ICD-11の我が国における普及・教育に資する研究

文献情報

文献番号
202402001A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11の我が国における普及・教育に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22AB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
末永 裕之(一般社団法人日本病院会 執行部)
研究分担者(所属機関)
  • 須貝 和則(国立国際医療センター 事務部)
  • 住友 正幸(徳島県鳴門病院)
  • 瀬尾 善宣(社会医療法人医仁会 中村記念病院 診療部 脳神経外科)
  • 高橋 長裕(公益財団法人ちば県民保健予防財団総合健診センター)
  • 塚本 哲(日本保健医療大学 保健医療学部)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 松本 万夫(埼玉医科大学国際医療センター心臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICD-11の広範な普及、ICD-11コーディングのスキルアップ、情報体系としての検証、諸外国での適用状況や予定の調査等を目的とし、もってICD-11の我が国における普及・教育に資することを狙いとした。
研究方法
初級者研修会および協力者によるセルフ勉強会、YouTubeによる研修会ビデオの配信、ウェブサイトの作成と運用、他学会を通じた医師への啓発活動、中級者研修会を通じた教育メソッドの開発、ICD-11のコーディング結果と正答との一致率自動判定法としてのExcelのマクロ開発の試み、専門領域におけるコード体系の検証、生成型人工知能によるオートコーディング実現可能性の検証、欧米・中東・東南アジア等を対象とした調査、等を研究方法として計画した。
結果と考察
1)初級研修会は東京、広島、熊本で開催、合計で109名が参加した。ICD-11に初めて触れた者は55%で令和5年度と同率であった。診療情報管理士有資格者の数を考慮すると研修修了者の数は多くなく、一般医療関係者への普及率は論を待たない。言語的障壁問題のほか、ICD-11の用途と要求されるポストコーディングの粒度に対する疑問、またコーダーに要求される医学的知識についての意見が出された。地域におけるセルフ勉強会は好評であったが、指導者的立場の指導者の参加必要性が要望された。WEB配信は継続的に行われアクセス数は3512件に及んだ。学会での啓発活動は日本内科学会、日本不整脈心電学会、日本心不全学会、日本心臓病学会、日本脳神経外科学会で行われた。ICD-11は聞いたことがある程度の認知度であった。一方、医学研究、疫学的応用以外、診療報酬、保険制度、病院経営の質向上、資源の適正配分への応用を期待する意見があった。2)中級者研修、指導者養成研修ではグループワーク方式の有用性と問題点が指摘された。グループの人数は3~5人規模が適切と思われ、ICD-11コーディングに関する問題点は初心者と同様な意見が出された。エクセルマクロによるコーディング採点は模範解答との一致率を自動判定し定量化できる可能性が示唆された。3)ICD-11の専門分野での詳細な検討では医学研究応用にはより改善が必要である。ChatGPT4.oによる自動コーディングは、現時点では実用的でないが、可能性は示唆された。4)諸外国(8か国)のICD-11導入準備状況はまちまちで、英語圏かつ新規参入国でより積極的であった。実際利用開始時期はおおむね2030年頃と回答された。公用語以外の翻訳は徐々で、公用語訳でも英語以外では検証段階の国が見られた。
結論
ICD-11は診療情報管理士を中心に普及しつつあり教材、教育手法はととのってきたが、その普及率は高くなく、他の医療関連従事者への普及はさらに不十分で、継続した教育普及活動とその工夫が必要と思われた。ICD-11コーディング判定自動化や自動コーディングは改善により期待される。専門分野的にICD-11分類項目の改良点が指摘された。ICD-11に対する姿勢には国家間差がみられ、英語圏(含む準英語圏)かつ新規参入国は積極的で、ICD-11の実使用開始は2030年を目標とする国が多かった。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
202402001B
報告書区分
総合
研究課題名
ICD-11の我が国における普及・教育に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22AB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
末永 裕之(一般社団法人日本病院会 執行部)
研究分担者(所属機関)
  • 須貝 和則(国立国際医療センター 事務部)
  • 住友 正幸(徳島県鳴門病院)
  • 瀬尾 善宣(社会医療法人医仁会 中村記念病院 診療部 脳神経外科)
  • 高橋 長裕(公益財団法人ちば県民保健予防財団総合健診センター)
  • 塚本 哲(日本保健医療大学 保健医療学部)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 松本 万夫(埼玉医科大学国際医療センター心臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
・須貝和則(国立国際医療センター 事務部);法人の統合および院内の異動により所属情報を変更(令和7年4月) ・住友正幸(徳島県鳴門病院院長、理事長);異動により所属情報を変更(令和7年4月)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、先行研究(わが国における ICD-11 コーディング導入に関する問題点の抽出と解決及び先進国における疾病統計に係る情報分析(19AB0201))をもとに、a)医療現場等で様々な立場の利用者が学びやすい教材の開発b)ICD-11のコーディングについて利用者がスキルアップできる仕組みの開発c)ICD-11に関するWHOの情報を整理した解説資料の作成(医療系多専門領域および関連多職種への知識の提供)d)ICD-11に関する検証等、を3年間の目標とし、令和4年度から6年度にかけて実施した。
研究方法
教材および教育方法の開発、腫瘍コーディングの問題点検討、初級・中級研修会、地域セルフ研修会、各学会での講演による啓発、諸外国でのICD-11適用状況や、AIによるオートコーディングの検証などを主な手法とした。
結果と考察
 初年度(令和4年度)の研究では、ノートパソコン等の情報端末を用いたコーディング実習が、ICD-11の理解とコーディングにおける技術面の習熟に有用であると明らかになった。なお、コード選択基準が曖昧な場合、コード選択に過誤が生じやすくなることから、適切なコード選択ルールが必要性、また英語翻訳の差から異なるコード選択となる可能性があることから、早期のICD-11公式日本語訳の必要性を指摘した。
 二年目(令和5年度)の研究では、ICD-11の普及・教育には対面による研修会、YouTubeなどインターネットツールの開発普及、中級以上の経験者にはグループワークなどの研修が有用であるとの結論を得た。また、「可逆性検証」においては、実際の疾病状況を正確に想起することが可能であるか、引き続き検証していく必要があるとした。地域におけるセルフ研修では、事前の知識の習得など手法と教材に工夫が必要であることが明らかになった。各学会におけるICD-11への関心は低く、日本医学会・日本医学会連合などを先頭に、各学会においてより積極的なICD-11の普及啓発を期待した。
 三年目(令和6年度)の研究では、研修会を通じICD-11の用途と要求されるポストコーディングの粒度に対する疑問などが出された。地域におけるセルフ勉強会は好評であったが、指導者的立場の指導者の参加必要性が要望される。WEB配信は継続的に行われアクセス数は3512件に及んだ。各専門学会での啓発活動では、医学研究、疫学的応用以外、診療報酬、保険制度、病院経営の質向上、資源の適正配分への応用を期待する意見があった。
 中級者研修、指導者養成研修ではグループワーク方式の有用性と問題点が指摘された。グループの人数は3~5人規模が適切と思われた。エクセルマクロによるコーディング採点は模範解答との一致率を自動判定し定量化できる可能性が示唆された。ICD-11の医学研究応用にはより改善が必要である。ChatGPT4.oによる自動コーディングは、現時点では実用的でないが、可能性が示唆された。諸外国(8か国)のICD-11導入準備状況はまちまちで、英語圏かつ新規参入国でより積極的であった。実際利用開始時期はおおむね2030年頃と回答された。公用語以外の翻訳は徐々で、公用語訳でも英語以外では検証段階の国が見られた。
結論
3年間の研究を通し、ICD-11の知識は診療情報管理士を中心に普及しつつあり、教材、教育手法はととのってきたが、依然としてその普及率は高くなく、他の医療関連従事者への普及はさらに不十分で、継続した教育普及活動とその工夫が必要である。ICD-11コーディング判定の自動化や、自動コーディングはさらなる改善が期待される。いくつかの専門分野において、ICD-11分類項目の改良点が指摘された。海外調査では、ICD-11に対する姿勢に国家間差がみられることや、英語圏(含む準英語圏)かつ新規参入国は積極的であること、ICD-11の実使用開始は2030年を目標とする国が多いことなどが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202402001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)脳神経外科領域において、ICD-11は現状WHO CNS分類最新版に未対応であること、脳腫瘍の下垂体腫瘍に関するKnosp分類が必須であること等を明らかにし啓発した。また循環器分野(不整脈)では、特に洞機能不全症候群、2度房室ブロック等について改善の必要性を指摘した。
2)用語”metastatic"について、"metastatic ○○ cancer"が原発性のがんを指すのか、それとも二次性のがんであるのか、ICD-11レファレンスガイドの記述と国内の認識に食い違いがあることを指摘した。
臨床的観点からの成果
本研究では、臨床的な研究は実施していない。
ガイドライン等の開発
1)ICD-11のリファレンスガイド下訳を完成した。同下訳は修正を経て日本診療情報管理学会より厚生労働省に提出され、令和7年5月に書面審議により開催された第28回社会保障審議会統計分科会 疾病、傷害及び死因分類専門委員会の資料として採用された。同資料は、日本語でICD-11のコーディングを正確におこなうために必須の資料である。
その他行政的観点からの成果
諸外国のICD-11導入状況を調査し、我が国における適用の参考資料を作成した。WHO-FIC MbRGによるICD-11がんコーディングパイロットスタディに協力し、全世界からの回答78件中、日本からの回答62件をとりまとめ提出(第2回時)、不備や問題点を指摘し後日の修正に結びついた。我が国でのICD-11適用を前に、診療情報管理士への教育、普及活動を継続した。人工知能(AI)による現時点でのオートコーディングの可能性と問題点を検証した。またICD-11の自己学習に活用出来る採点マクロを開発した。
その他のインパクト
国際統計情報にかかる情報をまとめたホームページを開設し、一般への普及啓発に活用した。
『ICD-11,ICF,ICHI WHO国際統計分類に関するサイト』
https://sites.google.com/view/20240305/home

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
日本内科学会総会・講演会ほか
学会発表(国際学会等)
1件
IFHIMA(診療情報管理国際連盟)大会(第20回)
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
31件
初級9,中級3,地域セルフ14,Youtube4,ホームページ1

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202402001Z