文献情報
文献番号
202408022A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病のデジタルヘルスの推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1014
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 西村 邦宏(独立行政法人国立循環器病研究センター・研究開発基盤センター 予防医学・疫学情報部 EBM・リスク情報室 予防医学疫学情報部)
- 尾形 宗士郎(独立行政法人国立循環器病研究センター)
- 野口 輝夫(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院・心臓血管内科)
- 泉 知里(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 北井 豪(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 心不全部)
- 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
- 井手 友美(九州大学 医学研究院)
- 堀江 信貴(広島大学 脳神経外科)
- 松丸 祐司(筑波大学)
- 有村 公一(九州大学病院 脳神経外科)
- 安斉 俊久(北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学教室)
- 中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 医療情報学講座)
- 太田 剛史(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
- 高木 康志(徳島大学)
- 中川 敦寛(東北大学 大学病院 産学連携室)
- 木内 博之(山梨大学 医学部)
- 木村 和美(学校法人日本医科大学)
- 福田 仁(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
- 井口 保之(東京慈恵会医科大学 内科学講座 神経内科 )
- 松田 均(国立循環器病センター 心臓血管外科)
- 湊谷 謙司(国立大学法人京都大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
井手友美
令和6年5月17日
逝去のため研究分担者辞退
研究報告書(概要版)
研究目的
脳卒中では、医療用コミュニケーションアプリの導入により、急性期再開通療法における時間短縮が達成された。心臓病の分野では、慢性期疾患管理へのデジタルヘルスの利活用が始まっている。しかし疾患特性が異なる循環器病のデジタルヘルスが、医療の効率性や価値の向上をもたらすかは、明らかでない。 本研究では、循環器病デジタルヘルスの実装の現状、実装の機会と成功、実装実現への障害に関する質問表による施設調査を行い、我が国の実態に応じた循環器病デジタルヘルス推進指標を策定することを目標とする。
研究方法
令和5年度は、関連学会(日本脳卒中学会、日本循環器学会等)施設に対し、循環器病分野のデジタルヘルスの現状と課題に関する横断的な施設調査を実施した。
令和6年度は、前年度の脳卒中領域に続き、循環器病分野で施設調査を実施した。第1回班会議を開催し、結果を公表した。
令和6年度は、前年度の脳卒中領域に続き、循環器病分野で施設調査を実施した。第1回班会議を開催し、結果を公表した。
結果と考察
日本循環器学会研修施設を対象として、心不全・虚血性心疾患(心疾患)、大動脈疾患分野におけるDHの導入状況に関する施設調査を行い、91施設より回答を得た。調査回答施設の大半が日本循環器学会研修施設(82施設、90.1%)であり、約43%(39施設)が500床以上の大病院であった。
心疾患分野では、デジタルヘルスの導入は、遠隔モニタリングが最も高く(44%)、ついで地域医療情報ネットワーク(28.6%)、デジタルデバイスによる救急隊と病院との連携(24.2%)、画像診断支援システム(15.4%)、デジタルシステムによる病診連携(11%)の順であった。
遠隔モニタリングの内容は、心電図、ペースメーカー、デバイスのモニタリングであった。デジタルデバイスによる救急隊と病院との連携では、救急搬送時のJOINによるトリアージ、SCUNA等の心電図伝送システム等が導入されており、画像診療支援システムは、胸部単純写真のスクリーニング、AI診断などが導入されていた。
遠隔医療の導入率は脳卒中と同様であったが、eICUやKAITOSなどの脳卒中とは異なるソフトウェアが導入されていた。循環器病危険因子の疾患管理システム(2.2%)、遠隔リハビリテーション(0%)、服薬管理アプリの導入(0%)などのデジタルヘルスシステムを導入している病院はほとんど見られなかった。
デジタルヘルスを導入しない理由として、例えば病診連携では、サービスを提供する人的資源が不足、サポート体制が整っていないことが約78%と最多であり、費用負担の問題で維持困難(37%)、データセキュリティ(29.6%)、サービスの提供者、利用者のニーズの不足(28.4%、22.2%)、保険収載がないこと(25.9%)等が挙げられ、デジタルヘルスの導入全体について、同様の導入への障壁が認められた。
大動脈疾患分野では、26施設から回答を得た。調査回答施設の大半が日本循環器学会研修施設(25施設、96.2%)であり、57.7%(15施設)が500床以上の大病院であった。回答施設における大動脈緊急症の年間症例数は、50-99例が23.1%、100例以上が11.5%であった。大動脈疾患分野では、デジタルデバイスの導入は、デジタルデバイスによる救急隊と病院との連携(30.8%)が最も高く、ついで地域医療情報ネットワーク(26.9%)、遠隔モニタリング(23.1%)、画像診療支援システム(15.4%)、デジタルシステムによる病診連携, ICTによる入退院支援システム(7.7%)の順であった。
デジタルヘルスの導入に関する障壁については、他の分野と同様であった。これは、導入によって本来人的資源がセーブされるはずであるにも関わらず、導入・運用するための人的リソースが確保できていないという現状を示唆している。
自由記述回答には、デジタルヘルスの定義や存在を知らない、病院/大学全体の方針として検討が進んでいない、導入の先にあるビジョンが見えない、地域として進んでいない、救急隊とのコスト意識の差や連携の問題、高齢者のデジタルリテラシーの低さ、システム間の標準化が進んでいない、といった、諸外国と共通の具体的な課題が挙げられていた。
心疾患分野では、デジタルヘルスの導入は、遠隔モニタリングが最も高く(44%)、ついで地域医療情報ネットワーク(28.6%)、デジタルデバイスによる救急隊と病院との連携(24.2%)、画像診断支援システム(15.4%)、デジタルシステムによる病診連携(11%)の順であった。
遠隔モニタリングの内容は、心電図、ペースメーカー、デバイスのモニタリングであった。デジタルデバイスによる救急隊と病院との連携では、救急搬送時のJOINによるトリアージ、SCUNA等の心電図伝送システム等が導入されており、画像診療支援システムは、胸部単純写真のスクリーニング、AI診断などが導入されていた。
遠隔医療の導入率は脳卒中と同様であったが、eICUやKAITOSなどの脳卒中とは異なるソフトウェアが導入されていた。循環器病危険因子の疾患管理システム(2.2%)、遠隔リハビリテーション(0%)、服薬管理アプリの導入(0%)などのデジタルヘルスシステムを導入している病院はほとんど見られなかった。
デジタルヘルスを導入しない理由として、例えば病診連携では、サービスを提供する人的資源が不足、サポート体制が整っていないことが約78%と最多であり、費用負担の問題で維持困難(37%)、データセキュリティ(29.6%)、サービスの提供者、利用者のニーズの不足(28.4%、22.2%)、保険収載がないこと(25.9%)等が挙げられ、デジタルヘルスの導入全体について、同様の導入への障壁が認められた。
大動脈疾患分野では、26施設から回答を得た。調査回答施設の大半が日本循環器学会研修施設(25施設、96.2%)であり、57.7%(15施設)が500床以上の大病院であった。回答施設における大動脈緊急症の年間症例数は、50-99例が23.1%、100例以上が11.5%であった。大動脈疾患分野では、デジタルデバイスの導入は、デジタルデバイスによる救急隊と病院との連携(30.8%)が最も高く、ついで地域医療情報ネットワーク(26.9%)、遠隔モニタリング(23.1%)、画像診療支援システム(15.4%)、デジタルシステムによる病診連携, ICTによる入退院支援システム(7.7%)の順であった。
デジタルヘルスの導入に関する障壁については、他の分野と同様であった。これは、導入によって本来人的資源がセーブされるはずであるにも関わらず、導入・運用するための人的リソースが確保できていないという現状を示唆している。
自由記述回答には、デジタルヘルスの定義や存在を知らない、病院/大学全体の方針として検討が進んでいない、導入の先にあるビジョンが見えない、地域として進んでいない、救急隊とのコスト意識の差や連携の問題、高齢者のデジタルリテラシーの低さ、システム間の標準化が進んでいない、といった、諸外国と共通の具体的な課題が挙げられていた。
結論
本年度は、心血管、大動脈領域を対象としたデジタルヘルスシステムの導入状況に関する施設調査を実施した。急性期領域でのシステム導入状況と比較し、慢性期や維持期をターゲットとしたシステムの導入は稀であった。脳卒中、心疾患、大動脈の分野において、デジタルヘルスの導入の分野は異なり、疾患特性による相違が認められた。全体にデジタルヘルスの導入率は低く、導入の障壁は、各分野において共通しており、諸外国からの報告と一致していた。医師の働き方改革が実施され、今後働き手が減少していく中で、医療の効率化を図るためには、デジタルヘルスの利活用は喫緊の課題である。
公開日・更新日
公開日
2025-09-02
更新日
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