三大感染症等に関連する保健システム強化について我が国から行う国際機関への戦略的・効果的な関与に資する研究

文献情報

文献番号
202405007A
報告書区分
総括
研究課題名
三大感染症等に関連する保健システム強化について我が国から行う国際機関への戦略的・効果的な関与に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24BA2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
駒田 謙一(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、グローバルファンド(GF)等の国際機関・団体に対する、日本の戦略的・効果的な関わり方について研究する。GF等の国際機関の戦略や活動内容について分析し、これらの機関のガバナンス会合等における日本政府の対応について提言を行う。日本政府を通した戦略的・効果的なインプットを通して、「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成するため必要な、三大感染症(エイズ、結核、マラリア)を含む感染症対策や、健康危機への備えと対応を含む保健システムの強化に世界的に貢献する。
研究方法
年2回開催されるGF理事会へ日本理事区のメンバーとして参加し、事前にGF理事会の事務局文書を分析し、日本政府が理事会等で発信すべき内容について提言を行う。特に、今後想定される資金難もふまえて事業継続性を強化するためにGFが実施した、関連する各種規則の改訂に関して、各改訂案を分析し、現状の問題点や改訂ポイント、今後の課題や理事会で発信すべき点について、日本政府に提言を行う。また、ザンビアのチョングエ郡およびムンブワ郡にて、郡保健局関係者への聞き取り調査や保健センターにおける現状調査を行い、グローバルファンドを活用した活動を含め、ザンビアにおけるHIV対策の現状の問題点や今後の課題について分析する。
結果と考察
2024年4月にジュネーブ(スイス)で開催された第51回グローバルファンド理事会、2024年11月にリロングエ(マラウイ)で開催された第52回同理事会に、日本理事区のメンバーとして参加した。各理事会の参加前には事務局文書の内容を分析し、日本政府が理事会等で発信すべき内容について提言を行った。
 第51回理事会では、プログラムの継続性を強化するためにも関連ポリシーの改訂を求めることや、効率的な資金活用のためにも触媒投資における保健システム強化への重点配分を求めることなどを中心に、理事会で発信すべき内容について日本理事区へ提案した。
 第52回理事会では、予定されている各種ポリシーの改訂は小幅で現場への影響を比較的おさえられると考えられるが、一方で予算が大きく不足した場合には低所得国を保護しきれない可能性があること、翌年の増資結果によっては更なる改訂が必要であり、その際に課題となりそうなポイントについて、日本理事区に提言した。
 保健システム強化への投資について、3つの感染症とは別の単独コンポネントを作成することは、資金状況も逼迫しつつある現段階ではコンポネント間のバランス調整がさらに難しくなり、デメリットが大きいと考えられる。一方で、これまで以上に継続性強化につながるような投資を優先するべき状況であり、直接的なサービス提供を支援するものでなくとも、人材、データの質、検査などの強化を通して、HIV、結核、マラリア対策を含め幅広い保健政策に貢献することが期待される。市場形成や人権排除などの国別配分では取り組みにくい横断的な活動とともに触媒投資(Catalytic Investment:CI)との相性がよいと考えられ、次期資金サイクルにおいても本投資の意義はとても大きいと考えられる。現状のシナリオでは、配分可能額が12.26 billion USD以上になった場合を最低ラインとして、そこから上乗せされた場合のシナリオが用意されているが、配分可能額がこれより少なくなった場合でも、CIの中でも非常に高い効果が期待できるものについては、最低限の額を確保するべきと考えられる。
 ザンビアでは、米国からの援助停止により、多くの活動が停止していた。例えば、州や郡レベルで雇用されていた情報管理官が雇止めになっており、M&E体制への影響が危惧された。他にも、米国の支援で活動していたNGOが支えていた検体搬送のクーリエサービスが停止するなど、治療サービスへの影響も出始めており、これらの肩代わりをGFに求められる可能性も考えられ、これまで以上に各国での限られた資金の投入先としての優先付けが重要になることが予想された。
結論
世界情勢の影響でGFをめぐる資金状況が今後大きく変わる可能性があり、現場への影響を適切に見極めて対応する必要がある。2025年にはGFに加えて、GAVIやPandemic fundでも増資が計画されており、世界的な経済状況を反映していずれも期待されるような成果を上げられない可能性がある。現場・患者への影響とリソースの有効活用とのバランスがこれまで以上に必要となり、日本理事区からも効果的な技術的なインプットを行うことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202405007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,250,000円
(2)補助金確定額
3,219,000円
差引額 [(1)-(2)]
31,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 79,790円
人件費・謝金 168,372円
旅費 2,080,400円
その他 140,691円
間接経費 750,000円
合計 3,219,253円

備考

備考
支出合計額が3,219,253円であることに対して、補助金確定額が3,219,000円(補助金交付額が3250000円に対して、還額が31,000円)であることは、返還額が1000円単位となるため、253円については研究者・研究機関の負担となることによるものである。なお、返還額(未支出額)は交付額全体の1%未満であり、未支出額があることで研究の進捗への影響はなかった。

公開日・更新日

公開日
2025-11-05
更新日
-