文献情報
文献番号
202406008A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療等安全性確保法におけるリスク分類の見直しに資する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2008
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 潔(一般社団法人日本再生医療学会 理事会)
研究分担者(所属機関)
- 寺井 崇二(新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野)
- 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター 成育こどもシンクタンク)
- 紀ノ岡 正博(大阪大学 大学院工学研究科生物工学専攻)
- 八代 嘉美(藤田医科大学 橋渡し研究支援人材統合教育・育成センター)
- 森尾 友宏(国立大学法人 東京科学大学 高等研究府免疫・分子医学研究室)
- 飛田 護邦(順天堂大学 革新的医療技術開発研究センター)
- 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 再生・細胞医療製品部)
- 渡部 正利喜(株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング 新規事業部)
- 松本 潤(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 再生医療製品等審査部)
- 森田 貴義(奈良県立医科大学 リウマチセンター)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,713,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、再生医療等製品の適応外使用の可能性および安全性、リスク分類の見直しについて、特に同種死体膵島移植、間葉系幹細胞、EVs/培養上清に関する課題を整理するとともに、再生医療等提供計画および定期報告書の様式改定について検討することを目的にした。
研究方法
安確法におけるリスク分類の考え方について、適用除外やリスク分類の変更に必要な基準を判断するに当たり、必要な情報の整理、情報収集の手段、制度の見直し等について検討し、とりまとめを行った。
結果と考察
◆再生医療等製品の適応外使用
CAR-T療法、デリタクト®注、テムセル®HS注の適応外使用は現時点でほとんど確認されていないが、将来的には適応外使用の可能性がある。再生医療等製品には特有のリスクがあるため、安確法の適用除外には慎重な判断が求められる。現時点で適用除外が妥当な技術はないが、今後の研究進展に応じた検討が必要である。
◆リスク分類の見直し
1.同種死体膵島移植
第1種再生医療等として治療が行われ、安全性・有効性の知見が蓄積されている。リスク分類の見直しを急ぐ意見は少ないが、膵島移植の投与プロトコールを規格化し、審査手続きの簡略化など安確法上の対応について議論継続が必要である。
2.間葉系幹細胞(MSC)
MSCに関する重大な安全性の懸念は現時点で少ないが、全身投与時の血栓リスクには注意が必要である。有効性や安全性は由来組織や製造工程、投与方法などの違いにより異なる可能性があり、特に製造・品質管理の基準整備が重要との意見が多い。リスク分類の見直しは慎重に行い、当面は症例を蓄積しつつ安確法の適応のあり方 を見極める必要がある。
3.細胞外小胞(EVs)/培養上清
EVsの研究・製造法・品質管理が進展する一方で、自由診療での敗血症報告や、iPS細胞由来EVsの安全性に関する知見の不足が指摘されている。EVsや培養上清は細胞加工物と同等のリスクを有し、成分内容に基づく評価が適切との意見や、製造工程が安全性に影響を与える点も指摘され、製造管理体制の整備が求められる。安確法を含めた規制適用の議論が必要である。
4.新規技術:オルガノイド
オルガノイドは移植医療、診断、薬剤評価などに応用が進み、他分野技術との融合で発展が期待される一方、安全性リスクとして嚢胞形成やオフターゲット組織形成が懸念され、ヒトへの投与はこれまで膵島、消化管上皮、網膜の3種のオルガノイドのみである 。臨床応用をする上では製造上の課題と規格上の課題を有し、重症疾患ではリスクの捉え方が異なるほか、移植後の機能統制への影響も課題である。自家組織由来オルガノイドは第2種に分類されており、安全性や製造、保存方法についての継続的な検討が必要である。
5.新規技術:ゲノム編集
CRISPR/Cas9によるβサラセミアなどの治療が2023年にFDA承認され、他疾患への応用も進行中。安全性面ではオフターゲット変異や発癌リスクが懸念され、長期観察が求められている。Cas3やプライム編集など新技術も登場し、低リスクでの臨床応用が期待される。生殖細胞や胚への影響、機能強化目的での使用可否も議論中である。安確法改正により第1種再生医療等に分類され、安全性評価と知見蓄積が必要である一方、希少疾患患者への治療展開も期待される。
◆再生医療に関する諸外国の規制動向
韓国・台湾では本法を活用しつつ、より厳格な管理制度が整備されている。台湾では全国細胞治療技術登録プラットフォームを企業団体が運営し、日本でも導入が有益との意見がある。なお、EVs医療に関する明記は確認できなかった。両国では自由診療が禁止されていたが、法改正により臨床研究実施と医療データ登録を前提に自由診療の可能性が示されており、本法との違いが注目される。
◆再生医療等提供計画・定期報告書改定
提供計画・定期報告書への科学的妥当性評価(有効性の見込み含む)追加に対し、研究班内で大きな異論はなかった。評価項目の具体化については今後の検討課題とされ、提供者の専門資格等を記載させるべきとの意見もあった。
CAR-T療法、デリタクト®注、テムセル®HS注の適応外使用は現時点でほとんど確認されていないが、将来的には適応外使用の可能性がある。再生医療等製品には特有のリスクがあるため、安確法の適用除外には慎重な判断が求められる。現時点で適用除外が妥当な技術はないが、今後の研究進展に応じた検討が必要である。
◆リスク分類の見直し
1.同種死体膵島移植
第1種再生医療等として治療が行われ、安全性・有効性の知見が蓄積されている。リスク分類の見直しを急ぐ意見は少ないが、膵島移植の投与プロトコールを規格化し、審査手続きの簡略化など安確法上の対応について議論継続が必要である。
2.間葉系幹細胞(MSC)
MSCに関する重大な安全性の懸念は現時点で少ないが、全身投与時の血栓リスクには注意が必要である。有効性や安全性は由来組織や製造工程、投与方法などの違いにより異なる可能性があり、特に製造・品質管理の基準整備が重要との意見が多い。リスク分類の見直しは慎重に行い、当面は症例を蓄積しつつ安確法の適応のあり方 を見極める必要がある。
3.細胞外小胞(EVs)/培養上清
EVsの研究・製造法・品質管理が進展する一方で、自由診療での敗血症報告や、iPS細胞由来EVsの安全性に関する知見の不足が指摘されている。EVsや培養上清は細胞加工物と同等のリスクを有し、成分内容に基づく評価が適切との意見や、製造工程が安全性に影響を与える点も指摘され、製造管理体制の整備が求められる。安確法を含めた規制適用の議論が必要である。
4.新規技術:オルガノイド
オルガノイドは移植医療、診断、薬剤評価などに応用が進み、他分野技術との融合で発展が期待される一方、安全性リスクとして嚢胞形成やオフターゲット組織形成が懸念され、ヒトへの投与はこれまで膵島、消化管上皮、網膜の3種のオルガノイドのみである 。臨床応用をする上では製造上の課題と規格上の課題を有し、重症疾患ではリスクの捉え方が異なるほか、移植後の機能統制への影響も課題である。自家組織由来オルガノイドは第2種に分類されており、安全性や製造、保存方法についての継続的な検討が必要である。
5.新規技術:ゲノム編集
CRISPR/Cas9によるβサラセミアなどの治療が2023年にFDA承認され、他疾患への応用も進行中。安全性面ではオフターゲット変異や発癌リスクが懸念され、長期観察が求められている。Cas3やプライム編集など新技術も登場し、低リスクでの臨床応用が期待される。生殖細胞や胚への影響、機能強化目的での使用可否も議論中である。安確法改正により第1種再生医療等に分類され、安全性評価と知見蓄積が必要である一方、希少疾患患者への治療展開も期待される。
◆再生医療に関する諸外国の規制動向
韓国・台湾では本法を活用しつつ、より厳格な管理制度が整備されている。台湾では全国細胞治療技術登録プラットフォームを企業団体が運営し、日本でも導入が有益との意見がある。なお、EVs医療に関する明記は確認できなかった。両国では自由診療が禁止されていたが、法改正により臨床研究実施と医療データ登録を前提に自由診療の可能性が示されており、本法との違いが注目される。
◆再生医療等提供計画・定期報告書改定
提供計画・定期報告書への科学的妥当性評価(有効性の見込み含む)追加に対し、研究班内で大きな異論はなかった。評価項目の具体化については今後の検討課題とされ、提供者の専門資格等を記載させるべきとの意見もあった。
結論
再生医療等製品の適応外使用は、現時点で実例は少ないが、将来的な適用拡大が見込まれるため、引き続き慎重な検討が必要とされた。リスク分類の見直しについては、現時点での変更は行わず、引き続き症例の蓄積と議論の継続が必要とされた。EVsや培養上清等の新技術については、安全性確保のための品質管理や制度整備の必要性が指摘された。海外制度も参考に、本邦制度の改善が検討されるべきとの意見があった。また、再生医療提供計画・定期報告書の改定案については大きな異論はなく、提供者の資格情報の明記等、具体的な記載の検討が求められた。
公開日・更新日
公開日
2025-08-04
更新日
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