赤血球製剤を含めた血液製剤の病原体不活化法の開発と不活化評価法の開発

文献情報

文献番号
200940061A
報告書区分
総括
研究課題名
赤血球製剤を含めた血液製剤の病原体不活化法の開発と不活化評価法の開発
課題番号
H21-医薬・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 太組 一朗(日本医科大学武蔵小杉病院 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤の安全性向上のためには、病原体を不活化する安全で効果的な不活化法の開発が必要である。我々は、最も重要な血液製剤である赤血球製剤の病原体不活化法開発を目的に本研究を実施している。また、不活化法の評価のためにモデルウイルスではなく、これまで培養が困難であったヒト由来のウイルスを用いる評価系の開発も行ない、より精度の高い不活化評価系を構築することも目的とした。
研究方法
血漿分画製剤に用いられている不活化法から赤血球製剤にも応用可能な方法を検討し、酸性処理による不活化法を試みた。赤血球の溶血の有無を指標に赤血球が耐え得る酸性条件を求めた。そのpHと同じ等張溶液に仮性狂犬病ウイルス(PRV)やウシ下痢症ウイルス(BVDV)を添加し、経時的にウイルスの不活化効率を検討した。また、培養可能なHCVクローン、及びヒト肝癌細胞に馴化した E型肝炎ウイルス(HEV)を培養し、感染価を測定した。
結果と考察
検討したpH条件では、15分の室温処理によってPRVの感染価は1/2に減少しただけであったが、40℃に加温することを併用することによって著明な不活化が認められた。一方、BVDVに対して不活化効果は得られなかった。このpHの条件では30分以上の処理によって溶血が著明になった。より長時間の加温を可能にするために僅かにpHを変更したところ45℃で4時間まで著明な溶血は生じなかった。赤血球は体温から予想したよりも高い温度まで耐え得ることが判明した。酸性、または加温だけではウイルスの不活化は困難であるが、pHと加温を組み合わせ、条件を至適化することによって溶血を生じないでウイルスのみを不活化できる可能性が示唆された。また、HCVと HEVの細胞培養液からHCVでは104/mLの感染価をもつウイルス液が調整できた。HEVでは107コピー/mLのウイルス液を調整することができたが、感染価が103/mLと低くかった。不活化法の評価は可能であったが、評価できる範囲が狭く、効果的な評価のためには高感受性の細胞株を得る必要がある。
結論
赤血球製剤の病原体不活化法として、酸性下に加温処理を組み合わせることによって溶血を生じないでウイルスのみを不活化できる可能性が示唆された。また、モデルウイルスの代わりにHCVとHEVを用いた不活化の評価が可能になった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-