「抗うつ薬に関する臨床評価ガイドライン」の作成に関する研究

文献情報

文献番号
200940084A
報告書区分
総括
研究課題名
「抗うつ薬に関する臨床評価ガイドライン」の作成に関する研究
課題番号
H21-医薬・指定-037
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
  • 神庭 重信(九州大学大学院医学研究院)
  • 平安 良雄(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 稲垣 中(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
  • 中林 哲夫(国立精神・神経センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
うつ病は全世界で普遍的にみられ、生涯有病率は10 %を超えると推定されその発現頻度は高い。また、うつ病の経過は、うつ病相が一生のうち一度だけ出現するものから反復性のものまで様々であり、治療により十分な改善が得られず長期にわたり抑うつ症状が持続することもある。このため、患者のみでなく家族に対しても、精神的ならびに社会的な負担、そして経済的損失は大きく、その対処は重要である。
うつ病治療の中心の1つは薬物療法であるが、抗うつ薬の開発もドラッグ・ラグ(欧米で承認されている医薬品が本邦においては未承認であり、国民に提供されていない状態)の例外ではない1)。効率的な医薬品開発を行っていくためにも、臨床試験の計画、実施、評価法等について標準的方法と手順を取りまとめる必要があることから、「抗うつ薬に関する臨床評価ガイドライン」の策定に着手した。
研究方法
ICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)の主要3極のうち、米国そして欧州連合における医薬品開発の考え方を把握するために、米国医薬食品局(US Food and Drug Administration: FDA)及び欧州医薬品審査庁(European Medicines Agency: EMEA)から公表されている臨床評価ガイドラインについて調査した。米国国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)の臨床試験登録データベースに登録されているうつ病を対象とした企業主導の臨床試験(2004年以降に実施)についても調査し、近年に実施されている臨床試験の計画内容についても検討した。また、ガイドライン(案)の各項目の設定には、根拠となる公表論文について調査した。
結果と考察
海外規制当局が公表している臨床評価ガイドラインは、FDAは1977年に、EMEAからは2002年に作成されたところであるが、これらを参考に、ガイドライン(案)の内容構成を検討した。
結論
うつ病を対象とした臨床試験での有効性及び安全性評価において留意すべき点をより具体的に示したガイドラインの作成を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940084C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 平成21年度において、「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン(案)」の策定を行った。策定にあたっては、今日の治験の課題整理を行っただけでなく、国内外の開発状況とその動向を事前に調査することにより将来に想定される課題にも対応できる開発戦略の提案も行った。国際共同治験が増加している現状を踏まえ、また本邦の世界同時開発への参加を促進するためにも、最近の国内外の臨床試験のガイドライン及びデザインについても調査し、国際水準の試験計画が可能となるような具体的提案も行った。
臨床的観点からの成果
 うつ病は生涯有病率が高いため、患者とその家族の心理的及び経済的負担が大きい。「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン(案)」を取りまとめたことにより、試験計画を効率的に立案できることは開発期間の短縮に寄与することになると考える。また、治験を実施する上での留意事項についても整理を行ったことにより、実施医療機関での実施体制の均てん化、さらには臨床試験の質的向上が期待できると考える。
ガイドライン等の開発
 研究目的が「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の策定であったため、予定の研究期間でガイドライン(案)の策定を完了した。 平成22年4月9日付けで厚生労働省医薬食品局審査管理課より、「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン(案)」の意見募集(パブコメ)のために公開された。この意見を検討した上でガイドラインを完成させ、厚生労働省より通知される予定である。5月17日現在においては、「ガイドライン(案)」の状態であるため、審議会では参考にされていない。
その他行政的観点からの成果
「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」が通知された後には、抗うつ薬の臨床開発の基本的考え方が提示されることになるため、試験計画の効率化を図ることができる。このため同時に、医薬品医療機器総合機構での治験相談及び新薬承認審査の効率化にもつながることが期待される。平成22年4月9日付けで厚生労働省医薬食品局審査管理課より、「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン(案)」の意見募集(パブコメ)が開始され、5月8日に終了した。ガイドラインを完成させ、厚生労働省より通知される予定である。

その他のインパクト
 治験の実施においては被験者の理解が不可欠であるが、「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」が公開されることにより、抗うつ薬の開発に関する一般的事項の啓発が図られることが期待される。平成22年度に、関連する学会でシンポジウムを開催する予定である。また、「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン(案)」の意見募集(パブコメ)についてはマスコミからも注目され、多くの記事で取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2018-06-21