麻薬・向精神・指定薬物等の乱用防止に関する研究 国際的調和を踏まえた麻薬代替としての薬用植物等に関する研究

文献情報

文献番号
200940075A
報告書区分
総括
研究課題名
麻薬・向精神・指定薬物等の乱用防止に関する研究 国際的調和を踏まえた麻薬代替としての薬用植物等に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-029
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学 植物学科 香川薬学部)
  • 長野 哲雄(東京大学大学院薬学系研究科・生物有機化学)
  • 高上馬 希重(北海道医療大学薬学部・生薬学薬用植物・分子生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物乱用防止においては需要と供給の両面からの遮断が重要である。本研究は薬物供給を断つため、国連機関の要請に基づく「けし」やATS(アンフェタミン型興奮剤)の原料物質規制に役立つ代替有用薬用植物栽培推進や化学情報提供を目的とし検討した。
研究方法
ミャンマーでのけし代替薬用植物の栽培品目確定とその大量栽培や生産加工の指導、チーク葉の成分研究、カンボジアでの薬用植物園つくりへの助言、ATS原料のエフェドリンやサフロールの起源解析用分析法検討及び乾燥大麻試料のDNA鑑定法について検討した。
結果と考察
ミャンマーでは漢方処方薬用植物の栽培開始、現地での消費可能な薬用果樹や経済作物ソバや紅花の大量栽培の基盤確立、伝統医療普及に役立つ生薬薬局方作成への技術援助及び生薬市場調査を行なった。ミャンマーの薬用植物に熱帯リーシュマニア原虫に対し顕著な活性を示す4化合物を見出した。インドシナ半島の野生薬用植物ラン科セッコク類の保存と特性調査を開始した。覚せい剤原料物質エフェドリン類の起源解析では、日本で押収された多数の覚せい剤について安定同位体比を測定し、炭素・窒素・水素の値を3次元グラフで可視的に表すことにより、明瞭な分類を可能とした。ドラッグタイプとファイバータイプ大麻の「新鮮葉」と「乾燥葉」からDNA抽出を試み、両葉からrbcL遺伝子、trnL-trnF遺伝子IGSの2領域の検出を可能とした。「乾燥葉」試料でのドラッグタイプ型THCA生合成酵素遺伝子ドラッグタイプにのみ存在することがわかり、乾燥葉でも両タイプの識別が可能となった。
結論
インドシナ半島での薬物用原料植物不正栽培は、本研究の継続的な代替植物栽培支援を通して徐々に改善され、今までの成果がミャンマー国内で広く理解されるようになった。これは、日本国内での漢方薬原料不足解消の面からも中国以外の生産地となる生産活動の開始に期待が持てることである。インドシナ半島では、伝統薬の適正利用を可能とする薬用植物の規格化や伝統医学への基盤支援や配置薬振興を支援できた。かつてはけしの乱用だけのアジアの地域が、乱用薬物の多様化で、覚せい剤やMDMAの密造拠点になっている現状があり、原料規制には、その生産地の密造原料生産に頼らない生活基盤の改善が必要である。本研究で確立した密造原料の化学情報に関する技術を関係国と共有し、原料規制対策に役立たせる行政的な手法の確立も必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-