性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究

文献情報

文献番号
202409001A
報告書区分
総括
研究課題名
性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
安井 敏之(徳島大学 大学院医歯薬学研究部生殖・更年期医療学)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 重郎(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学)
  • 岩佐 武(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 井手 久満(順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器科)
  • 甲賀 かをり(千葉大学 大学院医学研究院・産婦人科学)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度は、①更年期障害を有する就労女性の医療施設受診までのジャーニー、医療施設受診後の治療による女性更年期障害と労働機能障害との関係の結果をまとめ、②更年期障害を有する就労男性のペーシャントジャーニー調査のためのWEBシステムを用いて男性更年期障害と労働機能障害との関係をまとめ、③レセプト調査、ネットアンケート調査、事業所調査によって、更年期症状とプレゼンティーズムとの関係や更年期障害に影響する職業関連因子についてまとめるとともにNDB調査も進める、④両立支援についての普及活動や支援・介入のための資料作成を目的とする。
研究方法
①女性更年期障害と労働機能障害
1)横断調査:40-59歳の更年期障害を有する有職女性を対象としたネットアンケート調査 2)縦断調査:医療施設を受診した女性に、menopause rating scale (MRS)とwork functioning impairment scale (Wfun)の関連について治療による変化を前向きに検討
②男性更年期障害と労働機能障害:男性更年期外来のペイシャントジャーニー調査のためのWebシステムを用いて、男性更年期障害患者の背景や治療の実態調査
③就労者疫学調査
1)ネットアンケート調査:働く女性の更年期障害とプレゼンティイズムとの関連性に関する横断研究について、40-59歳の女性を対象に調査
2)事業所調査:職業関連因子と中等度以上の更年期症状との関連に関する横断調査について、女性社員685例を対象に調査
3)NDBデータベースを用いた調査
④両立支援について普及資料や支援資料の作成:これまでの結果から、両立支援における課題を明らかにし、ホームページを用いて公表を行い、性差に着目した普及活動や支援・介入を行うための資料作成。
結果と考察
①女性更年期障害と労働機能障害
1)横断調査(a)更年期症状が極めて強い割合は16.8%、重度の精神神経症状の割合は 30.9%であった。症状に何も対処しない割合は45.5%であるが、最初に病院受診した割合は18.6%であった。最初に婦人科医を受診する率が最も高かった。症状の強い女性に病院受診を含めた適切な対処行動の推奨が必要である。(b)無職者は有職者に比較して更年期症状が強い割合が高かった。更年期症状に対処しない割合は有職者に高い傾向であった。薬局で相談する割合は有職者が高く, 病院で治療を受ける割合は無職者が有意に高かった。(c)更年期症状(特に身体症状)が強い割合は非管理職に高かった。仕事を減らしたり休んでいる割合は管理職に高かった。職場での要求は、時間休暇や年休などの休暇制度、更年期症状や対処行動、 治療についての情報提供、経済支援の順に多かった。
2)縦断調査:更年期障害の治療によって労働機能障害に問題がない割合は増えていた。中等度並びに重度の労働機能障害を有する就労女性は適切な治療を受けることが必要である。
②男性更年期障害と労働機能障害:男性労働者は一般集団に比較して労働機能障害を有する割合が高かった。また男性ホルモン補充療法によって約70%に改善を認めた。タブレット端末を利用した自己回答式問診はペイシャントジャーニーを簡便に把握できるツールである。総テストステロン(T)値はうつ症状を有意に反映させるバイオマーカーである。男性更年期障害はプレゼンティイズムと強く関連していた。
③ 就労者疫学調査
1)ネットアンケート調査①更年期障害に関連する就労要因として、会社からのサポート、夜勤の回数、通勤時間との関連を認めた。②40-59歳の男性就労者において、AMSスコアが高いほど、労働機能障害のリスクは高かった。
2)事業所調査①40代以上の男性社員において、筋力低下や集中力低下が生産性に影響を及ぼしていた。②40-59歳の男性社員において、21%はAMSスコアが中等度以上かつT値が基準下限未満を示した。③40-60歳の女性社員において、MRS正常群に比べてMRS重度群では労働機能障害のオッズ比が15倍であった。④女性社員において、更年期症状、特に精神症状とプレゼンティーズムとの間に強い関連を認めた。
3)NDB申請が受理されNDBデータベースを用いた調査を進めている。
④両立支援の普及:更年期障害と労働機能障害との関係から両立支援としての課題が明確になり、性差に着目した普及のための資料作成に着手することができた。
結論
本年度は具体的な研究結果をだすことができ、社会に公表することができた。また、最終年度として性差をもとにした両立支援のあり方を検討し、普及のための資料をホームページに公表する準備ができた。職場で更年期障害が認識され、適切な対応がとられれば、職場にとっても働く人にとってもより良い環境となり、生産性も向上し、プレゼンティーズムやアブセンティーズムが減ることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2026-02-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-11-04
更新日
2026-02-12

文献情報

文献番号
202409001B
報告書区分
総合
研究課題名
性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
安井 敏之(徳島大学 大学院医歯薬学研究部生殖・更年期医療学)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 重郎(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学)
  • 岩佐 武(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 井手 久満(順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器科)
  • 甲賀 かをり(千葉大学 大学院医学研究院・産婦人科学)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における就労男女の更年期症状の実態を明らかにし、更年期症状と労働機能障害との関係を明らかにする。また、レセプト調査、ネットアンケート調査、事業所調査によって、更年期症状とプレゼンティーズムとの関係や更年期障害に影響する職業関連因子を明らかにする。これらの研究成果をもとに、両立支援に向けた普及活動や支援・介入を行うための資料を作成する。
研究方法
①女性更年期障害と労働機能障害
1)40-59歳の更年期障害を有する有職女性を対象としたネットアンケート調査による横断研究(日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会と共同)
2)医療施設を受診した女性を対象に、治療によるmenopause rating scale(MRS)とwork functioning impairment scale (Wfun)の関連を前向き研究
② 男性更年期障害と労働機能障害
ペイシャントジャーニー調査のためのシステム開発を行い、そのシステムを用いて、男性更年期障害患者に対して自己回答式問診を実施。男性更年期障害の症状評価はAMS(Aging Male Symptom)スコアを用いた。
③ 就労者疫学調査
1)レセプトによる受診調査
2)ネットアンケート調査:40-59歳の女性を対象に横断研究調査
3)事業所調査:更年期症状と労働機能障害の関連について社員を対象に解析
4) NDBデータベースを用いた調査
④ 両立支援について、普及資料や支援資料の作成
結果と考察
① 女性更年期障害と労働機能障害
1)横断調査 (a) 更年期症状が極めて強い割合は16.8%、重度の精神神経症状の割合は30.9%であった。症状を有していても何も対処しない割合は45.5%、最初に病院受診した割合は18.6%であり、婦人科受診率が最も高かった。(b) 無職者は有職者に比較して更年期症状が強い割合が高かった。更年期症状に対処しない割合は有職者に高い傾向にあり、病院で治療を受ける割合は無職者が有意に高かった。(c) 更年期症状(特に身体症状)が強い割合は非管理職に高かった。仕事を減らしたり休んでいる割合は管理職で高かった。職場での要求として、時間休暇や年休などの休暇制度、更年期症状や対処行動、治療についての情報提供、経済支援が挙げられた。
2)縦断調査:治療3ヵ月後、6ヵ月後において労働機能障害に問題がない割合は増加し、中等度、重度の労働機能障害を有する就労女性は適切な治療を受けることが必要である。
②男性更年期障害と労働機能障害
就労男性は一般集団に比較して労働機能障害を有する割合が高かった。AMSスコアとWfunとの間に有意な正の相関関係を認めた。総テストステロン(T)値の低下が15%、遊離T値の低下が74%みられた。71%は何らかの治療を受け、81%がT補充療法を受けていた。タブレット端末を利用した自己回答式問診はペイシャントジャーニーを簡便に把握できるツールである。T値はうつ症状を有意に反映させるバイオマーカーである。男性更年期障害はプレゼンティイズムと強く関連していた。
③ 就労者疫学調査
1)レセプト調査:女性更年期障害の受診者割合に比較して、男性更年期障害の受診者割合は極めて低く、女性更年期障害とともに男性更年期障害についても周知が必要である。
2)ネットアンケート調査:(1)有職女性において、更年期障害(特に精神症状)とプレゼンティーズムとの間の有意な関連を認めた。(2)就労男性において、AMSスコアが高いほど労働機能障害のリスクは高かった。 (3) 女性更年期障害に関連する就労要因として会社からのサポート、夜勤の回数、通勤時間との関連を認めた。
3)事業所調査:(1) 男性社員において筋力低下や集中力低下が生産性に影響を及ぼしていた。(2)男性社員において毛髪中T濃度測定とAMSの組み合わせは、LOH症候群のスクリーニングとして有用な可能性がある。(3)女性社員において、MRS正常群に比べて、MRS重度群では労働機能障害のオッズ比は有意に高かった。(4)事業所においても女性労働者について更年期症状とプレゼンティーズムとの間に有意な関連を認めた。
4)NDBデータベースを用いた調査開始
④ 両立支援について普及資料や支援資料の作成:性差に着目した普及活動や支援・介入を行うための資料作成を行い、ウェブ上での公開を進めており、社会への周知をはかる。
結論
本研究によって多くの研究成果をだして社会に公表している。また、普及資料の作成を行いWebでの公開も進めている。これらによって職場で更年期障害が認識され、適切な対応がとられれば、職場及び働く人にとって良い環境となり、生産性も向上し、プレゼンティーズムやアブセンティーズムが減ることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2026-02-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202409001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内において、男女における更年期障害が就労に与える影響、プレゼンティーズムやアブセンティーズムに与える影響を明らかにした。本成果は、Occupational Medicineなど国外の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
国内における就労男性および女性における更年期障害についての実態およびペーシャントジャーニーを初めて明らかにしたものであり、この結果を踏まえて、今後職場において理解が深まっていくことが期待される。
ガイドライン等の開発
就労男性および女性における更年期障害についてのガイドラインなどの作成は、誰を対象としたガイドラインかについての議論が必要であり、現時点ではガイドラインは作成されていない。
その他行政的観点からの成果
就労男性および女性における更年期障害の実態についての全国疫学調査を実施するとともに、ペーシャントジャーニーの実態についても明らかにした。今後これらのデータが行政的に活用される予定である。
その他のインパクト
男女の更年期症状とその頻度や就労への影響および治療法に関わる内容について、更年期に関する普及資料や就労との両立支援資料として、特設サイト「働く世代のための更年期サイト(https://www.ryoritsu.dohcuoeh.com/menopause_yasui_group/)」を構築した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishimaru T, Okawara M, Tateishi S, et al.
Impact of menopausal symptoms on presenteeism in Japanese women
Occup Med (Lond) , 73 , 404-409  (2023)
DOI : 10.1093/occmed/kqad087
原著論文2
Sawamoto N, Okawara M, Ishimaru T, et al.
Association between menopausal symptoms and work-related factors among female workers in Japan: a cross-sectional study.
J Occup Environ Med , 66 (9) , 413-417  (2024)
doi: 10.1097/JOM.0000000000003170
原著論文3
Okawara M, Tateishi S, Horie S, et al.
Association between andropause symptoms and work functioning impairment: a cross-sectional study in two Japanese companies
Industrial Health , 63 (3) , 288-297  (2025)
doi:10.2486/indhealth.2024-0168
原著論文4
Beppu H, Okawara M, Yamashita S, et al.
Association Between Male Menopause Severity and Presenteeism A Cross-sectional Study.
Occup Environ Med , 67 (3) , 171-175  (2025)
doi: 10.1097/JOM.0000000000003294
原著論文5
Kuwazuru T, Okawara M, Ohkubo N, et al.
Cross-sectional study of the association of menopausal symptoms with presenteeism among female employees of a Japanese company
J Occup Environ Med  (2025)
doi:10.1097/JOM.0000000000003403
原著論文6
Kumano H, Yanagida A, Nanamori M, et al.
Relationships between erectile dysfunction, depression, anxiety, and quality of Development of a multi-dimensional single-item index for assessing present experiences.
Research Gate  (2025)
DOI:10.13140/RG.2.2.20914.31682
原著論文7
Saito J, Kumano H, Ghazizadeh M, et al.
Relationships between erectile dysfunction, depression, anxiety, and quality of life in young Japanese men: a cross sectional study.
Journal of Psychosexual Health , 5 (2) , 77-83  (2023)
https://doi.org/10.1177/26318318231181687
原著論文8
Saito J, Kumano H, Ghazizadeh M, et al.
Differences in psychological inflexibility among men with erectile dysfunction younger and older than 40 years: Web-based.
JMIR Form Res , 3 (8) , e45998-e45998  (2024)
doi: 10.2196/45998.

公開日・更新日

公開日
2025-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202409001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,113,661円
人件費・謝金 498,359円
旅費 1,304,459円
その他 3,776,521円
間接経費 2,307,000円
合計 10,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-08-29
更新日
-