ナノマテリアルの健康影響の評価手法に関する総合研究

文献情報

文献番号
200941013A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの健康影響の評価手法に関する総合研究
課題番号
H20-化学・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 健(東京理科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 伸(京都大学 霊長類研究所)
  • 菅又 昌雄(栃木臨床病理研究所)
  • 井原 智美(栃木臨床病理研究所)
  • 二瓶 好正(東京理科大学)
  • 矢島 博文(東京理科大学 理学部)
  • 押尾 茂(奥羽大学 薬学部)
  • 盛口 敬一(愛知学院大学 歯学部)
  • 光永 総子(京都大学 霊長類研究所)
  • 田畑 真佐子(東京理科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
41,730,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本プロジェクトではナノマテリアルを妊娠期曝露後、母獣、出生した子における体内挙動を長期間にわたって把握するとともに、生体影響評価手法を病理学的に、また、薬理学的、物理化学的、分子生物学的解析手段をもちいて確立する。げっ歯類の他に胎盤特性(構造および薬物透過性)や化学物質応答性がヒトと高い共通性を持つ霊長類への影響を比較検討し、ヒトへの外挿可能な健康影響評価手法を確立する。
研究方法
妊娠マウスにナノマテリアルを投与し、出生した仔の脳神経系、雄性生殖系への影響を検討した。組織内のナノマテリアルの検出・同定は、FE-SEM及びX線スペクトロ解析で行った。妊娠アカゲザルの妊娠中期から後期に、ディーゼル排気ナノ粒子(DEP)、 非金属ナノ粒子(カーボンブラック:CB)および金属ナノ粒子(酸化チタン:TiO2)を投与し、経胎盤的に胎仔に達したナノマテリアルの脳・神経系への影響を検討した。また、アカゲザル新生仔および成獣を用い、それらの背部皮内に上記ナノマテリアルを投与し、投与部位、リンパ節、主要組織での免疫機能への影響を検討した。
結果と考察
新たにGO TermおよびMeSH Termを用いたアノテーション解析法を確立し、それらを用いて産仔脳の遺伝子発現を調べた。酸化チタン胎仔期曝露によりアポトーシスや発達・成長、酸化ストレス、さらに、情動や疾患に関連するTermが変動することが認められた。化粧品に汎用されるルチル型酸化チタンは雄性生殖系に影響を及ぼすこと、アルミナ表面加工の酸化チタンがより強い活性を示すことが明らかになった。
 母親サルにナノマテリアル投与された胎仔脳において、顕著なヘモグロビン遺伝子の発現亢進が、さらに、ヘモグロビンの発現増加が認められた。新生仔・成獣において皮内投与したナノマテリアルが、投与局所および近傍リンパ節において免疫担当細胞を強く刺激し、免疫応答の方向性をtype IIにモジュレートすることを見いだした。この作用・影響は微量でも惹起され、投与2年後も持続する長期影響であることが明らかになった。
結論
マウスの系において、ナノマテリアルが妊娠中の動物体内に入ると、母から仔に移行し、成長する過程で様々な影響を及ぼすこと、また、サルモデルの系で、ナノマテリアルが共通して胎仔脳神経および新生仔・成獣免疫系に影響を及ぼすことが明らかになった。上記研究の過程で、いくつかの有用なナノマテリアルリスク評価系が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-