医療機関における情報技術等への業務移管による医療従事者の労働時間短縮効果と経営上の負荷に基づく費用対効果の検証研究

文献情報

文献番号
202403010A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における情報技術等への業務移管による医療従事者の労働時間短縮効果と経営上の負荷に基づく費用対効果の検証研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AC1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 耕(国立大学法人一橋大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 阪口 博政(金沢大学 経済学経営学系)
  • 平木 秀輔(関西学院大学 経営戦略研究科)
  • 齊藤 健一(京都大学 医学研究科 附属医療DX教育研究センター)
  • 羽田 紘人(東京科学大学病院 放射線部)
  • 上條 由美(昭和医科大学 保健医療学部)
  • 的場 匡亮(昭和大学 大学院 保険医療学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
15,386,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人手不足が進む中、ICT・ロボットの活用による業務効率化の必要性が高まっている。そこで本研究では、実際の事例等を基に、ICT等の導入の効果(労働時間短縮等)とともに、ハードやソフト、保守費用、支援要員など必要な資源(コスト)とその経営上の負荷(導入初期費用の回収期間)を調査し、ICT等への業務移管のコスト構造及び費用対効果を可視化し、業務負担軽減に資するICT等の導入を促すことを目的としている。
研究方法
以上の研究目的を達成するために、病院及び事業者へのインタビュー調査、ICT等コスト把握全国病院調査、ICT等期待効果・考慮要素調査、実地病院調査の4つの調査を実施した。
病院等インタビュー調査では、全国病院調査の質問票設計や集計結果の解釈に向けた留意事項を把握するために、12病院及び3事業者への聞き取りをした。また全国病院調査では、先行研究班での研究等から労働時間短縮効果の余地が大きいと判明した4種類のICT等(電子問診、音声入力、RPA、動画による患者説明)を対象に費用対効果分析をすることとし、そのデータ収集の前半として全国8,000超の病院を対象に質問票調査を実施して、各ICT等活用に伴うコスト関連データを収集した。さらに期待効果等調査では、本研究班の費用対効果分析の妥当性及び限界を確認するため、ICT等に期待する各種効果と導入時の各種考慮要素の重視度などについて、DPC対象病院に質問票調査を実施した。加えて、実地病院調査では、全国調査や病院インタビュー調査で対象としたICT等に限定されない多様なICT等について、活用に伴うコスト等を詳細に把握するために、3つの大学病院(群)での実地調査を行った。
結果と考察
病院等インタビュー調査では、ICT等への業務移管に関する全国病院調査の実施のための質問票設計や集計結果の分析・解釈に向けた、コスト及び効果把握に関する留意事項を明確にできた。
また全国病院調査では、電子問診は84病院、音声入力は66病院、RPAは64病院、動画患者説明は118病院から、導入及び運用段階のハード・ソフト関連外部支出及び院内対応各種業務(研修会参加、システム保守、トラブル対応など)の部門(事務・医師・その他医療提供)別人員所要時間などの詳細なデータを収集できた。収集データにより、これらICT等への業務移管に伴う必要コストの構造を可視化することもでき、特に中央値を基に、導入及び運用段階の外部支出と院内部門別人件費、耐用年数期間全体の総コストとその年次換算コストも明らかにできた。
さらに期待効果等調査では、ICT等全般でも上記4種類のICT等でも、労働時間短縮が最も重視度が高い期待効果であり、費用対効果の大小が最も重視度が高い導入時考慮要素であることが判明し、労働時間短縮を効果と捉え費用対効果という観点からICT等の導入を評価することの妥当性が確認された。
加えて実地病院調査では、東京科学大学病院では放射線部門を中心に利用状況を調査し、患者ポジショニング支援や撮影条件意思決定支援、画像再構成自動化などのICT等について各種費用等を把握した。システムの機能/利用環境によって費用に差が生じていたほか、研修等は実施されておらず伴う労務費は発生していなかった。また画像再構成自動化のICT等については、費用対効果分析に必要な一件当たり所要時間の調査も実施した。
また京都大学病院では、RPAや救急部門情報共有システムなどについて各種費用と削減労務時間を把握し、利用のコストと人件費節減額を比較した。ICT等の導入は、経営的な負荷をさほど高めることなく労働時間短縮に繋がると期待できる一方で、救急部門情報共有システムでは職員の抵抗感、現場メンバーの入れ替わりの多さといった課題が判明した。
さらに昭和大学病院群では、5つの急性期病院での導入状況を調査し、退院調整、画像レポート作成、患者説明動画、一包化監査支援、救急トリアージ補助の5つのICT等について導入費用等の把握を試みた。ICT等の種類および導入規模によって把握難易度が大きく異なり、正確に把握するためには、導入時の費用内訳の明確な記録及び管理の体制と導入規模に適した把握管理方法の確立が求められることが判明した。
結論
全国病院調査のための質問票設計などに際する留意点を明確にした上で、全国調査により4種類のICT等の費用対効果分析に不可欠なコスト関連データを多様な属性の病院から得ることができ、またコスト構造を可視化できた。また労働時間短縮を効果と捉え費用対効果という観点からICT等導入を評価する本研究班の方法の妥当性が確認された。実地病院調査も含め、多様なICT等の活用に伴うコスト構造が明らかにされ、今後、経営上の負荷を抑えつつ各種ICT等の導入により職員の業務負担軽減を図りたい病院にとっての参考を提供できた。

公開日・更新日

公開日
2025-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
202403010Z