文献情報
文献番号
202402006A
報告書区分
総括
研究課題名
介護サービス施設・事業所調査の行政記録情報による代替可能性の検証のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
中村 真理子(国立社会保障・人口問題研究所(情報調査分析部))
研究分担者(所属機関)
- 小島 克久(城西国際大学 福祉総合学部)
- 南 拓磨(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
- 蓋 若エン(ガイ ジャクエン)(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、介護サービス施設・事業所調査の調査手法の評価と行政記録情報の活用拡大の可能性について検討を行うことである。この調査は介護保険制度における施設・事業所を対象として、平成12年以降毎年実施され、全国の介護サービスの提供状況及び従事者・利用者の状況を明らかにしてきた。調査結果は介護保険等の施策推進のための基礎資料として活用されており、わが国の介護サービス基盤を把握する基礎的かつ代表的な調査として位置付けられてきた。
一方、政府統計をめぐる厳しい調査環境の下、他の政府統計と同様にこの調査においても調査の回答者負担、調査事務負担の軽減を目的とした改善が求められ、様々な変更が行われてきた。特に、令和4年調査からは「介護保険法による情報公表制度」に基づく行政記録情報を活用した調査票へのプレプリントが開始された。さらに、総務省統計委員会の「『公的統計整備に関する基本的な計画』(第Ⅳ期計画)」では、これまで以上に積極的な行政記録情報の活用に加えその利用制約への対応などの報告者負担軽減に取り組む必要性が示されている。
つまり、介護サービス施設・事業所調査においては、介護サービス基盤の的確な把握の一方で、回答者負担、調査事務負担の軽減を両立することが求められている。しかも後者においては、行政記録情報の一層の活用が求められている。同調査において、2つの課題を両立させるために行政記録情報の活用拡大は可能なのだろうか。
このような問題意識の下、本研究課題では①介護サービス施設・事業所調査の調査手法変遷の経緯把握、②同調査における行政記録情報の活用の現状分析、③同調査のデータの実態(特に行政記録情報の活用部分)把握と評価、④同調査における行政記録情報の活用拡大の可能性・課題の検討、という4つの研究課題に取り組んだ。
一方、政府統計をめぐる厳しい調査環境の下、他の政府統計と同様にこの調査においても調査の回答者負担、調査事務負担の軽減を目的とした改善が求められ、様々な変更が行われてきた。特に、令和4年調査からは「介護保険法による情報公表制度」に基づく行政記録情報を活用した調査票へのプレプリントが開始された。さらに、総務省統計委員会の「『公的統計整備に関する基本的な計画』(第Ⅳ期計画)」では、これまで以上に積極的な行政記録情報の活用に加えその利用制約への対応などの報告者負担軽減に取り組む必要性が示されている。
つまり、介護サービス施設・事業所調査においては、介護サービス基盤の的確な把握の一方で、回答者負担、調査事務負担の軽減を両立することが求められている。しかも後者においては、行政記録情報の一層の活用が求められている。同調査において、2つの課題を両立させるために行政記録情報の活用拡大は可能なのだろうか。
このような問題意識の下、本研究課題では①介護サービス施設・事業所調査の調査手法変遷の経緯把握、②同調査における行政記録情報の活用の現状分析、③同調査のデータの実態(特に行政記録情報の活用部分)把握と評価、④同調査における行政記録情報の活用拡大の可能性・課題の検討、という4つの研究課題に取り組んだ。
研究方法
本研究では、①~④の各研究課題に対し(1)介護サービス施設・事業所調査に係る資料及び統計調査に係る文献収集と分析、(2)同調査の個票データ の二次分析、(3)同調査の関係者(同調査担当部局、自治体などの調査実施関係者、研究者)へのヒアリング調査という3つの研究アプローチで取り組んだほか、海外事例の収集を実施した。また、以下で示す研究課題を進めるにあたっては随時、研究会を開催し(令和6年5月、8月、12月に実施)、研究班内外の研究者との間で情報共有・議論を行った。
結果と考察
介護サービス施設・事業所調査は、調査の構造自体が複雑であり、調査方法(調査票の配布方法、オンライン調査の導入など)も随時変化している。また、介護サービス情報公表制度の運用(具体的には報告締め切り時期など)についても都道府県・政令指定都市によって若干の違いがある。
そのため、行政記録情報を活用したプレプリントの導入が調査全体に対して影響を与えたのか、影響を与えたとすればどの程度のものであったのかを評価するには、慎重な検討が必要である。本研究課題で実施した全国規模での集計においては顕著な影響は確認されなかったが、より慎重を期すのであれば都道府県単位などの条件付き集計を実施し、数値の時系列変化を随時確認することが望ましいと考えられる。また、集計データの解釈を行う際には、プレプリントの導入以外の要因が寄与している可能性がないかどうかについても考慮する必要がある。
そのため、行政記録情報を活用したプレプリントの導入が調査全体に対して影響を与えたのか、影響を与えたとすればどの程度のものであったのかを評価するには、慎重な検討が必要である。本研究課題で実施した全国規模での集計においては顕著な影響は確認されなかったが、より慎重を期すのであれば都道府県単位などの条件付き集計を実施し、数値の時系列変化を随時確認することが望ましいと考えられる。また、集計データの解釈を行う際には、プレプリントの導入以外の要因が寄与している可能性がないかどうかについても考慮する必要がある。
結論
介護サービス施設・事業所調査においては、平成12年の調査開始以降、調査の実施方法において様々な変更が行われた。本研究課題では令和4年度に導入された介護サービス情報公表制度の行政記録情報を用いたプレプリントの導入が調査結果に与えた影響について注目し、個票データの試行的な集計を行った。その結果、少なくとも全国規模での集計においては顕著な影響は確認されなかった。
また、介護サービス情報公表制度の設計、事業所数、質問項目などを確認し、介護サービス施設・事業所調査との対応関係を整理したところ、今後さらに行政記録情報の活用を進める余地があることが確認された。ただし、介護サービス情報公表制度と介護サービス施設・事業所調査では、質問方法に相違がある。そのため行政記録情報の活用にあたっては、慎重な検討・調整が必要である。
さらに、介護サービス施設・事業所調査の基本票への回答と介護サービス情報公表制度の運用を行う都道府県へのヒアリングから、介護サービス施設・事業所調査「基本票」 への回答作業の負担となっているのは住所や事業所名などの処理であることが確認された。また、介護サービス情報公表制度の運用体制は都道府県によって相違があることも確認された。調査回答者の負担軽減を目的として行政記録情報の活用拡大を進め、調査方法の改善を行うのであれば、実際に回答作業を行う調査対象へのヒアリングを実施した上で進めることが望ましいと考えられる。
また、介護サービス情報公表制度の設計、事業所数、質問項目などを確認し、介護サービス施設・事業所調査との対応関係を整理したところ、今後さらに行政記録情報の活用を進める余地があることが確認された。ただし、介護サービス情報公表制度と介護サービス施設・事業所調査では、質問方法に相違がある。そのため行政記録情報の活用にあたっては、慎重な検討・調整が必要である。
さらに、介護サービス施設・事業所調査の基本票への回答と介護サービス情報公表制度の運用を行う都道府県へのヒアリングから、介護サービス施設・事業所調査「基本票」 への回答作業の負担となっているのは住所や事業所名などの処理であることが確認された。また、介護サービス情報公表制度の運用体制は都道府県によって相違があることも確認された。調査回答者の負担軽減を目的として行政記録情報の活用拡大を進め、調査方法の改善を行うのであれば、実際に回答作業を行う調査対象へのヒアリングを実施した上で進めることが望ましいと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2025-06-30
更新日
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