ナノマテリアルの経皮毒性に関する評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200941005A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの経皮毒性に関する評価手法の開発に関する研究
課題番号
H19-化学・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 藤井 まき子(昭和薬科大学 薬剤学教室)
  • 宮澤 眞紀(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 菊地 克子(東北大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
47,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノマテリアル(平均一次粒子径100nm以下の粒子)のうち二酸化チタニウムはサンスクリーン、化粧品等に広く用いられている。しかし、皮膚透過性の有無、皮膚機能及び免疫能への影響、発がんへの関与については多くのものではデータは得られていない。本研究ではそれらについてのデータを得るとともに、その過程において標準的な評価法を開発することを目的とした。
研究方法
二酸化チタニウム(nTD)(一次粒径20nm、ルチル、ペンタラン分散、凝集塊粒径3.18μm)および同SnTD(一次粒径30nm、ルチル型・シリコンコーティング・シリコン油分散、凝集塊粒径160nm)、蛍光ポリスチレン(nPS、PS)(一次粒径25、100nm)について、健常および角質除去によって防御機能の障害されたラット、マウス、ミニブタ皮膚拡散セルモデル及びヒト立体皮膚培養モデルを用いて、皮膚透過性、皮膚感作の増強反応、皮膚発がん二段階モデルにおける反復投与による全身毒性及び発がん性の評価を行った。
結果と考察
 健常および障害皮膚モデルにおいて、nTD、SnTDおよび蛍光nPSは、凝集体の粒径によらず健常および障害皮膚を通過しなかった。しかし、脱毛後に角質除去された皮膚からは少量の粒子が毛嚢に侵入し、マウス耳では軽度の起炎症作用を示した。しかし、粒子の毛嚢周囲組織やICP-MS分析でみる遠隔臓器への移行はなかった。脱毛と角質除去傷害皮膚においてハプテンの存在で間接的に免疫反応を軽度に増強させる作用が示唆された。皮膚発がん高感受性RasH2マウス動物に高分散性SnTDを用いた二段階発がんモデルにおいても、陽性対照の12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)では皮膚腫瘍が多発したが、nTDでは腫瘍発生のプロモーション作用は観察されなかった。
結論
nTD、SnTD、nPSとも皮膚上皮は透過しないが、マウス耳の障害皮膚では毛嚢に入り軽度の炎症とハプテンで顕在するごく軽度の免疫反応をおこす。発がんプロモーション作用は無い。以上から、マウス、ラットにおける健常および障害モデル、さらにミニブタ皮膚の拡散セルモデルおよび毛根の無いヒトの皮膚培養モデルを用いたin vitro皮膚モデルにおいて、透過性・免疫毒性・発がん性評価の手法開発における基礎的情報が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200941005B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノマテリアルの経皮毒性に関する評価手法の開発に関する研究
課題番号
H19-化学・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 裕司(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 藤井 まき子(昭和薬科大学 薬剤学研究室)
  • 宮澤 眞紀(神奈川衛生研究所 理化学部)
  • 菊地 克子(東北大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化粧品等として最も多く使用されているナノマテリアル(平均一次粒子径100nm以下の粒子)である二酸化チタニウム(nTD)と酸化亜鉛等(nZO)の皮膚透過性、皮膚生理機能及び免疫能への影響、長期暴露による発がんへの関与については明らかではない。本研究では、一次粒子径(以後、粒径)と溶媒中の分散状態の異なるナノマテリアルでそれらの影響を明らかにし、過程において標準的な評価法を開発することを目的とした。
研究方法
二酸化チタニウムのnTD(粒径20nm、ルチル、非被覆、ペンタラン分散、凝集塊粒径3.18μm)および高分散性のSnTD(粒径30nm、ルチル型・シリコン被覆・シリコン油分散、凝集塊粒径160nm)、蛍光ポリスチレン(nPS、PS)(粒径25、100nm)について、健常およびテープストリッピングで角質除去障害されたラット、マウス皮膚、ミニブタ皮膚拡散セルモデル、及びヒト皮膚立体培養モデルを用いて、皮膚透過性、皮膚感作の増強反応、発がんへの関与について検索するとともに手法の評価も行った。
結果と考察
健常および障害皮膚モデルにおいて、nTD、SnTD、nZOおよび蛍光nPSは粒径によらず、健常および障害皮膚を透過しなかった。nTDは障害脱毛皮膚からは少量が毛嚢に侵入し、マウス耳では軽度の起炎症作用を示したことから、健常と脱毛角質除去モデルは有用と考えた。これらの方法でもICP-MS分析でみる皮膚、毛嚢から遠隔臓器への移動はなかった。マウス耳介脱毛傷害皮膚において、ハプテンの存在で軽度の免疫反応が観察された。皮膚発がん高感受性Hras導入ラットとマウスではnTDとSnTDはプロモーション作用はなかった。
結論
マウス耳介脱毛皮膚では毛嚢経由でハプテン投与で顕在するごく軽度の免疫反応をおこす。発がんプロモーション作用は無い。以上から、マウス、ラット、ミニブタ、およびヒトの皮膚モデルを用いた透過性・免疫毒性・発がん性評価の手法についての基礎的情報が得られた。脱毛障害皮膚は有用である。二段階発がんモデルは短期で結果が得られることから、高い実用性が見込まれる。以上から、実施可能な標準的経皮吸収・毒性・発がん性に関わる評価プロトコール構築のためのデータが得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200941005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健常および障害皮膚において、一次粒径ナノサイズの二酸化チタニウム、酸化亜鉛は様々な大きさの凝集塊をつくり、健常および障害されたマウス、ラット、ミニブタの皮膚、およびヒトの皮膚モデルを透過しなかった。また角質除去・脱毛によるバリア機能の障害された皮膚組織でも異物は毛嚢まで侵入するが、周囲の真皮組織には移行しないことが分かった。このことは、皮膚は固形異物に対しては強固なバリア機能により侵入を防いでいることを意味する。従来の化学物質の透過性とは全く異なった観点で研究を進めることが必要である。
臨床的観点からの成果
なし。
ガイドライン等の開発
なし(不明)。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Makiko,Fujii., Mika,Senzui., Toshiaki, Tamura., et al.
Study on penetration of titanium dioxide nanoparticles into intact and damaged skin in vitro
J.Toxicol.Sci. , 35 , 107-113  (2010)
原著論文2
Tsuda,H., Fukamachi,K., Imada,T., et al.
Purple corn color suppresses Ras protein level and inhibits 7,12-dimethylbenz[a]anthracene-induced mammary carcinogenesis in the rat.
Cancer Sci , 99 , 1841-1846  (2008)
原著論文3
Tsuda,H., Futakuchi, M., Fukamachi,K., et al.
A medium-term, rapid rat bioassay model for the detection of carcinogenic the potential of chemicals.
Toxicol Pathol , 38 , 182-187  (2010)
原著論文4
Tsuda,H., Xu,J., Futakuchi,M., et al.
Involvement of macrophage inflammation protein 1α (MIP1α) in promotion of rat lung and mammary carcinogenic activity of nano-scale titanium dioxide particles administered by intra-pulmonary spraying.
Carcinogenesis, , 31 , 927-935  (2010)
原著論文5
Tsuda,H., Xu,J., Sakai,Y., et al.
Toxicology of Engineered Nanomaterials - A review of Carcinogenic Potential.
Asian Pacific J Cancer Prev; , 10 , 975-980  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
2016-06-21