臨床研究のさらなる適正化に向けた諸課題に係る調査研究

文献情報

文献番号
202406009A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研究のさらなる適正化に向けた諸課題に係る調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2009
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 典宏(国立大学法人 北海道大学 北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構)
研究分担者(所属機関)
  • 布施 望(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院)
  • 沖田 南都子(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門 研究企画推進部)
  • 飯田 香緒里(東京科学大学 医療イノベーション機構)
  • 柴田 大朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
  • 田代 志門(東北大学 大学院文学研究科)
  • 山本 晴子(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター)
  • 中村 健一(国立がん研究センター中央病院 国際開発部門)
  • 七戸 秀夫(北海道大学 病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構 臨床研究監理センター)
  • 尾崎 雅彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 臨床研究支援部門 研究実施管理部 治験事務室/倫理審査事務室)
  • 武田 晃司(特定非営利活動法人 西日本がん研究機構)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター 臨床研究支援部)
  • 横田 崇(国立大学法人東北大学 東北大学病院  臨床研究監理センター)
  • 平嶋 純子(寺田 純子)(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
  • 石黒 めぐみ(東京科学大学病院 ヘルスサイエンスR&Dセンター)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,124,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研究のさらなる適正化に向けた諸問題を検討するため、5つの分野に分けて調査研究を行った。それぞれの目的は以下の通りである。
研究1 著しい負担を与える検査等について:臨床研究法で適応範囲とされた「著しい負担を与える検査等」についてステークホルダーからの意見を収集し、ガイダンス・事例集を作成する。
研究2 適応外使用について:がん領域、小児領域の専門家並びに臨床研究専門家から意見聴取を行い、特定臨床研究から除外される薬事承認済の用法等による場合と同程度のリスク以下と判断する基準・考え方について整理する。
研究3 スポンサーの概念について:臨床研究法改正で導入されるスポンサーの概念について、想定される実施体制の類型と研究実施時の体制整備の手引きとなる資材を作成し、その円滑な導入を図る。
研究4 利益相反管理について:スポンサー概念の導入及び利益相反データベース構築事業を考慮した利益相反管理ガイダンス及び様式の改訂を検討する。
研究5 CRB審査の質向上について:臨床研究の倫理性、科学性を担保できるCRBの標準化が達成するため、CRBの審査に関わる研修・教育を支援し、その質を向上させるための資材作成に取り組む。
研究方法
研究1:著しい負担を与える検査等の事例案を研究班内で作成し、臨床研究支援者や一般の立場の委員を含むCRB委員等から意見を聴き、最終的なガイダンスを作成した。
研究2:がんや小児領域専門家の協力を得て課題を抽出してアンケートを作成、全国の臨床研究実施施設や学会に調査を行った。その結果を検討して事例案を作成した。
研究3:臨床研究法改正で導入された「統括管理者」について、導入後の実施体制と法人内で整理すべき事項などを整理した。
研究4:スポンサーの概念導入による利益相反管理について、COI管理の主体となる研究者及び研究者の所属機関等関係機関へのヒアリング調査及び、研究倫理等に関わる有識者へのインタビュー等を実施や臨床研究支援実務者からの意見収集を行い、とりまとめた。
研究5:厚生労働省で公開されている先進医療、患者申出療養等の研究の審査事例を題材として内容の調査・分析を行い、研修・教育に活用できる仮想的な事例を作成、さらにCRB関係で検討を行い、改善した。
結果と考察
研究1:幅広いステークホルダーからの意見を基に研究班内で検討し、「臨床研究法における研究対象者に著しい負担を与える検査等の該当性判断に関するガイダンス」を作成した。本ガイダンスでは、前半部分で著しい負担を与える検査等についての基本的な考え方を示し、後半で具体的な事例を提示した。各事例においては「考え方」「判断のポイント」を示した。これにより臨床研究を実施する者、審査委員に適正な判断基準を提示できることが期待される。
研究2:アンケート調査の結果から、特定臨床研究から除外される適応外事例として、①学術団体からの指針およびこれに類する方法で推奨されるもの、②承認された効能・効果で対象者に対する有効性、安全性が認められるものとし、これに基づき29事例からなる事例集を作成した。これにより特定臨床研究から除外される適応外事例についての判断に資することができると考えられる。
研究3:臨床研究法改正で導入された「統括管理者」について、該当事項の整理を行った。導入後の実施体制について3つの類型に整理し、これらの実施手順のフローを作成すると共に、必要な文書等を整理した。これらの資材により、スポンサー概念の円滑な導入な期待される。
研究4:スポンサー概念導入に係る利益相反管理のあり方の検討・論点整理し、法人等が統括管理者となる場合の組織COIにかかる必要なマネジメント案、利益相反管理様式改訂案、利益相反管理ガイダンスの改定案を作成した。これにより、スポンサー概念導入に伴う利益相反管理が円滑に実施されることが期待される。
研究5:先進医療、患者申出療養等の研究の審査事例を参考に、「認定臨床研究審査委員会における審査の質向上を目指す教育研修のための資料集」を作成した。倫理・臨床・生物統計の各分野それぞれ10件、合計30件の仮想シナリオを用意し、各シナリオについて、倫理、臨床、あるいは生物統計の観点から審議されるべき余地のある論点を提示した。これによりCRBの質向上と標準化が期待される。
結論
5つの研究において、「著しい負担を与える検査等について」はガイダンス、「適応外使用について」は事例集、「スポンサーの概念について」は実施上の参考資材、「利益相反管理について」は様式やガイダンス改定案、「CRB審査の質向上について」は教育研修用資料集を作成した。これらの成果により、臨床研究のさらなる適正化に向けた諸問題に対して、解決に向けた成果が得られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-08-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202406009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和6年6月に改正臨床研究法が公布され、臨床研究のさらなる適正化が求められる中、5つの調査研究を行い、諸問題の検討を行った。各研究においては臨床研究の実施および審査の専門家から幅広く意見を聴いて問題点を整理し、ガイダンスや事例集、資料集を作成した。これらにより臨床研究の適正化が推進されると共に、臨床研究を通じた医学、医療の発展に資することが期待される。
臨床的観点からの成果
「研究1:著しい負担を与える検査等」では具体的な事例と考え方を示したガイダンス、「研究2:適応外使用について」では特定臨床研究から除外される基準と事例を示した事例集、「研究3:スポンサーの概念」では概念導入に伴う研究体制と手順の資料集、「研究4:利益相反管理」では管理様式およびガイダンス改定案、「研究5:CRB審査の質向上について」では審査委員会研修のための資料集を作成した。これらによりさらなる臨床研究の適正化が図られる。
ガイドライン等の開発
研究1では「臨床研究法における研究対象者に著しい負担を与える検査等の該当性判断に関するガイダンス」、研究2では「適応外医薬品等の事例集」、研究3では「臨床研究法における統括管理者の導入と今後の体制に関する参考資料」、研究4では「利益相反管理様式改訂案、利益相反管理ガイダンス改定案」、研究5では「認定臨床研究審査委員会における審査の質向上を目指す教育研修のための資料集」を作成した。
その他行政的観点からの成果
令和6年6月に改正臨床研究法が公布され1年以内に施行される。これに伴い、著しい負担を与える検査等の事例、特定臨床研究から除外される医薬品等の事例、スポンサーの概念の導入に伴う実施体制と具体的な手順、同概念の導入に伴う利益相反管理基準等の見直し、CRBの質向上が喫緊の課題である。本研究は作成したガイダンス等を通じて改正臨床研究法の適正な施行に大きく貢献するものである。
その他のインパクト
日本臨床試験学会第16回学術集会総会シンポジウム7「どうなる?臨床研究法改正~改正法施行までにわたしたちが知っておきたいこと~」(2025年2月28日)において、研究代表者、分担者の3名が「著しい負担を与える検査等」「適応外医薬品等の判断基準」「スポンサー概念の導入」について研究班の成果を報告した。臨床研究関係者から大きな注目を集めたセッションとなり、改正臨床研究法の適正な施行に貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
佐藤典宏、布施望、沖田南都子 日本臨床試験学会第16回学術集会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-08-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202406009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,860,000円
(2)補助金確定額
11,455,000円
差引額 [(1)-(2)]
405,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 917,037円
人件費・謝金 4,656,761円
旅費 583,587円
その他 2,562,637円
間接経費 2,736,000円
合計 11,456,022円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-08-04
更新日
-