小児がん患者在宅移行の円滑化促進と在宅療養における課題とニーズ把握のための研究

文献情報

文献番号
202407029A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん患者在宅移行の円滑化促進と在宅療養における課題とニーズ把握のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1022
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大隅 朋生(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 浩利(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野)
  • 紅谷 浩之(オレンジホームケアクリニック)
  • 長 祐子(松川 祐子)(北海道大学病院 小児科)
  • 名古屋 祐子(宮城大学 看護学群)
  • 荒川 ゆうき(埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科)
  • 荒川 歩(国立がん研究センター 中央病院小児腫瘍科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 横須賀 とも子(神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科)
  • 岩本 彰太郎(三重大学医学部附属病院周産期母子センター)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科)
  • 古賀 友紀(九州大学医学部小児科)
  • 濱田 裕子(公立大学法人 下関市立大学 新学部設置準備室)
  • 岡本 康裕(鹿児島大学医歯学総合研究科小児科学分野)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 余谷 暢之(国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
  • 中村 知夫(国立成育医療研究センタ- 周産期診療部 新生児科)
  • 西川 英里(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院 小児がん治療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 小児がんは依然として小児期の主要な死因の一つであり、治癒が困難と判断された後も病院で療養を続ける子どもたちが多いのが現状である。しかし、近年では終末期の過ごし方に多様な価値観が反映されるようになり、自宅での療養を希望する小児がん患者やその家族も増えている。特に新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、在宅療養のニーズは今後さらに高まることが予想される。
 本研究の目的は、そうした希望を現実的な選択肢として実現するために、小児がん患者の在宅移行および在宅療養の推進に向けて、多角的な課題を明らかにし、解決策を提案・実践することである。具体的には、地域格差、医療資源へのアクセス、制度上の障壁といった構造的課題の解明に加え、在宅輸血や家族の心理社会的支援、こどもの意思決定支援、死亡後の病理解剖の体制整備など、終末期ケアの質を向上させる多様なテーマに取り組んだ。
研究方法
2024年度は、これまでに蓄積された研究成果と現場の実践を土台に、以下のような多角的な調査研究を行った:
・終末期を見据えた小児がん患者の退院調整に関する医療従事者へのインタビュー調査
・小児がん患者とその家族の経済的負担に関する実態把握と調査設計
・在宅における小児患者への輸血(特に血小板輸血)の現状と課題に関するアンケート
・地域資源を紹介するリーフレットの作成・改訂と活用に関するワークショップの実施
・在宅療養経験のある遺族や支援者へのインタビューによる心理社会的課題の探索的調査
・自宅で看取った子どもの病理解剖を希望するケースに対する支援体制モデルの試行
・小児がん患者の意思決定支援に関するセミナーの開催と参加者への意識調査
・成人在宅医療との連携を深めるための講演活動と地域単位での啓発活動
本研究にあたっては、倫理審査を各研究機関で適切に受け、プライバシー保護にも最大限配慮して調査を遂行した。
結果と考察
 退院調整に関する調査では、小児がん特有の急速な病状進行や家族の心理的負担への対応が重要であることが浮き彫りとなり、実践的な知見が蓄積された。これはすでに学術誌に投稿され、広く共有が期待されている。
 在宅輸血に関しては、限られた施設での実施ながら、現場の創意工夫により実現可能であることが確認された。一方で、製剤の発注・保管、キャンセル時のコスト負担、人的リソースの不足といった制度的な壁も明確となり、今後の制度整備に向けた提言の土台となった。
 心理社会的支援に関する調査では、突然の発症に伴う将来不安や治療選択における葛藤、きょうだい児のケアへの支援体制の不足などが示され、家族単位での包括的支援の必要性が明確になった。
 病理解剖については、在宅で亡くなった子どもの遺体を病院に搬送し、解剖を実施した事例が初めて記録され、現実的な制度モデルの一端を示した。家族の希望を叶える支援体制の実装可能性が確認された意義は大きい。
 また、こどもの意思決定支援に関するセミナーでは、300名以上が参加し、医療者の関心の高さと課題意識が浮き彫りとなった。医療倫理や説明の仕方など、具体的なニーズを把握できたことは今後の教材開発や研修体制に活かされる。
 さらに、成人を対象とする在宅医療機関へのアプローチも進み、小児がん患者の支援ができる施設のネットワーク拡充が期待される。
結論
 本研究は、小児がん終末期医療の新たな可能性を切り拓く実践知に富む成果を多数挙げた。従来、病院中心であった小児がんケアのあり方を見直し、家族の希望やこどもの尊厳を大切にした在宅療養の支援モデルを具体化した点において、大きな意義を有する。特に、在宅輸血や病理解剖支援など、これまで実現が難しいとされた分野に対しても制度的・実務的な提案がなされ、現場と政策をつなぐ架け橋となる知見を提供した。
 今後は、これらの研究成果を政策提言や実践モデルとしてさらに発展させ、地域格差の是正と、すべての子どもと家族が希望する場所でその命の時間を全うできる社会の実現をめざしていくことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2026-02-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-02-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
202407029Z