レセプト等を利用した薬剤疫学データベース作成に関する研究

文献情報

文献番号
200940068A
報告書区分
総括
研究課題名
レセプト等を利用した薬剤疫学データベース作成に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 利治(情報・システム研究機構 統計数理研究所 データ科学研究系)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 悦司(国立保健医療科学院 経営科学部)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院薬剤部)
  • 久保田 潔(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レセプト等を利用したデータベース作成して薬剤疫学的な検討を実施し、市販後医薬品の恒常的安全対策を支える情報基盤創設の根拠を提供する。
研究方法
日本医療データセンターから2006年から2008年までの3年間の40歳以上のレセプトデータ(受療者実数は124,235人)の有償提供を受け、統計解析可能な状態に整備して、第1に「内容的な検討」を行った。第2に「方法論的な検討」として、大規模な医療施設において、ハッシュ関数による匿名化識別子を用いたレセプトデータと電子カルテ等の医療情報データベースとの連続可能性について検討した。第3に「諸外国の状況等についての情報収集」を行った。
結果と考察
第1の検討から、複数の医療施設にまたがる重複受診に伴う同一薬剤の重複処方は、かなりの頻度であることが明らかになった。薬剤の重複処方が過量使用に繋がっているのか、また薬剤の安全対策への影響がみられるのかを、今後、具体的に検討する必要性がある。併用禁止薬剤の併用処方の実態の検討から、重複処方に比べれば頻度は少ないものの、安全対策において重要な併用禁忌の薬剤組合せが処方されている実態が示された。薬剤と有害事象発生の関連についての探索的検討では、高脂血症用薬使用と横紋筋融解症発生を取り上げたが、診断名の妥当性の問題及びデータ規模の問題が関係して、明確な関連を見出すことができなかった。レセプトにおける診断名の妥当性はレセプト活用の最大の問題の一つである。電子カルテとの結合により正確な診断名の情報が入手可能になるまでは、レセプト上の情報を組合せて妥当性に高い診断名を把握する努力を有害事象ごとに具体的に進める必要がある。
第2の検討から、ハッシュ関数による匿名化識別子を用いたレセプトデータと電子カルテ等の医療情報データベースとの連続可能性について検討した結果、匿名化したデータの連結が可能であることを実証した。
第3の検討から、諸外国(韓国、台湾及び米国)の状況等にと比較して、わが国では、社会的に十分機能する各国民に固有の識別子は存在せず、また、保険者の数は多数であり、保険者のほとんどは、データの二次的利用の経験を有していないことが明らかになった。
結論
医薬品等の安全対策の改善のためにレセプトデータの活用は有望であるとともに、検討すべき技術的課題も多いことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
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