ナノ物質等を配合した化粧品及び医薬品部外品の安全性及び品質確保に係わる試験法に関する研究

文献情報

文献番号
200940024A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ物質等を配合した化粧品及び医薬品部外品の安全性及び品質確保に係わる試験法に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉林 堅次(城西大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノ物質が配合された化粧品及び医薬部外品の品質及び安全性を確保するためには、配合されるナノ物質のサイズに対応した評価をすることが重要である。化粧品や医薬部外品の主たる使用法は皮膚への塗布であり、これに使用されるナノ物質については経皮暴露による影響を評価する必要がある。ナノ物質の皮膚吸収性、吸収された場合の皮膚機能に与える影響を調べ、こうしたナノ物質を含む製品に対してどのような試験法や判定指標を用いるのが適切なのかを明らかにする。
研究方法
酸化チタンナノ粒子の各種媒体や分散法による粒子分布の違いについて解析した。マイクロウェーブ分解-ICP-MSによる生体中酸化チタンの微量定量法を開発し、チタンの定量限界を明らかにした。三次元培養ヒト皮膚モデルを用いて酸化チタンの皮膚透過速度を求めた。各結晶形の酸化チタンについて各種細胞に対する細胞毒性試験をMTTの取り込み及びATP量を指標として判定した。モルモットを用いた酸化チタンの皮膚感作性試験を行った。抗原提示細胞からのサイトカイン産生が酸化チタンによって影響を受けるかどうか検討した。
結果と考察
ビーズミル法を用いると、酸化チタンナノ粒子をナノサイズで分散させることができた。組織中の酸化チタンは、マイクロウェーブ分解時に硝酸-フッ化水素酸混液を用いることで定量的にチタンとして分析できた。健常皮膚では分子径が大きいものほど透過係数が低いことから、ナノ粒子が皮膚を透過する可能性はほとんどないことが示唆された。酸化チタンをラットに皮内投与しても、各臓器で定量限界値を超えるようなチタンは検出できなかった。大量の酸化チタンが角質層を通過したとしても体内移行する量は検出限界以下であった。酸化チタンはアナターゼ型の方が細胞毒性強度は強かった。モルモット感作性試験において、ルチル型の無処理微粒子酸化チタンで感作性は見られなかった。皮膚感作性物質によって抗原提示細胞から誘導されるサイトカイン量は、酸化チタンの添加によって変化しなかった。
結論
製品の中で酸化チタン粒子は凝集しナノサイズで存在することはほとんどなかった。酸化チタンナノ粒子が健常皮膚を透過する知見は理論的かつ分析学的に認められなかった。皮内投与した酸化チタンも同様に検出できるレベルで体内分布することはなかった。健常皮膚での表皮や真皮への移行の可能性は低いと考えられた。酸化チタンの結晶形によって細胞毒性強度に違いが認められた。酸化チタンの皮膚感作性及びアレルギー増強作用は認めなかった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-