術中大量出血時の凝固障害機序の解明と止血のための輸血療法の確立 -手術中の大量出血をいかにして防ぐか-

文献情報

文献番号
200940059A
報告書区分
総括
研究課題名
術中大量出血時の凝固障害機序の解明と止血のための輸血療法の確立 -手術中の大量出血をいかにして防ぐか-
課題番号
H21-医薬・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高松 純樹(愛知県赤十字血液センター)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野 均(国立循環器病研究センター)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病研究センター)
  • 稲田 英一(順天堂大学医学部附属病院)
  • 板倉 敦夫(埼玉医科大学)
  • 梛野 正人(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
手術関連の死亡の最大の原因は大量出血であり、我が国では年間500例を超える出血例があり、そのうち150―200例の死亡が報告されている。このような術中大量出血に対する治療の鍵は、いかにして止血凝固能を改善させて止血をはかるかという点である。そのための適正な血液製剤の使用基準について未だ明確なものはない。本研究は術中大量出血時にみられる凝固障害の実態の解明とそれに対する適切な輸血療法の確立を目的とする。
研究方法
術中大量出血を来しやすい代表的な手術、病態である肝切除術(主として肝がん、肝門部胆管がん摘出術)、生体肝移植術、胸部大動脈瘤手術および産科DICについて出血量と輸血量、術後の凝固検査について検討した。さらに、胸部大動脈手術並びに産科DICの一部の症例ではあるが、予備研究としてのクリオ、フィブリノゲンによる止血療法を検討した。
結果と考察
胸部大動脈瘤手術、腹部大動脈手術などの大血管手術、肝臓手術(特に肝移植術)、周産期にみられる産科DICにおける出血と輸血療法につき、班員の施設で検討した。胆道癌肝切除症例では2000mL以上の出血例は30%であり、124例中3例の死亡例がみられた。胸部、胸腹部大動脈置換術(再手術を含む)施行患者において、血小板輸血のトリガー値を10万/μLと高く設定し、fibrinogenの補充をクリオプレシピテートで行なった症例では、人工心肺離脱後、血小板数は10万/μLから20万/μLで維持され、fibrinogen値の速やかな上昇がみとめられる症例が多数存在した。産科例ではFIB.を使用したDIC基礎疾患のある群は未使用群に比べ、FFP/RCCで有意に低下した。                 
結論
心臓血管外科領域、特に胸部大動脈瘤置換術などの大血管外科がその術式の広さ、複雑さ、侵襲の大きさ、術前の凝固、線溶障害などにより、術中大量出血症例となり易いことが判明しているが、出血の高リスク手術であっても、その出血量には施設間差が大きいと考えられ、また出血に対する輸血療法にも差がある。産科出血では、枯渇性凝固障害に加え、消費性凝固障害を併発していることも多く、他領域の大量出血に比べ、DICの合併頻度が高い。そのため、FIB.投与による凝固因子の急速補充の良い対象と考える。FFPの投与ではDIC改善に時間がかかり、その間子宮出血のコントロールがつかないと、子宮摘出が必要となる。FIB.投与を行うことで、母体の救命のみならず、子宮摘出を避け得ることも期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-