医薬品による有害事象の発生における個人差の要因に関する研究

文献情報

文献番号
200940036A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品による有害事象の発生における個人差の要因に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 雄一(東京大学薬学部)
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院薬剤部)
  • 東 雄一郎(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品による副作用発症に個人差が生じる機構を、薬物動態学的観点から解析するとともに、患者の症例情報を用いて副作用に寄与している患者背景因子を明らかにすることを目的とした。
研究方法
P-糖タンパク質の発現量に個人差が生じる機構に関して遺伝子の一塩基置換やDNAメチル化の影響を解析するとともに、薬物トランスポーターの機能変動が基質となる医薬品の体内動態にどの程度の影響を与えるのかを検討する評価モデルを用いて、末梢臓器での医薬品の暴露量を予測した。また、新規抗がん剤であるトラスツズマブについて、国立がんセンターでの診療記録を対象とした副作用の発症に関連するデータ集積を行い、副作用の発症と関連する患者背景因子を探索した。
結果と考察
薬物トランスポーターに着目して、医薬品よる副作用の発症における個人差が生じる要因を解析した。薬物トランスポーターの機能変動が基質となる医薬品の体内動態にどの程度の影響を与えるのかを検討する評価モデルを用いて、末梢臓器での医薬品の暴露量を予測したところ、組織への取り込み過程にトランスポーターが関与している場合、その機能阻害は末梢臓器への医薬品暴露を増加させ、薬効の増強・副作用の発現のリスクが高くなることを明らかにした。また、代表的な薬物トランスポーターであるP-糖タンパク質の遺伝子転写調節領域にある一塩基置換やエピジェネティックな制御機構の一つであるDNAメチル化によってP-糖タンパク質の発現量が個人によって異なる可能性を示した。さらに、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体である抗がん剤トラスツズマブ(T)について、国立がんセンターでの実診療での実施例のデータを用いて副作用としてのInfusion Reaction(IR)とに関連するデータ集積を行い、IRの発現状況と治療効果について後方視的に検討したところ、Tによる術前化学療法におけるIRの発現と治療効果との間に関連性が示唆された。
結論
組織への取り込み過程に薬物トランスポーターが関与している場合、遺伝子多型やDNAメチル化などによって機能低下が生じると、末梢組織への薬物暴露濃度を増加させ、副作用の発現のリスクが高くなる。これが副作用の発症における個人差の要因となっている可能性が考えられた。診療記録データを用いて副作用に関連するデータ集積を行い、副作用発症と関連する患者背景因子を探索する調査方法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
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