骨粗鬆症検診実施率・受診率向上に資する検診実施体制の見直しのための研究

文献情報

文献番号
202408033A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症検診実施率・受診率向上に資する検診実施体制の見直しのための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FA1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
田中 栄(東京大学医学部附属病院 整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 照喜(川崎医療福祉大学 医療技術学部 放射線技術学科)
  • 藤原 佐枝子(安田女子大学 薬学部)
  • 萩野 浩(労働者健康安全機構 山陰労災病院)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養学部 栄養生理学研究室)
  • 小川 純人(東京大学医学部附属病院 老年病科)
  • 伊木 雅之(近畿大学 医学部  公衆衛生学教室)
  • 宗圓 聰(一般社団法人医皇会 そうえん整形外科骨粗しょう症・リウマチクリニック)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センターロコモ予防学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、骨粗鬆症検診の実施率および受診率を向上させるために、検診体制の現状を多角的に見直し、科学的根拠に基づいた有効かつ持続可能な検診および保健指導の方法を再構築することを目的として、過去2回の研究(19FA1014、22FA1009、主任研究者田中栄)において、FRAX(Fracture Risk Assessment Tool)、OSTA(Osteoporosis Self-assessment Tool for Asia)、および既存骨折の有無という三本柱を用いた新しい骨粗鬆症検診法を提案してきた。
今回は新骨粗鬆症検診の項目を更にブラッシュアップすると同時に、その検診法の現場におけるfeasibilityの確認、検診実施における課題の検証を行うことを目的としている。そのため、本研究では整形外科、放射線医学、疫学、公衆衛生学、栄養学、老年医学、リハビリテーションといった多様な分野の専門家が協力し、それぞれの専門的視点から現行の骨粗鬆症検診の問題点や改善の可能性を抽出するとともに、改訂版となる「新骨粗鬆症検診・保健指導マニュアル(案)」の策定を目指した。加えて、受診率の高い自治体の取り組みを調査し、全国的に普及可能な実施体制のモデル構築を視野に入れた。
研究方法
令和6年度の研究においては、研究代表者である田中栄教授を中心に、各分野の専門家が連携しながら、以下の方法で調査・分析・マニュアル作成を進めた。
まず、放射線医学の視点からは、保険診療下で実施された骨量測定の実態調査を行い、測定部位別の実施件数や過去との比較を通じて、検診現場で実際に用いられている技術の現状を明らかにした。整形外科およびリハビリの分野では、検診による受診経緯や骨粗鬆症の診断率の検討、さらに運動指導の妥当性に関する文献レビューを行った。栄養学分野からは、骨密度の維持に必要な食事や栄養素の摂取に関するエビデンスを整理し、検診後の保健指導に役立つ内容を抽出した。
疫学的な検証としては、受診率の高い自治体へのヒアリング調査、好事例の収集を行った。公衆衛生学の立場からは、地域住民コホート研究ROADのデータを活用し、新たに提案する検診スキームの項目の再チェックを行いブラッシュアップを行った。更にこの項目についてJPOSコホート研究において妥当性と再現性を評価した。また、老年医学の分野では、高齢者の検診対象設定や医療面接・リエゾンサービスのあり方について検討した。
最終的に、これら多分野の知見を統合し、研究班全体で討議を重ねることで、「新骨粗鬆症検診・保健指導マニュアル(案)」を策定し、日本骨粗鬆症学会で発表・意見交換を行った。
結果と考察
本研究の成果として、まず住民コホートROAD、JPOSの解析により、検診方法として用いられるFRAXおよびOSTAの組み合わせが、骨量減少のスクリーニングにおいて高い感度を示すことが再確認された。既存骨折の有無とOSTAにFRAXの全項目を加えることで判定の精度が向上することが実証され、検診判定基準のブラッシュアップにつながった。さらに保険診療での骨量測定件数の分析により、末梢部位の測定が現在でも全体の3割以上を占めるなど、簡便なスクリーニング手法の有用性も確認された。
栄養や運動指導に関しては、従来カルシウム摂取が強調されてきたが、本研究では適正な体重維持やエネルギー・たんぱく質摂取の重要性が再評価された。また、運動面では、7000歩以上の歩行や筋力トレーニングの有効性、複合的運動の骨密度増加効果が報告された一方で、柔軟運動単独の効果は限定的であることも明らかとなった。
好事例として取り上げた自治体では、検診の意義を分かりやすく伝える広報資料の配布や、土曜日に受診日を設定するなど、住民が受診しやすい工夫がなされており、さらに医師会との連携により、要精検者へのフォローアップや包括的な健康管理体制の整備が進められていた。こうした事例からは、単なる検診内容の改善だけではなく、運営体制や地域連携の重要性が再認識された。
以上の知見を反映し、研究班では「新骨粗鬆症検診・保健指導マニュアル(案)」を完成させた。このマニュアルは、検診対象の明確化、判定基準、保健指導の内容など、現場での実用性を重視して構成されており、今後の普及展開に向けた有効な基盤となる。
結論
本年度の研究では、従来の骨粗鬆症検診法の課題を明らかにするとともに、多分野の知見を融合することで、科学的かつ実践的な検診・指導マニュアルを作成することができた。特に、検診精度の向上、栄養・運動指導の明確化、地域における好事例の分析、そして実施体制の整備という観点から、多くの実証的成果が得られた。
今後は、本マニュアル案に基づいたパイロットスタディを通じてさらに実用性を検証し、全国の自治体への展開を進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-03-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-03-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202408033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,979,000円
差引額 [(1)-(2)]
21,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,131,384円
人件費・謝金 1,041,120円
旅費 787,129円
その他 2,173,474円
間接経費 1,846,000円
合計 7,979,107円

備考

備考
自己資金:107円

公開日・更新日

公開日
2025-09-12
更新日
-