胃がんの一次および二次予防の現状把握とヘリコバクター・ピロリ未感染時代に対応した新たな胃がん検診の提案に向けた研究

文献情報

文献番号
202407047A
報告書区分
総括
研究課題名
胃がんの一次および二次予防の現状把握とヘリコバクター・ピロリ未感染時代に対応した新たな胃がん検診の提案に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24EA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
後藤田 卓志(がん研有明病院 上部消化管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 秀樹(京都府立医科大学 分子標的予防医学)
  • 草野 央(北里大学 医学部)
  • 石橋 史明(国際医療福祉大学市川病院 消化器内科)
  • 松山 裕(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 生物統計学)
  • 萩原 康博(東京大学 大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻生物統計学分野)
  • 井上 真奈美(国立がん研究センター がん対策研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胃発癌の明らかな原因であるヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ)菌感染率が急速に減少する現状に適応した胃がん検診の在り方を提案することが急務である。まず、検診対象者の絞り込みとその妥当性について文献的検討を実施する。その結果、臨床的に妥当で実現可能な新たな検診システムを考案するための基礎となる資料を示した上で、時代に則した新たな胃がん検診の提案を行うことを目的とする。
研究方法
まず、胃内視鏡検査対象者を絞り込む課題として、①ピロリ未感染者率の推移、②ピロリ感染有無別の胃がん発生率、③ピロリ菌陽性例における除菌率、④ピロリ菌除菌後の年齢層別胃がんリスク、⑤1例の胃がんを発見する費用、⑥胃がん発見後の治療に要する費用、をあげた。安全上および運用上の課題として、⑦ピロリ菌検査の精度、⑧除菌による副作用や抗生剤投与による腸内細菌叢の変化に関わる他疾患のリスク、をあげた。
この8つの課題候補を研究班全員参加で多方面からの意見交換を行い、①ピロリ未感染者率の推移と②ピロリ感染有無別胃がん発生率が最重要の検討課題でありピロリ未感染者を対策型胃がん検診から除くことの可否の検討を最優先とすることで意見集約した。次に、⑦ピロリ菌検査の精度の評価を行い、「既感染/感染者への介入方法は議論しないことで意見が一致した。最終的に、③ピロリ菌陽性例における除菌率と④ピロリ菌除菌後の年齢層別胃がんリスクの検討は優先順位が低いことも確認した。なお、⑧除菌による副作用や抗生剤投与による腸内細菌叢の変化に関わる他疾患のリスクは、現時点では新たな胃がん検診においてピロリ除菌介入を提案する予定はなく本班会議における本質的課題ではないとの結論に至り検討対象から除外した。さらに、新たに提案する胃がん検診の管理運用を複雑化しないという目的で「既感染/感染者への介入方法は議論しないことで意見が一致し③ピロリ菌陽性例における除菌率と④ピロリ菌除菌後の年齢層別胃がんリスクの検討は優先順位が低いことも確認した。
最終的に、本研究班で取り扱う「ピロリ菌未感染者」とは、「生まれてからこれまでに一度もピロリ菌に感染したことのない者とし、除菌者や高度粘膜萎縮等にて自然消失した者は含めない」と定義し、上述の①②⑦を明らかにするためにそれぞれの文献検索およびシステマティックレビューを行った。
結果と考察
①は、システマティック・レビューにより日本における出生年別ピロリ菌未感染率を推定した。2010年から2024年までに発表された疫学研究を網羅的に検索し、最終的に608文献から8文献を採用しメタ回帰分析により統合解析した。1930年から2011年に出生した合計46,490人において、全世代を統合したピロリ菌未感染率の点推定値(95%信頼区間)は86.1%(85.5-86.4%)であった。特に1970年以降の出生者で急激に低下していた。(Helicobacter 2025 in Press)
②に対しても同様にステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。2014年から2024年に発表された文献の中から、ピロリ未感染状態が検査により確認され、かつ胃癌の組織学的診断が報告されている研究を対象とした。最終的に6件(コホート研究4件、横断研究2件)が組み入れられ、総解析対象者数は248,482名であった。解析の結果、未感染者における胃癌の有病率は0.049%(95%信頼区間: 0.012–0.198)、発生率は1.58/10,000人年(95%信頼区間: 0.56–4.50)と推定された。さらに、pT1b以深の浸潤癌に限定した有病率は0.031%(95%信頼区間: 0.004–0.257)と、より低値であった。(論文投稿準備中)
⑦に関してはシステマティックレビューおよびメタ解析を実施中である。今後、これらの解析結果も踏まえて⑤と⑥に関して実地のRCT既報を用いて医療経済的シミュレーションも予定している。
結論
日本における最新のデータを対象とした系統的レビューおよびその後のメタ回帰分析の結果、ピロリ菌未感染率は出生年が1970年以降で著しく上昇し、特に2000年以降では95%を超える水準で頭打ちとなっていることが明らかとなった。また、ピロリ未感染成人における胃癌は極めて稀であることも明らかとなった。今後、未感染者が人口の大半を占めることが見込まれる日本においては、費用対効果の観点から胃がんを効率的に検出するための胃がん検診戦略の見直しが必要である。

公開日・更新日

公開日
2026-02-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-02-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202407047Z