文献情報
文献番号
200941011A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法に関する総合研究
課題番号
H20-化学・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福島 昭治(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 鷹屋 光俊(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
- 相磯 成敏(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 甲田 茂樹(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
- 吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 小川 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 長野 嘉介(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 浅倉 眞澄(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 野口 忠(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 山本 雅也(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
40,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナノマテリアルは極めて微細であり一般生活環境や産業現場の気中に拡散しやすいため、経気道的に容易に体内に侵入する可能性が高く、それによるヒトへの健康影響が懸念される。本研究の目的は、ナノマテリアルの経気道暴露によるヒトへの健康影響の評価に役立つ手法を開発することである。
研究方法
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いて、気中濃度の測定等の検討を行った。また、生体影響の評価手法を検討するために、MWCNTをラットに経気道投与し、MWCNTの肺内沈着と呼吸器以外の臓器への影響の検索、肺のマイクロアレイ解析、嗅球の電子顕微鏡検索を行った。また、肺を標的とした中期発がん性試験の検討を行った。さらに、MWCNTの吸入暴露のためのダスト発生法について検討した。培養細胞を用いたin vitro試験系については、CHL/IU細胞を用いた遺伝毒性試験(小核試験、染色体異常試験、遺伝子突然変異試験)を実施した。in vivo試験系については、gpt delta ラットを用いてgpt 突然変異とSpi-変異頻度を調べた。また、酸化チタンについて文献情報の収集・整理を行った。
結果と考察
気中MWCNTの濃度測定の検討では、ばく露実験での濃度監視に表面積計が優れていることがわかった。MWCNTの肺内沈着については電子顕微鏡検索によりMWCNTであることが確認できた。また、肝臓、嗅球等、肺以外の臓器にはにMWCNTの移行や影響が認められなかった。肺のマイクロアレイ解析では、炎症、酸化的ストレス、DNA損傷に関与する遺伝子の増加がみられた。MWCNTの肺を標的とした中期発がん性試験で、DHPNを用いたイニシエーション法を採用した。MWCNTの吸入暴露のためのダスト発生法については、音振動でダストを発塵させる発生器の製作を行っている。培養細胞を用いたin vitro試験系では、染色体の数的異常および多核細胞の誘発があり、MWCNTは細胞分裂に何らかの阻害作用があることが示唆された。in vivo試験系については、gpt 突然変異やSpi-変異頻度の増加がみられなかった。酸化チタンの毒性影響に関しては、気管内投与、エアロゾルへの全身暴露による試験情報を収集した。
結論
以上の研究成果は、ナノマテリアルによるヒトの健康への影響の評価手法の確立と機序の解明に資することができる。
公開日・更新日
公開日
2010-05-30
更新日
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