文献情報
文献番号
200940041A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師の社会的役割を踏まえた医師との地域医療連携のあり方に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大野 勲(東北薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 水柿 道直(東北薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
患者本位の薬物治療を提供するためには、より効果的な医師―薬剤師の連携=医薬連携、を推進することが必要である。そこで、医師・薬剤師間の情報交換のニーズを詳細に検討することを目的として、情報交換を試行した。さらに、医師・薬剤師間の情報交換がもたらす具体的な効果についても、残薬調整による医療費節減効果の面から調査した。
研究方法
診療科共通かつ医師/薬剤師双方向の情報交換が可能な、また簡便な仕様の確認事項報告書を用い、病院4施設、診療所3施設の医師とこれらの施設から発行される院外処方箋の受け取り実績のある近隣の保険薬局23店舗の薬剤師の間で、平成21年9月~平成22年1月に情報交換および残薬調整を実施した。
結果と考察
医師から薬剤師へは、薬剤師からの問い合わせに対する返事が多く、服薬指導やコンプライアンス確認などの依頼となっている。一方、薬剤師から医師への情報は、医師からの依頼に対する返答や、病名や処方意図など医師の薬物治療に対する考えを問い合わせるものであり、薬剤師はこれらの情報を服薬指導に活用している。興味あることに、薬剤師から医師への情報の中に『患者の情報』すなわち本来医師に尋ねるような病気、検査、日常生活に関する質問や疑問が混じっていることである。医師にとっては、診察室では普段得られない、診療や処方箋作成に非常に有用な情報である。さらに、薬剤師からは、医師からの情報と患者からの情報を総合的に考慮したうえで、コンプライアンスを上げるために処方提案をしているものもみられた。残薬理由は、飲み忘れついで自己調節であり、これらで原因の90%を占めた。一人当たり一回の残薬調整により4,163円が節約できた。従って、慢性疾患患者5,555千人(厚生労働省統計調査保健衛生分野)に年1回、残薬調整を実施したとすると、年間で約200億円もの医療費(薬剤費)が節約できることになる。一方、における平成20年度患者調査によると、年間の慢性疾患患者はであった。薬剤師から医師への残薬とその理由に関する情報提供は、医療経済的に有効なばかりではなく、残薬理由を考慮したより安全、有効な処方箋作成につながることが確認された。
結論
医師と薬剤師間の情報交換には双方に予想以上の有用性が存在することが明らかとなった。従って、今後は、この医師薬剤師による医療連携の促進を図るべく、コミュニケーションや情報交換制度の改善を積極的に進める必要がある。
公開日・更新日
公開日
2010-05-31
更新日
-