ナノマテリアルの遺伝毒性及び発がん性に関する研究

文献情報

文献番号
200941012A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの遺伝毒性及び発がん性に関する研究
課題番号
H20-化学・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
戸塚 ゆ加里(国立がんセンター研究所 がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 葛西 宏(産業医科大学 職業性腫瘍学部)
  • 渡邉 昌俊(横浜国立大学大学院工学研究院医工学)
  • 市瀬 孝道(大分県立看護科学大学 看護学部)
  • 中江 大(東京都健康安全研究センター 環境保健部)
  • 増田 修一(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
34,454,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化粧品や商業用品等に頻繁に用いられている種々のナノマテリアル(フラーレン、カオリン、カーボンブラック、酸化チタン、マグネタイト等)および将来的に商業用品等への応用が期待されるナノマテリアル(カーボンナノチューブ、マグネタイト)の遺伝毒性や発がん性についてin vitro及びin vivo実験系を用いて検討した。
研究方法
細胞における各種ナノ粒子曝露の影響について、in vitro系で細胞生存率,ROS生成,8-OHdG検出,apoptosis,細胞周期等について検討した。ナノマテリアルを気管内投与されたマウス肺組織細胞における酸化的DNA損傷性をコメットアッセイを用いて調べた。また、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)及びマグネタイトの遺伝毒性を、トランスジェニックマウスを用いて検討した。さらに、ICR系雄マウスを用いてフラーレン、カオリン、カーボンブラックの肺に対する発がん性、マグネタイトの単回気管内スプレー投与によるラットの急性毒性試験を行った。
結果と考察
細胞における各種ナノ粒子曝露の影響について調べたところ、特定のナノ粒子はヒト細胞の種類により細胞傷害が異なる事を明らかにした。ナノマテリアルを気管内投与されたマウス肺組織細胞における酸化的DNA損傷性をFpg処理コメットアッセイを用いて調べたところ、Fpg未処理に比べ、有意なDNA損傷性が確認できた。MWCNT及びマグネタイトにより誘発される変異原性について検討したところ、gpt遺伝子の変異頻度は、MWCNT投与群でコントロールと比較して約2倍に上昇したが、統計学的に有意ではなかった。一方、マグネタイト反復投与群では、gpt変異頻度は有意に上昇した。ICR系雄マウス肺に対する発がん性を検討した結果、フラーレン、カオリン、カーボンブラック投与群の悪性腫瘍の発生率は対照群とほぼ同程度であった。マウスはこれらのナノ粒子の発がん性に対して感受性が低い動物種と考えられ、今後、ラットを用いた発がん実験を行う必要があると思われた。ラットにおける単回気管内スプレー投与による急性毒性試験により,マグネタイトは,肺に蓄積し,重量増加と異物曝露に対する非特異的病変を誘発した。
結論
商業用品等に用いられている種々のナノマテリアルがin vitro及びin vivo実験系において遺伝毒性を示す事が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-30
更新日
-