新型インフルエンザワクチンの性状及び免疫原性の正確、かつ迅速な評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
200940027A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザワクチンの性状及び免疫原性の正確、かつ迅速な評価方法に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 明子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 道之(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 矢野 茂生(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国で開発、備蓄している新型インフルエンザワクチン(H5N1)は、ウイルス塩基配列上の強毒性に関与する遺伝子の一部を遺伝子工学で改変したワクチン株を、ホルムアルデヒドにより不活化し、アルミニウムアジュバントを加えた製品である。現在用いられているHAワクチンと異なるこの製剤の品質管理には、その粒子性やウイルス核酸の状態、アジュバントを含む多様な成分により惹起される免疫誘導能の正確な評価などについての、新しい手法が必要になる。本研究では、3つの異なる測定法が、ワクチンの品質管理手法として適用可能であるかどうかを検討した。
研究方法
2008年度HAワクチン株3種類を増殖、精製した後、それぞれホルムアルデヒドで不活化したもの(全粒子型ワクチン)、及び購入した市販(4社)のHAワクチンを解析に用いた。粒子形状の測定には、動的光散乱装置を用いた。 不活化ワクチンからの核酸分離の前処理として、たんぱく質分解酵素による処理を行ったことを除けば、核酸の定量、塩基配列の決定、細胞にワクチン等を添加した後のサイトカインの測定等は、常法に従った。
結果と考察
動的光散乱測定装置による粒度分布の計測を行ったところ、インフルエンザウイルスを不活化した検体(全粒子型ワクチン)のみならず、市販HAワクチンについても凝集体などの粒子径の情報を得ることができた。また、不活化ワクチンからも核酸の分離が可能であり、その定量と塩基配列の解析などを行ったところ、市販のHAワクチン中の核酸の量や性状には、製造所間で著しい差があることがわかった。培養細胞を用いてワクチンの免疫誘導能力を定量できる系を構築したが、やはりワクチン間に差があることがわかった。
結論
 1) 動的光散乱測定装置による粒度分布の計測、2) ワクチンからの核酸の分離、及び定量、3)培養細胞を用いてのワクチンの免疫誘導能力評価、これら3つの方法を、 現在市販されているHAワクチン等に適用して得られた結果は、相互によく関連していた。すなわち、粒子形状が保たれている製品は、核酸の分離も容易で塩基配列もウイルス本来のものに近く、また、インフルンザ感染関連遺伝子の発現が惹起されやすい傾向があった。測定を経時的に行うことにより、ワクチン中ウイルスの不活化の程度などを定量的に評価でき、品質管理に応用可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200940027B
報告書区分
総合
研究課題名
新型インフルエンザワクチンの性状及び免疫原性の正確、かつ迅速な評価方法に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 明子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 道之(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 矢野 茂生(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国で開発、備蓄している新型インフルエンザワクチン(H5N1)はウイルス塩基配列のうち、強毒性に関与する遺伝子の一部を改変したワクチン株を、ホルムアルデヒドにより不活化し、アルミニウムアジュバントを加えた製品である。HAワクチンと異なるこの製剤の品質管理には、その粒子性やウイルス核酸の状態、アジュバントを含む多様な成分による作用の解析、などを定量し、評価できる新しい手法が必要であると考えられる。本研究では、3種類の新しい品質管理手法を検討し、実際のワクチンに適用可能か、等を検討した。
研究方法
2008年度HAワクチン株3種類を増殖、精製した後、それぞれホルムアルデヒドで不活化したもの(全粒子型ワクチン)、及び購入した市販(4社)のHAワクチンを解析に用いた。粒子形状の測定には、動的光散乱装置を用いた。 不活化ワクチンからの核酸分離の前処理として、たんぱく質分解酵素による処理を行ったが、核酸の定量、塩基配列の決定、細胞にワクチン等を添加した後のサイトカインの測定等は、常法に従った。
結果と考察
動的光散乱測定装置による粒度分布の計測を行ったところ、不活化ウイルスも無処理のウイルスも、ウイルス本来の粒子径付近にシグナルを認め、ワクチン中の粒子の測定が可能であった。市販HAワクチン(エーテル処理によりウイルス粒子の形状は失っている)についても本装置による計測で比較的容易に凝集物の粒子径等の情報を得ることができた。 またワクチンからの核酸の分離、及び定量と塩基配列の解析などを行ったところ、製造所間で差はあるが、PCR増幅後の同定、定量が可能であった。すなわち、目的のワクチン株が正確に複製されているかどうかを不活化後でも検証できることがわかった。人由来細胞株を用いてワクチンの免疫誘導能力を評価できる系を構築し、サイトカイン等を含めた測定を経時的に行うことにより、ワクチン中ウイルスの不活化の程度や免疫誘導能を定量できることがわかった。
結論
1) 動的光散乱測定装置による粒度分布の計測、2) ワクチンからの核酸の分離、及び定量、3)培養細胞を用いてのワクチンの免疫誘導能力評価、これら3つの方法の基礎的検討を行うとともに、実際のワクチンの品質管理に適用可能かどうかを調べた。ワクチン中ウイルスの不活化の程度などを定量的に評価でき、実際の品質管理に適用可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国で開発、備蓄している新型インフルエンザワクチン(H5N1)は、現在流通しているHAワクチンと異なり、ウイルスの粒子形状を維持した全粒子型である。この製剤における新規の品質管理手法の開発及び、評価を行い、実際のワクチンに適用できる、という結果を得た。実際に試行した方法は、動的光散乱測定装置を用いた粒度分布測定、ホルムアルデヒドで不活化されたワクチンからの核酸の分離と定量、細胞を用いた免疫賦活化能の定量、の3種類である。
臨床的観点からの成果
全粒子型ワクチンを用いて上記の3つの方法の基礎的検討を行うとともに、4社の市販 HAワクチン(エーテル処理によりウイルス粒子の形状は失っている)についても検討を行ったところ、たんぱく質凝集体の粒子径の差や、ワクチン中の核酸含量の差など製造所間で大きな差があることがわかり、臨床の場での効果の評価とあわせて、ワクチンの有効性に関して調査する際の基礎データが得られた。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-