形態形成期・思春期などの高感受性期にある集団での核内受容体作動性化学物質等の有害性発現メカニズムの解明及びその評価手法にかかる総合研究

文献情報

文献番号
200941003A
報告書区分
総括
研究課題名
形態形成期・思春期などの高感受性期にある集団での核内受容体作動性化学物質等の有害性発現メカニズムの解明及びその評価手法にかかる総合研究
課題番号
H19-化学・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
井上 達(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 秀子(国立環境研究所 環境健康科学)
  • 井口 泰泉(自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞学研究所 分子生物部門)
  • 笹野 公伸(東北大学大学院 医学系研究科医科学専攻病理学講座)
  • 粟生 修司(九州工業大学大学院 生命体工学研究科)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 毒性部)
  • 川戸 佳(東京大学大学院 総合文化研究科)
  • 山崎 聖美(国立健康・栄養研究所 基礎栄養プログラム)
  • 五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所 毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本総合研究は3ヵ年計画中第3年度であり、統括的目的は、核内受容体作動性の生殖・核内受容体系、免疫・感染防御系および中枢神経・行動系などの高次生命系における発現遺伝子シグナルのかく乱を指標として形態形成期や思春期にある高感受性集団についても考慮の対象として各々の系における影響メカニズムを統一的に理解し、これに即した評価法の確立にむけて研究を推進した。
研究方法
研究方法についても同様であるが、プロジェクト課題研究は最終年度は、ヒト乳がん上皮細胞を用いた発がん蓋然性研究の1課題のみとした。また、基盤研究では、生殖・核内受容体系部門、免疫・感染防御系部門、および中枢神経・行動系部門の各部門に分かれていずれもビスフェノールA(BPA)の影響を参照しつつ実験を行った。なおマイクロアレイ基盤研究では、肝臓における絶食シグナル依存的な転写コアクチベーターの機能解析に関するChip on Chip解析を実施している。
結果と考察
プロジェクト研究では発がんの蓋然性研究にてBPA曝露後のDNAメチル化サイトの検索によるエピジェネティックな変化を解析した。また、基盤研究では各々の実験結果から核内受容体作動性化学物質のエピジェネティックでストカスティクな影響が観察され、特にラットの海馬研究では、スパイン密度と、MAP Kinaseの機能との関連を検討した。
結論
核内受容体作動性化学物質が様々な形で影響を及ぼす蓋然性を持つ高次生命系を標的としたプロジェクト研究と、組織的基盤研究とに分かれて目的に沿った研究を推進し更なる進展をみた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200941003B
報告書区分
総合
研究課題名
形態形成期・思春期などの高感受性期にある集団での核内受容体作動性化学物質等の有害性発現メカニズムの解明及びその評価手法にかかる総合研究
課題番号
H19-化学・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
井上 達(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 秀子(国立環境研究所 環境健康科学)
  • 井口 泰泉(自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞学研究所 分子生物部門)
  • 笹野 公伸(東北大学大学院 医学系研究科医科専攻病理学講座)
  • 粟生 修司(九州工業大学大学院 生命体工学研究科)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 毒性部)
  • 川戸 佳(東京大学大学院 総合文化研究科)
  • 山崎 聖美(国立健康・栄養研究所 基礎栄養プログラム)
  • 五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所 毒性部)
  • 関沢 純(徳島大学総合科学部)
  • 杉村芳樹(三重大学医学部)
  • 五十嵐 美徳(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は1996年12月のロンドンにおける国際ワークショップ以来継続してきた内分泌かく乱化学物質の生体影響に関する研究を、核内受容体作動性化学物質全般に拡張し高感受性亜集団をも念頭において、低用量作用に関する文献調査等のプロジェクト課題研究と生殖・核内受容体系部門、免疫・感染防御系部門、および中枢神経・行動系部門の各部門など、高次生命系への影響を検討する基盤研究の双方の面から3年間の研究を実施したものである。
研究方法
プロジェクト課題研究では、1.低用量作用に関するその後の文献調査、2.前立腺影響研究、3.ヒト乳がん上皮細胞を用いた発がん蓋然性研究の3課題について、また、基盤研究では、生殖・核内受容体系部門、免疫・感染防御系部門、および中枢神経・行動系部門の各部門に分かれていずれもビスフェノールA(BPA)の影響を参照しつつ実験を行った。なおマイクロアレイ基盤研究では、各班員の研究を逐次支援する形をとった。
結果と考察
プロジェクト研究では低用量作用に関するBPAの文献調査、前立腺ならびに乳腺組織に対するBPAの引き起こす不可逆変化などを観察し、また、基盤研究では生殖・核内受容体系における出生直後の臨界期でのホルモン様物質の投与によるエストロゲン非依存的な膣上皮の増殖を観察したことを始めとし、核内受容体作動性化学物質のエピジェネティックでストカスティクな影響について高次生命系各組織における知見のメカニズムの解明が前進した。
結論
核内受容体作動性化学物質が様々な形で影響を及ぼす蓋然性を持つ高次生命系を標的としたプロジェクト研究と、組織的基盤研究とに分かれて目的に沿った研究を推進し更なる進展を見、その成果は国際的学術専門誌を通じて世界に発信した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200941003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は内分泌かく乱化学物質の生体影響を、核内受容体作動性化学物質の高次生命系に対する影響研究として一般化することによりその基盤における少なくない優れた研究報告を発信し、それらの有害性発現メカニズムの解明と評価の手法に当該領域の世界の研究者が注目する成果をあげることができた。
臨床的観点からの成果
本プロジェクト研究は、実験的医学、生物学研究によって構成され、臨床的直接関連をもたないが、中枢神経・行動系との関連での子供の多動問題や、免疫・感染防御系との関連でも子供のアレルギー感染抵抗性など様々な臨床面での諸課題の基盤を成す。
ガイドライン等の開発
WHO(世界保健機関)/IPCS(国際化学物質安全性計画)ならびにOECD(経済協力開発機構)あるいは欧州委員会プロジェクトや米国EPA(環境保護庁)での研究の進展などと連携して研究を進めておりスクリーニング系としての子宮腫大試験およびHershberger試験のバリデーションについてはすでに最終段階に達した。
その他行政的観点からの成果
WHO/IPCSの子供プロジェクトとも関連し得られた成果の行政的適用の範囲は広汎な拡がりを見せており、他の厚生科学研究課題との交流にも注意を払って推進しており課題内にとどまらない成果が得られたものと考えられる。
その他のインパクト
当研究課題ではいわゆる低用量問題など当初から未解決であった問題が介在してきたが、その生物学的なストカスティシティすなわち不確定性に基づく諸研究の発展とともに理解の方向性が明らかになりつつあり行政に直結する課題と基盤研究の接点が示された点で社会へのインパクトがあったと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
261件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
230件
学会発表(国際学会等)
137件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oomura Y, Aou S, Fukunaga K.
Prandial increase of leptin in the brain activates spatial learning and memory.
Pathophysiology , 17 , 119-127  (2010)
原著論文2
Fujiki R, Chikanishi T, Hashiba W, et al.
GlcNAcylation of a histone methyltransferase in retinoic-acid-induced granulopoiesis.
Nature , 459 , 455-459  (2009)
原著論文3
Hirabayashi Y, Inoue, T.
Aryl hydrocarbon receptor biology and xenobiotic responses in hematopoietic progenitor cells.
Biochem Pharmacol , 77 , 521-535  (2009)
原著論文4
Kim M, Kondo T, Takada I, et al.
DNA demethylation in hormone-induced transcriptional derepression.
Nature , 461 , 1007-1012  (2009)
原著論文5
Masuda A, Aou S.
Social transmission of avoidance behavior under situational change in learned and unlearned rats.
PLoS One , 4 , 6794-6794  (2009)
原著論文6
Miki Y, Suzuki T, Nagasaki S, et al.
Comparative effects of raloxifene, tamoxifen and estradiol on human osteoblasts in vitro: estrogen receptor dependent or independent pathways of raloxifene.
J Steroid Biochem Mol Biol , 113 , 281-289  (2009)
原著論文7
Tanemura K, Igarashi K, Matsugami TR, et al.
Intrauterine environment-genome interaction and children's development (2): Brain structure impairment and behavioral disturbance induced in male mice offspring by a single intraperitoneal administration of domoic acid (DA) to their dams.
J Toxicol Sci , 34 , 279-286  (2009)
原著論文8
Hojo Y, Murakami G, Mukai H, et al.
Estrogen synthesis in the brain – Role in synaptic plasticity and memory.
Mol Cell Endocrinol , 290 , 21-43  (2008)
原著論文9
Iguchi T, Watanabe H, Ohta Y, et al.
Developmental effects: estrogen induced vaginal changes and organotin induced adipogenesis.
Int J Androl , 31 , 263-268  (2008)
原著論文10
Kanda H, Ishii K,Ogura Y, et al.
Naftopidil, a selective α-1 adrenoceptor antagonist, inhibits growth of human prostate cancer cells by G1 cell cycle arrest.
Int J Cancer , 122 , 444-451  (2008)
原著論文11
Ogiue-Ikeda M, Tanabe N, Mukai H, et al.
Rapid Modulation of synaptic plasticity by estrogens as well as endocrine disrupters in hippocampal neurons.
Brain Res Rev , 57 , 363-375  (2008)
原著論文12
Okada M, Takezawa S, Mezaki Y, et al.
Switching of chromatin-remodelling complexes for oestrogen receptor-alpha.
EMBO Rep , 9 , 563-568  (2008)
原著論文13
Shibuya R, Suzuki T, Miki Y, et al.
Intratumoral concentration of sex steroids and expression of sex steroid-producing enzymes in ductal carcinoma in situ of human breast.
Endocr Relat Cancer , 15 , 113-124  (2008)
原著論文14
Hirabayashi Y, Inoue T
Implications of hemopoietic progenitor cell kinetics and experimental leukemogenesis: Relevance to Gompertzean mortality as possible hematotoxicological endpoint
Exp Hematol , 35 , 125-133  (2007)
原著論文15
Ohtake F, Baba A, Takada I, et al.
Dioxin receptor is a ligand-dependent E3 ubiquitin ligase.
Nature , 446 , 562-566  (2007)
原著論文16
Sekizawa J, Ohtawa H, Yamamoto H, et al.
Evaluation of Human Health Risks From Exposures to Four Air Pollutants in the Indoor and the Outdoor Environments in Tokushima, and Communication of the Outcomes to the Local People.
J Risks Res , 10 , 841-851  (2007)
原著論文17
Suzuki A, Urushitani H, Sato T,et al.
Gene expression change in the Müllerian duct of the mouse fetus exposed to diethylstilbestrol in utero.
Exp Biol Med , 232 , 503-514  (2007)
原著論文18
Takeda I, Mihara M, Suzawa M, et al.
A histone lysine methyltransferase activated by non-canonical wnt signalling supresses PPAR-γtransactivation.
Nat Cell Biol , 9 , 1273-1285  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-