急性期、回復期、慢性期の入院患者の疾病や治療を踏まえた患者の状況等に応じた看護・ケアに関する指標の開発及び評価体系の検討に資する研究

文献情報

文献番号
202401020A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期、回復期、慢性期の入院患者の疾病や治療を踏まえた患者の状況等に応じた看護・ケアに関する指標の開発及び評価体系の検討に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では急性期、回復期、慢性期の入院患者の疾病や治療を踏まえた患者の状況等に応じた看護・ケアに関する指標を「重症度、医療・看護必要度」をもとに開発し、診療報酬における入院医療の評価に用いるための検証を行うことを目的とする。
研究方法
1) 診断群分類研究支援機構からDPCデータ(様式1、EFファイル、Hファイル)の提供を受け、2020年度分について分析用データベースを作成した。このデータを用いて看護必要度のB項目で収集されているADLの状況が、医療資源の必要度(診療区分別出来高換算コスト、在院日数)、退院経路(家庭への退院、転院、介護施設等への入所)に及ぼす影響を傷病別(DPC6桁)、性別、要介護度別に検討した。また、DPCでは入退院時のBarthel Indexの情報が収集されていることから、このスコアとB項目のスコアとの関係性についても検討した。さらに、重症度、医療看護必要度の各項目(A、B,C)の入院期間中の推移についても検討を行った。 DPCとしては、肺炎(DPC6=040080)、股関節大腿近位骨折(DPC6=160800)を分析対象とした。なお、股関節大腿近位骨折については、手術例と非手術例とに区分して分析を行った。2)重症度、医療・看護必要度活用の先進事例として愛媛県のHITO病院の訪問調査を行った。
結果と考察
結果: 1)本分析の結果、内科症例と外科症例では重症度、医療看護必要度のA、B、C項目の動向が異なることが明らかとなった。内科症例では入院直後にA項目、B項目のスコアが高くなった後、漸減するが、A項目は10日前後から、そしてB項目は60日前後から再度上昇する。他方、C項目は入院経過とともに上昇する傾向を示していた。このことはB項目の改善が進まない高齢患者を多く引き受ける病院では、ADLケアに手間がかかる一方で、A項目・C項目で評価すべきものが少ない、及び平均在院日数が長くなることによって、診療報酬上の施設基準に影響を及ぼす可能性を示唆している。したがって、この分析ではADLケアに着目した患者の状態像の評価についてはB項目を用いて、別途行うことが適切であると考えられる。
他方、外科症例である股関節大腿近位骨折の手術例について重症度、医療介護必要度のスコアと1日当たり出来高換算コストとの関連を検証した結果をみると、外科症例の入院中の評価については、現行のA,B,C項目を用いた評価方法で、おおむね問題がないことが示唆された。
ただし、入院期間中のB項目のスコアが低い群で平均在院日数が長くなっていることから、要介護認定のない群で、入院後の退院調整に時間がかかっている可能性が示唆された。
2)HITO病院ではICTを活用して、重症度、医療・看護必要度を用いた看護業務の管理を先進的に行っていた。入力に関してはセル看護方式と連動した記録方式を採用しており、入力の作業負荷を軽減する工夫も行われていた。
結論
1)本研究結果より、重症度、医療看護必要度の評価を、入院期間中の看護の手間からみた入院基本料の評価に用いるためには、内科系、外科系に区分して評価することが望ましい可能性が示唆される。また、入院時の重症度、医療看護必要度の評価を退院調整に活用することの体系化も必要であると考える。この際、現状のB項目の評価で収集されていない入浴、排便・排泄の評価をどうするかが課題であると考える。
2)HITO病院の取り組みから、ICTを活用することで、重症度、医療・看護必要度の本来の目的である看護業務の管理を効率的に行うことが可能になることが示された。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202401020Z