文献情報
文献番号
202406012A
報告書区分
総括
研究課題名
カンナビノイド医薬品とカンナビノイド製品の薬事監視
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2012
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
太組 一朗(聖マリアンナ医科大学 医学部脳神経外科学、ニューロモデュレーションセンター )
研究分担者(所属機関)
- 赤星 栄志(日本大学 生物資源科学部)
- 秋田 定伯(医療法人 明和会 たまき青空病院 形成外科)
- 岸 泰宏(日本医科大学医学部)
- 饒波 正博(沖縄赤十字病院 脳神経外科)
- 正高 佑志(一般社団法人 Green Zone Japan)
- 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
- 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 三木 直子(一般社団法人 GREEN ZONE JAPAN)
- 太田 有紀(聖マリアンナ医科大学 医学部 薬理学)
- 高橋 千尋(野崎 千尋)(早稲田大学 理工学術院)
- 菅 俊光(関西医科大学 総合医療センター)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
15,043,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和5年の大麻取締法および麻薬及び向精神薬取締法の改正により、一部の大麻由来製品が新たに麻薬に分類された。本研究は、従来よりこれらの製品を使用していた難治性てんかん患者等の治療継続を合法的に確保するとともに、将来的な医薬品化および制度整備に資する科学的・制度的基盤を構築することを目的とした。具体的には、①患者の適法な継続使用体制、②医療機関における麻薬管理体制、③制度比較と製品実態の把握、④特定臨床研究の実施、⑤政策提言の構築を柱として実施した。
研究方法
多機関・多分野による協働体制のもと、以下の6領域において調査・実践を行った。①制度比較調査では、カナダ、英国、豪州など6か国における未承認かつ麻薬指定製品の医療使用制度を分析した。②CBD製品実態調査では、市販98製品のΔ9-THC含有量を精密測定し、10ppmの新たな規制閾値への適合率を評価した。③文献レビューでは、神経疾患、精神疾患、疼痛、依存症、脳腫瘍などに対するカンナビノイドの有効性と課題を整理した。④特定臨床研究では、DCT(遠隔診療・配送・帳簿管理)形式による麻薬管理対応型体制を構築し、難治性てんかん患者14名を対象に試験を開始した。⑤制度提言では、臨床研究実施のための「麻薬に分類されるカンナビノイド製品を用いた研究ガイダンス案」を作成した。⑥産業調査では、標準物質整備や参入障壁に関する国内外の実態を把握した。これらは全て倫理審査委員会の承認を得て、研究法規および倫理指針に則って実施された。
結果と考察
CBD製品の実態調査では、市販製品の約52%がΔ9-THC閾値(10ppm)を超過しており、多くの製品が麻薬指定に該当し得る実態が確認された。オンライン調査では799名から回答を得て、CBD製品が睡眠、不安、疼痛の改善に寄与しているとの主観的効果が多数報告された。一方で、21%に介入不要なごく軽度の有害事象を認めたが、重篤な安全性上の懸念は認められなかった。特定臨床研究に先立ち、既存使用者32名に対して所有権移転および再処方による合法化スキームを確立したうえで、令和6年度より新規14名への投与を開始した。診療・処方・配送・データ収集の全工程をDCT形式で統合し、制度下での実施可能性と管理実効性を検証した結果、特定臨床研究の枠組みでは医療提供が可能であることを確認した。また、神経疾患領域に関する文献レビューでは、Sativexが20か国以上で承認されており、欧米を中心にその臨床的位置づけが確立していることが明らかとなった。
さらに、制度比較からは、未承認・麻薬指定製品の医療使用を可能とする「特例使用制度」や、スケジュール制導入による柔軟な運用が国際的には主流となっており、日本においても中間的な制度設計の検討余地があることが示唆された。あわせて、標準物質の整備や客観的測定体制の未整備が、製品の輸入・流通上の重大な課題として浮上した。
さらに、制度比較からは、未承認・麻薬指定製品の医療使用を可能とする「特例使用制度」や、スケジュール制導入による柔軟な運用が国際的には主流となっており、日本においても中間的な制度設計の検討余地があることが示唆された。あわせて、標準物質の整備や客観的測定体制の未整備が、製品の輸入・流通上の重大な課題として浮上した。
結論
本研究は、制度改正下における大麻由来CBD製品の適正使用体制を構築し、麻薬管理に対応したDCT型特定臨床研究を国内で初めて実施した点において、医療制度および薬事行政上の重要な先行事例となった。特に、遠隔診療、帳簿管理、配送等を統合した体制は、今後の麻薬管理型臨床研究や治療における新たな実行モデルを提示するものである。
また、ドラッグラグ解消のためにもSativexの導入が必須であり、現行の制度下において早急な薬事対応と開発体制の整備が望まれる。CBD製品の適正使用と製品選別のためには、第三者的な分析基盤と標準物質の普及が不可欠である。THCを含有するCBD医薬品は今後、麻薬としての管理下で流通することになるが、医療費の抑制および患者への公平なアクセスを確保する観点から、一般処方箋医薬品に準じた合理的かつ効率的な流通制度の設計が強く求められる。
本研究の成果は、ガイドライン策定、行政通知、ならびにスケジュール制など中間制度の設計に資する実証的知見を提供するものであり、令和7年度以降の制度整備と政策展開に向けて継続的な取り組みが必要である。
また、ドラッグラグ解消のためにもSativexの導入が必須であり、現行の制度下において早急な薬事対応と開発体制の整備が望まれる。CBD製品の適正使用と製品選別のためには、第三者的な分析基盤と標準物質の普及が不可欠である。THCを含有するCBD医薬品は今後、麻薬としての管理下で流通することになるが、医療費の抑制および患者への公平なアクセスを確保する観点から、一般処方箋医薬品に準じた合理的かつ効率的な流通制度の設計が強く求められる。
本研究の成果は、ガイドライン策定、行政通知、ならびにスケジュール制など中間制度の設計に資する実証的知見を提供するものであり、令和7年度以降の制度整備と政策展開に向けて継続的な取り組みが必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-06-27
更新日
-