文献情報
文献番号
202408049A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中診療において今後目指すべき回復期診療の検討及び回復期や維持期・生活期における診療体制の充実に資する臨床指標を確立させるための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FA1019
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 茂(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
研究分担者(所属機関)
- 益子 貴史(自治医科大学 医学部内科学講座神経内科学部門)
- 小笠原 邦昭(学校法人岩手医科大学 学長)
- 宮本 享(国立大学法人京都大学 医学部附属病院)
- 橋本 洋一郎(済生会熊本病院)
- 豊田 章宏(独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院 治療就労両立支援センター)
- 板橋 亮(岩手医科大学 脳神経内科・老年科)
- 竹川 英宏(獨協医科大学 医学部)
- 黒田 敏(国立大学法人富山大学)
- 阿部 竜也(佐賀大学 医学部 脳神経外科)
- 古賀 政利(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
- 堀江 信貴(広島大学 脳神経外科)
- 太田 剛史(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
- 松丸 祐司(国立法人筑波大学)
- 高木 康志(国立大学法人 徳島大学)
- 辻野 彰(長崎大学病院 脳神経内科)
- 堀内 哲吉(信州大学 医学部脳神経外科)
- 川西 正彦(香川大学 医学部脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脳卒中は急性期・回復期・維持期 (生活期) の施設,更には在宅療養に至るまでシームレスな医療・介護・福祉の連携体制を構築しなければならない.
本研究の目的は,まず,現在使われている脳卒中地域連携パスの現状と課題,各職種から見たシームレスな医療・介護・福祉連携に求められる情報,連携評価のための指標を明らかにすることである.そして,回復期~維持期 (生活期) 医療機関で提供が可能な医療体制,脳卒中医療連携のために求められる疾患管理プログラムの内容と制度,それを達成するための課題を明らかにし,その解決策を検討することである.
本研究の目的は,まず,現在使われている脳卒中地域連携パスの現状と課題,各職種から見たシームレスな医療・介護・福祉連携に求められる情報,連携評価のための指標を明らかにすることである.そして,回復期~維持期 (生活期) 医療機関で提供が可能な医療体制,脳卒中医療連携のために求められる疾患管理プログラムの内容と制度,それを達成するための課題を明らかにし,その解決策を検討することである.
研究方法
研究1
47都道府県の脳卒中対策推進委員会委員長宛に別紙資料1の内容のアンケート調査を実施した.さらに各都道府県の代表的な脳卒中地域連携パスを提供していただき,盛り込まれている内容について集計した.
研究2
日本栄養士会の協力の下,全国の回復期,維持期 (生活期) 医療機関,施設,訪問サービスなどで脳卒中患者のケアに従事する管理栄養士・栄養士に対し,アンケート調査を実施した.
47都道府県の脳卒中対策推進委員会委員長宛に別紙資料1の内容のアンケート調査を実施した.さらに各都道府県の代表的な脳卒中地域連携パスを提供していただき,盛り込まれている内容について集計した.
研究2
日本栄養士会の協力の下,全国の回復期,維持期 (生活期) 医療機関,施設,訪問サービスなどで脳卒中患者のケアに従事する管理栄養士・栄養士に対し,アンケート調査を実施した.
結果と考察
研究1
47都道府県の都道府県脳卒中対策推進委員会委員長にアンケートに回答していただき,脳卒中地域連携パスの現状について確認した.すべての都道府県から回答を得た.
19/47 (40.4%) に都道府県内共通の脳卒中地域連携パスがあった.パスを使用しない理由として,「地域連携診療計画加算より診療情報提供料のほうが保険点数が高い」「連携会議の点数が加算できないなど診療報酬改定の影響」「連携先の協力が得られない」などが挙げられた.パスの作成に関わる職種では,医師,看護師,リハビリテーション専門職の頻度は高かったが薬剤師,管理栄養士の頻度が少なかった.パスの退院先別利用率は,回復期リハビリテーション病院ではおおむね75%以上と高かったが,自宅,施設,維持期医療機関では0~24%の都道府県が多かった.パスのフィードバック率はおおむね50%未満であった.
47都道府県のうち40都道府県の代表的な地域連携パスに盛り込まれている項目について検討した.抗血栓薬の内容と用量,服薬指導の有無,目標カロリー,目標塩分量,危険因子の目標設定,回復期以降のmRSの推移,日常生活のゴール設定,患者および家族の理解度についてはいずれも地域連携パスに盛り込まれている割合が50%未満であった.また,就労支援や意思決定支援に関する情報はほぼ含まれていなかった.以上の内容はいずれも地域連携に必要な情報と認識されていた.
研究2
現在調査は継続中であるが,中間集計時点で120名の管理栄養士・栄養士 (回復期医療機関68名,維持期 (生活期) 医療機関26名,施設・訪問サービス18名,クリニック8名) から回答を得た.
脳卒中地域連携パスの利用は13%であった.前の施設から得られている情報では,アレルギー・禁止食品 (51.7%),食事形態 (51.7%),身長・体重 (46.7%),提供栄養量 (41.7%),必要栄養量 (25.8%),摂取栄養量 (24.2%),介護保険・福祉サービス関連 (20.8%),体重変動 (13.3%),日常生活自立度 (13.3%) の順に多かった.また不足している情報として,摂取栄養量 (34.2%),体重変動 (28.3%),身長・体重 (23.3%),食事形態 (21.7%),補助食品 (18.3%),提供栄養量 (17.5%),必要栄養量 (14.2%) の順に多かった.重視して指導している項目としては,食事形態 (47.5%),目標総カロリー量 (44.2%),目標総塩分量 (45.0%) が多かった.栄養指導の効果として重視している指標では,体重 (55.8%),BMI (50.0%),食事摂取量 (48.3%),HbA1c (42.5%),食事形態 (41.7%),アルブミン値 (29.2%).LDLコレステロール値 (25.0%),総コレステロール値 (18.3%),日常生活機能評価 (16.7%) の順に多かった.
参考にする多職種の情報提供書は,管理栄養士 (54.2%) 以外にも,看護師 (51.7%),医師 (46.7%),言語聴覚士 (37.5%) であった.
47都道府県の都道府県脳卒中対策推進委員会委員長にアンケートに回答していただき,脳卒中地域連携パスの現状について確認した.すべての都道府県から回答を得た.
19/47 (40.4%) に都道府県内共通の脳卒中地域連携パスがあった.パスを使用しない理由として,「地域連携診療計画加算より診療情報提供料のほうが保険点数が高い」「連携会議の点数が加算できないなど診療報酬改定の影響」「連携先の協力が得られない」などが挙げられた.パスの作成に関わる職種では,医師,看護師,リハビリテーション専門職の頻度は高かったが薬剤師,管理栄養士の頻度が少なかった.パスの退院先別利用率は,回復期リハビリテーション病院ではおおむね75%以上と高かったが,自宅,施設,維持期医療機関では0~24%の都道府県が多かった.パスのフィードバック率はおおむね50%未満であった.
47都道府県のうち40都道府県の代表的な地域連携パスに盛り込まれている項目について検討した.抗血栓薬の内容と用量,服薬指導の有無,目標カロリー,目標塩分量,危険因子の目標設定,回復期以降のmRSの推移,日常生活のゴール設定,患者および家族の理解度についてはいずれも地域連携パスに盛り込まれている割合が50%未満であった.また,就労支援や意思決定支援に関する情報はほぼ含まれていなかった.以上の内容はいずれも地域連携に必要な情報と認識されていた.
研究2
現在調査は継続中であるが,中間集計時点で120名の管理栄養士・栄養士 (回復期医療機関68名,維持期 (生活期) 医療機関26名,施設・訪問サービス18名,クリニック8名) から回答を得た.
脳卒中地域連携パスの利用は13%であった.前の施設から得られている情報では,アレルギー・禁止食品 (51.7%),食事形態 (51.7%),身長・体重 (46.7%),提供栄養量 (41.7%),必要栄養量 (25.8%),摂取栄養量 (24.2%),介護保険・福祉サービス関連 (20.8%),体重変動 (13.3%),日常生活自立度 (13.3%) の順に多かった.また不足している情報として,摂取栄養量 (34.2%),体重変動 (28.3%),身長・体重 (23.3%),食事形態 (21.7%),補助食品 (18.3%),提供栄養量 (17.5%),必要栄養量 (14.2%) の順に多かった.重視して指導している項目としては,食事形態 (47.5%),目標総カロリー量 (44.2%),目標総塩分量 (45.0%) が多かった.栄養指導の効果として重視している指標では,体重 (55.8%),BMI (50.0%),食事摂取量 (48.3%),HbA1c (42.5%),食事形態 (41.7%),アルブミン値 (29.2%).LDLコレステロール値 (25.0%),総コレステロール値 (18.3%),日常生活機能評価 (16.7%) の順に多かった.
参考にする多職種の情報提供書は,管理栄養士 (54.2%) 以外にも,看護師 (51.7%),医師 (46.7%),言語聴覚士 (37.5%) であった.
結論
地域で情報共有ツールとしての脳卒中地域連携パスであるが,回復期医療機関以外での利用率が低く,多職種の関与も不十分であった.また,地域連携に必要な情報法と認識されていた項目の多くが脳卒中地域連携パスに盛り込まれていなかった.
管理栄養士・栄養士が重視している指標が,地域連携の中で情報が不足している場合も少なくない.また,管理栄養士・栄養士は医師,看護師,言語聴覚士をはじめとした多職種の診療情報を参考にすることが少なくなく,多職種で情報を共有するシステム構築が重要である.
管理栄養士・栄養士が重視している指標が,地域連携の中で情報が不足している場合も少なくない.また,管理栄養士・栄養士は医師,看護師,言語聴覚士をはじめとした多職種の診療情報を参考にすることが少なくなく,多職種で情報を共有するシステム構築が重要である.
公開日・更新日
公開日
2025-10-01
更新日
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