看護職員の需給推計の妥当性と推計シナリオの検討

文献情報

文献番号
202406003A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職員の需給推計の妥当性と推計シナリオの検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小林 美亜(山梨大学大学院総合研究部医学域 臨床医学系(附属病院 病院経営管理部))
研究分担者(所属機関)
  • 小野 恵子(青森県立保健大学 健康科学部 看護学科)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,688,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、看護職員の需給推計の現状と、今後の需給推計モデルのあり方および課題を明らかにすることを目的とした。具体的には、次に示す4つの観点から調査・分析を行った。第1に、第8次医療計画における看護職員の需給推計に関して、全国の都道府県の実施状況と、実施自治体における推計手法および今後の推計に向けた課題を把握すること。第2に、推計を既に実施した4県へのヒアリング調査を通じて、推計方法や「中間とりまとめ」との乖離要因、課題等を抽出すること。第3に、中間とりまとめの供給推計と実際の看護就業者数との比較により、推計の妥当性を検証すること。第4に、常勤換算数と実人員数の乖離を補正する「補正係数」の分析を通じて、将来的な推計モデルにおいて考慮すべき因子を明らかにすること。
研究方法
 本研究は、以下の4つの方法により実施した。
1. 全国調査
 全国47都道府県を対象に、第8次医療計画における看護職員需給推計の実施状況(実施の有無・実施予定)、実施した場合の推計手法、使用データ、今後の推計において考慮すべき需要・供給要因、今後の推計に対する意見や要望等について、Excel形式の調査票の配布・回収をメールを通じて行い、アンケート調査を実施した。調査期間は令和6年6月5日から6月28日とした。
2.ヒアリング調査
 第8次医療計画に基づいて需給推計を実施済みの自治体のうち、データ提供および協力が得られた4県を対象に、推計手法、推計の前提条件、推計に活用したデータ、中間とりまとめの結果との乖離状況、推計結果の活用状況、技術支援の要望、今後の改善点について、半構造化インタビューを通じて詳細に聴取した。ヒアリングは2024年11月1日~26日の間にオンラインや対面で実施した。
3.供給推計の妥当性検証
 看護課調べの最新データ(2020年)と、国の「中間とりまとめ」による供給推計値を比較し、都道府県別に誤差率を算出した。2014年の実績値と2025年の推計値から、2020年値を線形補間により推定し、実測値との乖離を定量的に評価した。
4.補正係数の分析
 看護職員の常勤換算数と実人員数の乖離を定量的に評価するため、公益社団法人日本看護協会の労働と看護の質向上のためのデータベース(DiNQL)に集積されたデータを同意を得て活用し、短時間勤務者の割合、有給休暇取得率、夜勤負担軽減策の導入や院内保育の有無等により、補正係数(実人員数÷常勤換算数)が異なるかどうかを比較した。さらに、補正係数に影響を与える要因を重回帰分析で特定を試みた。


結果と考察
1.全国調査の結果
 調査により、2024年3月末時点で需給推計を完了した自治体は全体の15.0%(6自治体)、今後実施予定とした自治体も15.0%であった。一方、未定が55.0%、実施予定なしが2.5%となり、全体として推計体制が未整備な状況が明らかとなった。自由記述では、国による手法の明確化、在宅領域を含む需給把握、領域別推計の必要性などが指摘された。
2. ヒアリング調査の結果
 4県では、「中間とりまとめ」を参考にしつつ、地域医療構想や病床必要量に即した独自の補正・係数を用いた推計が行われていた。訪問看護・在宅医療への対応は共通課題とされ、今後これらに即した推計モデルの構築が求められている。また、短時間勤務や夜勤軽減策の導入など労働環境の変化を踏まえた推計の必要性が強調され、複数シナリオに対応可能な柔軟なモデル構築への要望も確認された。
3. 供給推計の妥当性検証
 2020年の国推計と実績値の比較では、全国平均の誤差率は-3.83%、47都道府県中46道府県で±10%以内に収まり、±5%以内の県も多数あった。唯一、誤差が大きかった栃木県では、モデルに反映されない地域特性があった可能性が示唆された。
4.補正係数に関する分析
 短時間勤務者の割合が高いほど補正係数(実人員数/常勤換算数)が高くなる傾向が確認され、その割合が20%以上の施設では1.14を示した。夜勤軽減策の実施および院内保育所の設置は、いずれも補正係数に対して正の有意な影響を及ぼしていた。
結論
 本研究では、全国調査・ヒアリング調査・妥当性検証・補正係数分析という4つの方法を通じて、看護職員需給推計の現状と課題を明らかにした。現行の供給推計手法には一定の妥当性が認められるが、地域の実態や人口動態の変化を的確に反映する必要がある。また、需要推計においては、働き方の多様化や在宅医療の進展を踏まえた柔軟なモデル構築が求められる。加えて、適切な実人員数を反映するための補正係数の活用と、需給推計モデルの標準化、自治体への技術的支援体制の強化が今後の課題である。これらの取り組みを通じて、看護職員需給推計の精度と実効性を高め、持続可能な医療提供体制の構築に資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-02-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202406003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 研究成果
 全国調査、ヒアリング、妥当性検証、補正係数分析を通じて、看護職員需給推計の現状と課題を多角的に明らかにした。短時間勤務や夜勤軽減策など就労実態を反映する補正係数の必要性を示し、実人員ベースでの柔軟な推計モデルの必要性を提示した。
(2) 研究成果の意義
 本研究は、常勤換算に依拠するモデルの限界を示し、定量的根拠に基づく新たな推計手法の方向性を提示した。自治体の推計体制整備や標準化支援の根拠となるとともに、人口減少・高齢化社会における政策的・国際的応用が期待される。
臨床的観点からの成果
(1) 研究成果
 看護職員需給推計の全国的実態と課題を明らかにし、短時間勤務や夜勤軽減など臨床現場の勤務実態を反映した補正係数の必要性を定量的に示した。実態に即した人員配置の推計を提言する基盤を提供した。
(2) 研究成果の意義
 学術的に、看護職の補正推計の必要性と妥当性を示し、質の高いケア体制構築に貢献した。適正配置による離職防止とケアの質・安全性向上に寄与し、臨床現場の持続可能性を支えるための基礎資料とすることができる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
 本研究により、看護職員需給推計の全国的未整備と、自治体間の推計基盤の格差が明らかとなった。地域特性や就労実態を反映した推計モデルの必要性を示すとともに、既存推計の妥当性と限界を実証的に検証した。さらに、実人員ベースの補正係数の必要性を定量的に示し、国による手法の標準化と自治体への技術支援体制の整備が急務であることを提言した。
その他のインパクト
当該研究結果は、国内外の医療政策・看護管理などの関連雑誌に論文投稿する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-02-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202406003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,494,000円
(2)補助金確定額
3,494,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 85,360円
人件費・謝金 0円
旅費 396,970円
その他 2,205,670円
間接経費 806,000円
合計 3,494,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2026-02-04
更新日
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