医薬品の環境影響評価ガイドラインに関する研究

文献情報

文献番号
200940049A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の環境影響評価ガイドラインに関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鑪迫 典久(国立環境研究所環境リスクセンター 環境暴露計測研究室)
  • 鈴木 俊也(東京都健康安全研究センター 環境保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本でまだ策定されていない医薬品の環境影響評価法について,欧米諸国の最新情報を収集すると共に,国際的視点を保ちつつ日本に適合するリスク管理の方法,リスクに応じて実施すべき試験,対象とすべき医薬品の範囲およびその根拠などについて,実際の運用に適合するガイドラインの策定に向けた研究を実施する。
研究方法
 試行的かつ系統的に実施している欧米の事例を参考にして,対象医薬品と関連する事項を整理した。都市河川を対象に,存在濃度を実測し,試行モデルから算出された環境予想濃度(PEC)(表層水)と比較検討した。「化審法」に採用されている藻類,甲殻類および魚類に対する急性毒性試験法の適用を考慮しつつ,新たに慢性毒性試験法の適用の可能性を含めて生物影響評価法を検討した。
結果と考察
 PEC(表層水)値を求め,0.01μg/L以上の場合には,予測無影響濃度(PNEC)に対するPEC値の比を求め,その比が0.1を超える場合は,PECおよびPNEC値を精緻化するため追加試験を実施する概要の,段階的なリスク評価手法の手順を提示した。さらに,PEC(表層水)の値を求めるために必要な想定要素の数値を提示し,その根拠を示した。
 医薬品101成分について河川環境水中の実測値はPEC(表層水)を上回らなかった。季節的に流行する疾病の治療薬の市場浸透率は,季節変動を考慮する必要もあることが示唆された。汎用性の高い医薬品の市場浸透率の地域格差は小さいことが示唆された。水環境中の医薬品の疎水性,生分解性,光分解性,残留塩素との反応性等に関する数値を実験的に求めて整理した。
 環境中で存在が確認された医薬品5品目を選択し,化審法に採用されている既存の急性毒性試験法を適用した結果,対象とする医薬品および試験生物によって毒性発現の程度が異なり,医薬品の野生生物に与える影響はヒトの生理作用とは異なって種々様々であることがうかがわれた。魚類の急性毒性評価試験について,OECDで開発中の受精卵を用いる試験法が適用できる可能性が示唆された。
結論
 ヒト用の医薬品の環境リスクを評価するために情報収集し,評価対象とする医薬品の範囲および段階的なリスク評価手法の適用手順を提示した。PEC(表層水)を求める想定要素の数値は安全性を考慮すると妥当であることが明らかになった。急性・慢性毒性試験法はおおむね既存の試験法に準じて行うことができることが示された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
-