院内血液製剤の適正な製造体制・順守基準に関する研究

文献情報

文献番号
200940028A
報告書区分
総括
研究課題名
院内血液製剤の適正な製造体制・順守基準に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(公立大学法人 福島県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 半田 誠(慶應義塾大学 医学部)
  • 前川 平(京都大学 医学部)
  • 脇本信博(帝京大学 医学部)
  • 面川進(秋田県赤十字血液センター)
  • 田野崎隆二(国立がんセンター中央病院)
  • 室井一男(自治医科大学 医学部)
  • 長村(井上)登紀子(東京大学 医科学研究所)
  • 下平滋隆(信州大学 医学部)
  • 米村雄士(熊本大学 医学部)
  • 東 寛(北海道赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療施設では、数多くの血液製剤が製造・使用されているが、薬事法の規制外のため、安全性や品質は医療機関の自主管理に任されている。広く利用されている輸血製剤(自己血、造血幹細胞、洗浄血小板)について、学会と連携を保ちながら、実用に供する基本指針を作成する。
研究方法
1. 造血幹細胞品質管理手順書、2.洗浄・置換血小板の適応およびその調整の指針、3.貯血式自己血輸血実施基準書の作成
 欧米の状況と対比しながら、総合調査によって明らかになった実態をふまえて、1)リスクレベルに対応した院内血液製剤の細胞製剤としての位置づけを明確化した。また、2)一般に普及している自己血、洗浄血小板と造血幹細胞に関して、統一基準の必要性について、広く意見を聴取し、基準書に反映させた。3)洗浄血小板手順書、院内製造造血細胞処理手準書、院内採血自己血手順書策定を進めた。
結果と考察
1. 造血幹細胞品質管理手順書
 骨髄液の採取と処理、末梢血造血細胞の採取、処理、凍結、保存管理に関して、ガイドライン(GL)作成作業チームを結成し、国際基準などを参考として指針を作成した。
2. 洗浄血小板製剤基準
作成した「洗浄・置換血小板の適応およびその調製の指針、および洗浄血小板調製のためのプロセシング基準に関するGL は輸血・細胞治療学会HPに公開されている。
閉鎖系での調製が可能な置換液M-solは長期保管しても品質が安定していた。洗浄置換血小板と置換血小板の回収率と輸血後24時間の補正血小板増加は、良好であった。有害事象はなかった。医療機関と血液センターとの技術連携による置換血小板の院内調製の標準化、その普及は副作用の防止策として輸血の安全性に大きく貢献できる。
3.自己血の院内手順書の作成・評価
学会認定・自己血輸血看護師を通じて、貯血式自己血輸血実施基準書(案)のアンケート調査から教育訓練を受けた自己血看護師が居る施設であっても最低基準が遵守されていないことが判明し、実施基準を改定した。
結論
欧米では当該細胞に関する採取・処理・保存に関してはすでにGLがあるだけでなく、各施設の監査・認定が行われ、基準が遵守される体制が確立している。我が国ではGL策定が行われた段階に過ぎないので、今後はこれが実効性を持つように監査・認定の体制などを段階的に構築していく必要がある。また、細胞数や幹細胞数測定法など検査法の統一化、細胞処理・管理法の統一化を図ることも必要になるであろう。

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200940028B
報告書区分
総合
研究課題名
院内血液製剤の適正な製造体制・順守基準に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(公立大学法人 福島県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 半田 誠(慶應義塾大学 医学部)
  • 前川 平(京都大学 医学部)
  • 脇本信博(帝京大学 医学部)
  • 面川 進(秋田県赤十字血液センター)
  • 田野崎隆二(国立がんセンター 中央病院)
  • 室井一男(自治医科大学 医学部)
  • 長村登紀子(東京大学 医科学研究所)
  • 下平滋隆(信州大学 医学部)
  • 米村雄士(熊本大学 医学部)
  • 東 寛(北海道赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療施設では、数多くの血液製剤が製造・使用されているが、薬事法の規制外のため、安全性や品質保証は自主管理に任されている。広く利用されている輸血製剤(自己血液、造血幹細胞製剤、洗浄血小板)について、関連学会と連携を保ちながら、実用に供する基本指針案を作成する。
研究方法
造血幹細胞品質管理手順書、洗浄血小板調整基準、自己血の院内手順書
欧米の状況と対比しながら、実態をふまえて、1)院内血液製剤の細胞製剤としての位置づけを明確化した。また、2)一般に普及している自己血液、洗浄・置換血小板と造血幹細胞製剤に関して、広く意見を聴取し、基準・手順書に反映されるように努めた。最終的に3つの基準と手順書を策定した。さらに洗浄血小板調整基準と造血幹細胞品質管理手順書は英訳を行い、ひろく海外へも情報を伝え、世界標準との整合性を調整している。
結果と考察
自己血の院内手順書の作成・評価
貯血式自己血輸血実施基準書(案)の調査を実施した。教育訓練を受けた看護師が居る施設であっても基準が遵守されておらず、実施基準を改定する必要があった。また、採血バッグ、採血後の処置についても実施基準を改定する作業の継続が求められる。同時に、適正な自己血を実施普及させる面から自己血輸血管理料などによる誘導政策も導入すべきであろう。
造血幹細胞品質管理手順書
院内採血造血細胞製剤の安全性向上と品質確保を目指し、基準を策定した。骨髄液の採取と処理、末梢血造血細胞の採取、処理、凍結、保存管理に関して、細胞処理に関する作業チームを結成し、国際基準などを参考として、「造血幹細胞品質管理手順書」を作成した。
洗浄血小板製剤基準
血小板輸血による非溶血性副作用を防止するため、洗浄・置換血小板の適応およびその調製の指針、および洗浄血小板調製のための作業基準に関するガイドライン としてまとめた。血漿除去によって、副作用防止に効果があることが示された。置換血小板の血小板回収率と輸血後24時間のCCIは、良好である。輸血後の副作用や有害事象はなかった。ガイドラインに準拠した置換血小板は製品標準に適合する品質であること確認した。置換血小板の院内調製の標準化、その普及は非溶血性副作用の防止策として輸血の安全性の向上に貢献できる。
結論
2年間の研究期間で、自己血の院内手順書、洗浄血小板調整基準書、造血幹細胞品質管理手順書が策定され、進歩がもたらされた。とくに、造血幹細胞品質管理手順書は長年待たれていて、この成果をもって世界基準にようやく追いついた。3つの手順書は関係する学会と定期的な更新作業を継続することで、安全で効果的な輸血細胞治療がもたらされるであろう。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高度な医療を行う施設では、造血幹細胞の採取・処理・保存がなされ、また洗浄血小板数を必要とする患者も珍しくない。加えて、多くの市中病院では多くの自己血(全血、成分血)が製造・使用されている。それらの安全性や品質の保証は医療機関の自主管理において実行され、安全性に関して危惧が存在する。3つの血液製剤(自己血液、造血幹細胞、洗浄血小板)について、医療機関で実用に供する基本指針案(施設基準、品質管理の最低要件等)を作成した。また造血幹細胞品質管理手順書については海外からの評価も予定している。
臨床的観点からの成果
1.自己血の院内手順書の作成・評価
実施基準を改定して、採血バッグ、採血後の処置についても実情に即して実施基準を引き続き改定する作業の継続によって、適正な自己血輸血を実施普及するのに、役立つであろう。
2. 造血幹細胞品質管理手順書
 医療機関の自主規制に資する最低基準として、院内採血造血細胞製剤の安全性向上と品質確保に有効に作用するであろう。
3. 洗浄血小板製剤基準
輸血後の副作用や有害事象はなく、血小板輸血によって発生する非溶血性副作用の防止に有効である。


ガイドライン等の開発
広く利用されている3つの血液製剤(自己血液、造血幹細胞、洗浄血小板)について、医療機関で実用に供する基本指針案(施設基準、品質管理の最低要件等)を作成した。造血幹細胞品質管理手順書、洗浄血小板調整基準、自己血の院内手順書である。
その他行政的観点からの成果
今後に関して我が国ではガイドライン策定が行われた段階に過ぎないので、今後はこれが実効性を持つように監査・認定の体制などを段階的に構築していく必要がある。また、細胞数や幹細胞数測定法など検査法の統一化、細胞処理・管理法の統一化を図ることも必要になるであろう。
その他のインパクト
第58回日本輸血・細胞治療学会総会(2010年)にて、教育講演(細胞採取・管理のガイドライン)。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-