胚様体への生存率には影響がないものの、分化神経突起の伸長には抑制的効果を示した。これはヒト神経細胞への特有の効果だと考えられる。また、化学物質の細胞影響のサポートベクターマシーン(SVM)によるスコア化に関するパイロットスタディとして、論文を元に、化合物の構造式から共通に存在する構造パターンとアミノ酸配列を抽出、カーネルSVMによって、GPCRタンパク質と化合物の対応を予測した結果、学習効果に高い精度が確認できた。また、16種類の抗がん剤によるヒト細胞株のマイクロアレイデータとKEGGパスウェイにおける相関関係に関して、カーネル正準相関解析を行った結果、ニトロソ尿素系アルキル化剤類が特定の2つのパスウェイと高い正の相関関係を示した。
結論
開発したESTは、同一化合物であってもヒトにおける特徴的影響を観察できることが実証された。評価法として用いるベイズ推定モデルも、遺伝子発現による細胞表現型に予測性を持つことがわかった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-