がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討のための研究

文献情報

文献番号
202407013A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
松坂 方士(国立大学法人弘前大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター国際連携研究部)
  • 高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院)
  • 京 哲(島根大学医学部 産科婦人科)
  • 金村 政輝(宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部)
  • 井口 幹崇(和歌山県立医科大学 消化器内科)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院予防医学センタ-)
  • 田中 里奈(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所国際政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 がん検診によってがん死亡率を低下させるためには精度管理が必要であるが、日本ではこのことが徹底されていない。
 精度管理指標の中でも、欧州等では直接的な検査性能の指標として感度・特異度を重要視してきた。しかし、日本ではがん検診受診者情報を集約するための体制が整備されていないために感度・特異度を算出できず、精度管理の大きな障害とされてきた。
 令和3-4年度厚生労働科学研究費補助金「がん登録を利用したがん検診の精度管理方法のための研究」では、全国がん登録を利用して感度を含む精度管理指標を算出し、それによって精度管理を向上させる事業を展開するための研究を実施した。
 さらにこの事業を進展させるためには、以下のような課題があることも明らかになった。
  (1) 精度管理指標から精度管理を向上させるための手法の検討
  (2) 感度を含む精度管理指標を適切に情報提供する手法の検討
  (3) 職域がん検診での精度管理への応用の検討
 本研究の目的は、これらの課題を整理し、がん登録情報を利用したがん検診の精度管理をさらに進展させることである。
研究方法
1.がん検診事業の精度管理手法の開発と都道府県および市区町村における精度管理の実施と報告体制の整備
 がん検診事業の精度管理手法を開発し、自治体における精度管理の実施と報告体制の整備を行うこととした。

2.精度管理指標を適切に情報提供する手法の検討
 精度管理指標やがん検診全体を適切に理解するための情報を提供するために、情報提供の資材を作成し、公表する。

3.職域がん検診での精度管理への応用の検討
 前回の研究班では対策型検診のみを対象としたが、今回は職域がん検診の精度管理での全国がん登録の利用を検討する。
結果と考察
1.がん検診事業の精度管理手法の開発と都道府県および市区町村における精度管理の実施と報告体制の整備
 令和6年度までに7都県でがん登録情報を利用したがん検診の精度管理事業(感度・特異度の算出)を実施した。
 今後、このような新規に事業を開始する自治体が増加することで、さらに行政上の知見が蓄積するとともに、感度・特異度の許容範囲の設定も可能になると考えられた。

2.精度管理指標を適切に情報提供する手法の検討
 本研究班はホームページを開設して厚生労働科学研究費補助金「がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究」班(研究代表者・斎藤博)が作成した資料を引き継いで再構築した。
 また、本研究班が具体的に取り組む課題はがん検診の感度・特異度を算出してそれを解釈し、対策型検診の精度管理に利用することである。そのため、感度・特異度を精度管理に利用するにあたっては、医療・がん検診従事者ががん検診に関する十分な専門知識を有し、他の精度管理指標と合わせて正確に感度・特異度を解釈して精度管理を行い、一般市民に精度管理状況を説明してがん検診に対する信頼感を醸成し、一般市民ががん検診と感度・特異度を正確に理解して信頼して受診するための資料を公表した。

3.職域がん検診での精度管理への応用の検討
 全国がん登録情報と職域がん検診情報の照合による精度管理は現状では不可能である。
 研究班の検討では、法令に基づいて職域がん検診を実施するためには以下の3つの選択肢があるとした。
  (1) 労働安全衛生法に基づき、雇用者が実施する
  (2) 高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、健康保険者が実施する
  (3) 健康増進法に基づく対策型検診を、他の職域での健診と同時に実施する
結論
がん検診によってがん死亡率を低下させるためには、徹底した精度管理が必須である。本研究はがん検診情報とがん登録情報を照合によって感度・特異度を算出して精度管理を実施する手法を普及させることを目的としている。
 今年度は、全国で算出された感度・特異度を収集して一覧表にして許容範囲の設定に向けた取り組みを開始し、愛媛県や広島県で新規に照合事業を開始する支援を行った。
 ただ、この取り組みでの感度・特異度は「がん検診事業」としての値であり、がん検診が実施する「検査」の値ではない。がん検診の「見逃し」に関する誤解も多く、これらについて一般市民や臨床医などへの効果的な情報提供を検討する必要がある。
 また、現状では職域がん検診情報とがん登録情報の照合は法的に不可能である。職域がん検診を効果的なものにするためには照合による精度管理が必要であり、今後は職域がん検診の法的なあり方を検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-03-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
202407013Z