人を対象とする生命科学・医学系研究における患者・市民参画の推進方策に関する研究

文献情報

文献番号
202404001A
報告書区分
総括
研究課題名
人を対象とする生命科学・医学系研究における患者・市民参画の推進方策に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AD1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中田 はる佳(神奈川県立保健福祉大学)
  • 東島 仁(千葉大学 国際学術研究院)
  • 高島 響子(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、諸外国での研究への患者・市民参画推進戦略を精査するとともに、国内の患者・市民参画事例を集約し、我が国に適した推進戦略と留意点を明らかにすることである。
研究方法
1.患者・市民参画推進戦略の調査: R5年度分担研究報告書に記載した収集資料を軸に、当該報告書以降に改定もしくは新規に作成された資料内容の分析を進めた。また、人を対象とする研究に関する国際的な倫理的枠組みにおける患者・市民参画の記載について整理した。さらに、韓国に関する戦略の調査を追加して実施した。
2.ゲノム医療研究等に関連した患者・市民参画活動のレビュー: R5年度の調査で得られた国内の患者・市民参画活動事例の中から条件に合う活動を抽出し、公開情報を元に、より詳細な活動内容を収集した。
3.患者・市民参画活動経験者への調査:国内で患者・市民参画活動を経験した患者・市民、研究者、仲介者へのインタビュー調査を実施した。対象は、国内で患者・市民参画活動を実施した経験がある研究事業の関係者で、研究者、仲介者(患者・市民参画を実施したい研究者と協力者を支援する役割を果たす。患者・市民参画活動計画の策定、協力者の採用・研修の提供、双方のニーズ確認や円滑な意思疎通を支援する)、協力者(患者・市民)とした。インタビューは、研究分担者と研究協力者の2~3名で行い、音声はインタビュアーが録音し、動画撮影は外部業者に委託した。
4.患者・市民参画活動に関する研究会の開催:R6年度は、米国からGenetic Allianceのシャロン・テリー氏を招へいし、オンラインでの講演会を開催したほか、講演や市民公開講座等の機会に聴衆からヒアリングを行った。
5.医学研究に関する指針等での論点整理・提言:生命科学・医学系指針に反映すべき事項の素案について、患者・市民参画関係者の意見も聴取しながら素案を作成し、提言としてとりまとめた。
結果と考察
1.患者・市民参画推進戦略の調査:過去10年間に新たに作成・追加された国際的な倫理的枠組みの文書について、研究開発における患者・市民参画に関する倫理的な推奨事項を精査した。また、2.ゲノム医療研究等に関連した患者・市民参画活動のレビュー:英国、カナダ、オーストラリア、韓国における患者・市民参画の推進状況をとりまとめた。条件に合った国内の患者・市民参画活動について、活動タイプを大きく以下の3つ(①aボード設置型_組織、①bボード設置型_プロジェクト、②個別募集型)に分け、活動概要、対象者、要件、人数、運営・実施方法等をまとめた。また、各事例が該当するAMED8段階、並びにNIHRタイプも記載した。
3.患者・市民参画活動経験者への調査:4件のプロジェクトに関連する14名(仲介者5名、患者・市民6名、研究者3名)のインタビュー調査を行った。
4.患者・市民参画活動に関する研究会の開催:2024年10月14日(祝・月)に「シャロン・テリーが語る 研究への患者参画の歩みとこれから」を開催した。
5.医学研究に関する指針等での論点整理・提言:生命科学・医学系指針に記載すべき事項としては、前文、原則、用語の定義、研究代表者の責務、研究機関の長の責務、研究計画書、倫理審査委員会等において追記や補足説明が必要であると考え、提言する。ただし、指針以外に様々なツールや教育研修の拡充が必要である。また、本指針以外の人を対象とする研究の法令・指針でも同様の対応が必要であり、都度の改正によって細かな不整合が生じないようにすることに留意する必要がある。
結論
1から5までの活動を通じて、国内での患者・市民参画活動の現状を把握すること自体の課題が浮き彫りとなる一方、国内で取り組んでいる人々に必要とされるものは、先行する海外の取り組みから学んで整備できるものでもあると考えられた。今後も引き続き、検討を深めることとしたい。

公開日・更新日

公開日
2025-07-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-07
更新日
-

文献情報

文献番号
202404001B
報告書区分
総合
研究課題名
人を対象とする生命科学・医学系研究における患者・市民参画の推進方策に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AD1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中田 はる佳(神奈川県立保健福祉大学)
  • 東島 仁(千葉大学 国際学術研究院)
  • 高島 響子(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、諸外国での研究への患者・市民参画(Patient and public involvement 、以下、PPIとする)推進戦略を精査するとともに、国内のPPI事例を集約し、我が国に適した推進戦略と留意点を明らかにすることである。
研究方法
1.PPI推進戦略の調査:国際的な倫理的枠組みの文書におけるPPIに関する言及、英国、カナダ、オーストラリア、韓国におけるPPI推進戦略及び関連する法令指針、ガイドライン、規程や戦略、フレームワーク等の政策文書を収集し、分析した。
2.ゲノム医療研究等に関連したPPI活動のレビュー:文献調査、デスクトップサーチ、ヒアリングなどで国内外の事例について調査し、PPI活動の段階・タイプによる類型化を行った。
3.PPI活動経験者への調査:国内でPPI活動を経験した患者・市民、研究者、仲介者へのインタビュー調査を実施した。対象は、国内でPPI活動を実施した経験がある研究事業の関係者で、研究者、PPI仲介者、PPI協力者とした。撮影データは、15分程度の短編動画になるように編集を行った。
4.PPI活動に関する研究会の開催:R5年度は患者・市民参画に係わった人々を集めた研究会を開催した。R6年度は、米国からGenetic Allianceのシャロン・テリー氏を招へいし、オンラインでの講演会を開催したほか、講演や市民公開講座等の機会に聴衆からヒアリングを行った。
5.医学研究に関する指針等での論点整理・提言:生命科学・医学系指針に反映すべき事項の素案について検討し、提言としてとりまとめた。
結果と考察
1.PPI推進戦略の調査:国際的な倫理的枠組みを示す文書の分析により、①欧州を中心として、より民主主義的な科学技術政策の理念として市民の参画が推奨される潮流、②世界保健機構や世界医師会においては、公正な研究へのアクセスや研究成果の還元という観点から研究参加者やコミュニティの参画が推奨される潮流、③製薬企業等の産業界においては、円滑かつ迅速に臨床試験が進められるようにするための趣旨から患者の参画が推奨される潮流、が確認できた。英国とオーストラリア、カナダの「人を対象とした健康・医療領域研究全体」のPPI推進策には共通項があり、目指すPPIのあり方や理念、重視すべき点が、患者や市民を含む包括的な議論を経て法令指針等の形で示されていること、情報発信やコミュニケーション等、PPIと相補的な活動も含む包括的な枠組みが存在すること、詳細なガイドラインが作成/更新され続けていることが挙げられる。韓国では、本格的なPPI推進戦略は採られていないが、日本にはない取り組みが感染症対策や医療技術評価の領域で確認された。
2.ゲノム医療研究等に関連したPPI活動のレビュー: R5年度に実施した国内事例の文献調査について、医学研究(治験を含む)のPPI実践例が27文献から24件抽出されたほか、二次調査を通じて収集した。これらの活動タイプを①aボード設置型_組織、①bボード設置型_プロジェクト、②個別募集型に分け、活動概要、対象者、要件、人数、運営・実施方法等をまとめた。
3.PPI活動経験者への調査:4件のプロジェクトに関連する14名(PPI仲介者5名、患者・市民6名、研究者3名)のインタビュー調査を行った。選択基準は、一定期間安定して運用されているプロジェクトであること、原則としてPPI活動に関わる3つの立場(研究者、仲介者、協力者)からインタビュー協力者が得られる可能性が高いこととした。収集したインタビューデータから、インタビュー対象者の選択に基づいて映像または音声を公開するために、約15分の短編動画を製作した。
4.PPI活動に関する研究会の開催:2024年2月26日に国内の患者・市民参画関係者向けの研究会を開催した。2024年10月14日に「シャロン・テリーが語る 研究への患者参画の歩みとこれから」を開催した。
5.医学研究に関する指針等での論点整理・提言: 前文、原則、用語の定義、研究代表者の責務、研究機関の長の責務、研究計画書、倫理審査委員会等において追記や補足説明が必要であると考え、提言した。ただし、指針以外に様々なツールや教育研修の拡充が必要である。また、本指針以外の人を対象とする研究の法令・指針でも同様の対応が必要であり、都度の改正によって細かな不整合が生じないようにすることに留意する必要がある。
結論
本年度は、①から⑤の取り組みを通じて、国内でのPPI活動の現状を把握すること自体の課題が浮き彫りとなる一方、国内で取り組んでいる人々に必要とされるものは、先行する海外の取り組みから学んで整備できるものでもあると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2025-07-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
202404001C

収支報告書

文献番号
202404001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 902,870円
人件費・謝金 48,418円
旅費 250,674円
その他 4,971,620円
間接経費 1,846,000円
合計 8,019,582円

備考

備考
差額19,582円は自己資金で充当。

公開日・更新日

公開日
2025-07-08
更新日
-