文献情報
文献番号
202403005A
報告書区分
総括
研究課題名
医療現場における医療AIの導入状況の把握、及び導入に向けた課題の解決策の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AC1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
竹下 康平(東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部)
研究分担者(所属機関)
- 村山 雄一(東京慈恵会医科大学 医学部 脳神経外科)
- 髙尾 洋之(東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部)
- 斎藤 豊(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科)
- 炭山 和毅(東京慈恵会医科大学 医学部医学科 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、画像・音声認識、自然言語処理、異常判定などのAI技術が進歩し、業務効率化や診療補助に役立つ医療AIが開発されている。厚生労働省の保健医療分野AI開発加速コンソーシアム(AIコンソ)では、AIの社会実装に必要な仕組みの重要性が認識され、医療現場でのAI導入に向けた課題等の実態調査について言及があった。2018年には国内で医療AI研究開発の現状と課題について報告があり、2022年には海外で一般開業医に対するAI対応システムの調査が行われているが、医療全体を対象とした報告は少ない。本研究では、既存のAI製品の医療機関への認知と導入実態を大規模アンケートで調査し、導入のハードルを明らかにすることを目的とする。これにより、医療AIの普及促進や医師の働き方改革、医療AI産業の発展を目指す。
研究方法
2024年1月中旬から4月下旬にかけて、全国の医療機関を対象としたアンケート調査を実施した。調査対象は、画像診断支援や業務効率化・質の担保に寄与するAI製品のうち、既に製品として市場に流通しているものとし、製品の認知状況、導入状況、導入しない理由、導入・維持における課題などを調査項目とした。集計結果は医療AIに関連する業界団体、医療機関関係団体(日本医師会、日本病院会、全日本病院協会)、本研究班の研究者からなる会議で確認・議論し、政策提言の取りまとめを行った。
結果と考察
アンケート結果を集計したところ、949施設からの回答が得られた。調査結果では、転倒検知・見守りツール、翻訳を除き、いわゆる医療機関専用として使用される製品の医療機関への導入は、研究班のアンケート調査時点において低率であった。低率の中でも「翻訳」、「転倒検知・見守り」が他と比べて比率が高く、医療提供をサポートする共通的な機能については、導入が始まっていると考えられた。「ケアプラン・リハ計画」「薬歴・退院サマリ作成」については他と比べて比率が低い結果であり、生成AI等を利用した製品の活用が期待された。また、医療AIを導入しない理由として最も多かったのは「現状で運用できている」という認識であり、逆説的には将来にわたった労働力不足への考慮がされていない(する余裕がない)可能性が示唆された。医療AI導入・維持費用については本体側、及び本体設置に伴って改修等が必要となるインフラ側ともに課題として認識されていた。得られたアンケート結果を前述の会議体で議論し、提言の取りまとめを行った。
結論
本研究を通じて、医療AIの普及に向けた現状の課題として、認知と導入のギャップ、経済的・制度的な障壁、医療現場の将来見通しの不足が明らかとなった。医療AIの導入を進めるには、現場のニーズとメーカーの開発方向性を調整し、行政による制度的・経済的支援が不可欠である。今後は、成功事例の共有や導入障壁の低減を通じて、医療AIの持続的な普及と、医療サービスの質向上および医師の業務負担軽減に向けた実践的な取り組みが求められる
公開日・更新日
公開日
2025-06-13
更新日
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