遺伝子組換え医薬品等のプリオン安全性確保のための検出手法の標準化及プリオン除去工程評価への適用に関する研究

文献情報

文献番号
200940009A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子組換え医薬品等のプリオン安全性確保のための検出手法の標準化及プリオン除去工程評価への適用に関する研究
課題番号
H19-医薬・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 生田 和良(大阪大学 微生物病研究所)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院 獣医学研究科)
  • 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子組換え医薬品等の異常プリオン(PrPSc)の混入/迷入リスクを低減化するためのPrPSc検出法の開発や試料調製法の最適化と,製造工程のPrPSc除去/不活能評価法の標準化を行う.
研究方法
プリオン試料として,ハムスター 263K株が感染した脳由来のミクロソーム分画(MF)を超音波装置又は界面活性剤処理して平均粒子径約100nmにしたもの,または同脳をウンデカンスルホン酸Na (SUS)処理し,プラノバ35N(平均孔径35 nm)で濾過したものを用いた.
結果と考察
1)  PrPScの特異的検出法開発の一環として,前年度までに,PrPCを効率的に濃縮する方法を構築している.本年度は,濃縮試料からPrPCを高純度で回収する方法を検討し,SDS-PAGE後ゲルを固定化しないこと,また,高塩濃度溶液を用いることによって,高収率で糖タンパク質を回収できることを見出した.2) 近赤外分光法は,プリオン病の生前診断法として有用であることが明らかになった.また,PMCA法による異常型プリオンの増幅条件は,プリオン株ごとに最適化する必要があることが示唆された.3) 平均孔径15nmのウイルスろ過膜は感染性プリオン因子が漏出するものの,4 Log以上の除去能を有し,効果的な除去手段であることが明らかになった.4) 粒子径35 nm以下のPrPSc画分をスパイク試料としたプリオン除去のプロセスバリデーションが実施可能であることを示した. 5) ウシPrPScの新規検出法確立を目的として,ウシスプライス変異型プリオンタンパク質(PrPSV)組換え蛋白質発現系の構築,ウシPrPSV特異抗体の調製,ヒツジ胎児脳由来細胞株OA1が発現するPrPSV mRNAの解析を行った.
結論
PrPSc高選択的検出法の開発を目指したPrPSc及びPrPC構造解析のためのPrPC濃縮法を構築した.また,プリオン病の生前診断法として近赤外分光法,プリオン除去法として孔径15nmのウイルス除去膜,及びプリオン除去のプロセスバリデーション実施用サンプルとして粒子径35 nm以下のPrPSc画分が有用であることを見出した.さらにPrPSc検出法への応用が期待できるPrPSVの発現系を構築した.

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200940009B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝子組換え医薬品等のプリオン安全性確保のための検出手法の標準化及プリオン除去工程評価への適用に関する研究
課題番号
H19-医薬・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 生田 和良(大阪大学 微生物病研究所)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院 獣医学研究科)
  • 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子組換え医薬品等の異常プリオン(PrPSc)の混入/迷入リスクを低減化するためのPrPSc検出法の開発や試料調製法の最適化と,製造工程のPrPSc除去/不活能評価法の標準化を行う.
研究方法
試料として,ハムスター 263K株が感染した脳由来のミクロソーム分画を超音波装置又は界面活性剤処理して平均粒子径約100nmにしたもの,または同脳をウンデカンスルホン酸Na処理し,プラノバ35N(平均孔径35 nm)で濾過したものを用いた.
結果と考察
1) PrPSc選択的検出法を開発するために,比較対照となる正常プリオン(PrPC)を効率よく回収する方法を検討し,脳組織をOctyl β-glucoside等で可溶化し,NiカラムとPEIコーティングメンブランの併用により濃縮する方法,濃縮試料をSDS-PAGEで泳動し,ゲルを固定化せずに,高塩濃度溶液で抽出する方法を見出した.2) 近赤外分光法はプリオン病の生前診断法として有用であることを明らかにした.3) 平均孔径15nmのウイルスろ過膜は感染性プリオン因子が漏出するものの,4 Log以上の除去能を有し,効果的な除去手段であることを見出した.4) 粒子径35 nm以下のPrPSc画分をスパイク試料として,プリオン除去のプロセスバリデーションが実施可能であることを示した.5) ウシ及びヒツジのprnpエクソン3にスプライス変異が存在し,GPIアンカーシグナルペプチドが欠損しているPrPSV mRNAを発現していることを見出した.また,ウシPrPScの新規検出法確立を目的として,ウシPrPSV組換え蛋白質発現系の構築と特異抗体の調製,PrPSV mRNAを検出するRT-PCRの確立,ヒツジ胎児脳由来細胞株OA1が発現するPrPSV mRNAの解析を行った.
結論
PrPSc高選択的検出法の開発を目指したPrPSc及びPrPC構造解析のためのPrPC濃縮法を構築した.また,プリオン病の生前診断法として近赤外分光法,プリオン除去法として孔径15nmのウイルス除去膜,及びプリオン除去のプロセスバリデーション用試料として粒子径35 nm以下のPrPSc画分が有用であることを見出した.さらにPrPSc検出法への応用が期待できるPrPSVの発現系を構築した.

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
異常プリオン(PrPsc)の検出法や試料調製法、さらにはPrPsc除去工程の評価法について検討を行ったが、特に工程評価のためのPrPsc の調製法を明確にすることができ、標準的な工程評価法に利用可能と考えられる。また、スプライシング変異の検出法を開発できたことは、生理的な役割の解明につながる成果である。
臨床的観点からの成果
プリオン病の生前診断法としての近赤外分光法の有用性を評価し、発症前診断とPrPsc のインビボアッセイ方への応用が期待される成果である。
ガイドライン等の開発
ガイドライン作成や審議会等への参考にはされていないが、総合機構とのバイオ医薬品の専門協議における基礎データとして活用されている。
その他行政的観点からの成果
審議会等への参考にはされていないが、総合機構とのバイオ医薬品の専門協議における基礎データとして活用されている。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nana Kawasaki, Satsuki Itoh, Noritaka Hashii, et al.
Mass spectrometry for analysis of carbohydrate heterogeneity in characterization and evaluation of glycoprotein products.
Trends in Glycosci. Glycotech.  (2010)
原著論文2
Kawasaki, N., Itoh, S., Hashii, N., et al.
The significance of glycosylation analysis in development of biopharmaceuticals.
Biol. Pharm. Bull.  (2010)
原著論文3
Yunoki M, Tanaka H, Urayama T, et al.
Infectious prion protein in the filtrate even after 15nm filtration.
Biologicals  (2010)
原著論文4
Hirata Y, Ito H, Furuta T, et al.
Degradation and destabilization of abnormal prion protein using alkaline detergents and proteases.
Int J Mol Med. , 25 , 267-270  (2010)
原著論文5
Sakudo A, Ikuta K.
Fundamentals of prion diseases and their involvement in the loss of function of cellular prion protein.
Protein Pept Lett. , 16 , 217-229  (2009)
原著論文6
Sakudo A, Ikuta K.
Prion protein functions and dysfunction in prion diseases.
Curr Med Chem. , 16 , 380-389  (2009)
原著論文7
Nishimura T, Sakudo A, Xue G, et al.
Establishment of a new glial cell line from hippocampus of prion protein gene-deficient mice.
Biochem Biophys Res Commun. , 377 , 1047-1050  (2008)
原著論文8
Sakudo A, Wu G, Onodera T, et al.
Octapeptide repeat region of prion protein (PrP) is required at an early stage for production of abnormal prion protein in PrP-deficient neuronal cell line.
Biochem Biophys Res Commun , 365 , 164-169  (2008)
原著論文9
Sakudo A, Taniuchi Y, Kobayashi T, et al.
Normal cytochrome c oxidase activity in prion protein gene-deficient mice.
Protein Peptide Lett , 15 , 250-254  (2008)
原著論文10
Sakudo A, Nakamura I, Tsuji S, et al.
GPI-anchor-less human prion protein is secreted and glycosylated but lacks SOD activity.
Int J Mol Med , 21 , 217-222  (2008)
原著論文11
Sakudo A, Onodera T, Ikuta K.
PrPSc level and incubation time in a transgenic mouse model expressing Borna disease virus phosphoprotein after intracerebral prion infection.
Neurosci Lett , 431 , 81-85  (2008)
原著論文12
Sakudo A, Wu G, Onodera T, et al.
Octapeptide repeat region of prion protein (PrP) is required at an early stage for production of abnormal prion protein in PrP-deficient neuronal cell line.
Biochem Biophys Res Commun. , 365 , 164-169  (2008)
原著論文13
Yunoki M, Tanaka H, Urayama T, et al.
Prion removal bay nanofiltration under different experimental conditions.
Biologicals , 36 , 27-36  (2008)
原著論文14
Nojima J, Sakudo A, Hakariya Y, et al.
Spectroscopic diagnosis of anti-phospholipid antibodies by visible and near-infrared spectroscopy in SLE patients’ plasma samples.
Biochem Biophys Res Commun. , 362 , 522-524  (2007)
原著論文15
Sakudo A, Yoshimura E, Tsenkova R, et al.
Native State of Metals in Non-digested Tissues by Partial Least Squares Regression Analysis of Visible and Near-infrared Spectra.
J Toxicol Sci. , 32 , 135-141  (2007)
原著論文16
Sakudo A, Nakamura I, Lee DC, et al.
Neurotoxic prion protein (PrP) fragment 106-126 requires the N-terminal half of hydrophobic region of PrP in the PrP-deficient neuronal cell line.
Protein Peptide Lett , 14 , 1-6  (2007)
原著論文17
Sakudo A, Hakariya Y, Kobayashi T, et al.
Visible and near-infrared (Vis-NIR) spectroscopy: introduction and perspectives for diagnosis of chronic fatigue syndrome (Review).
J IiME. , 2 , 8-18  (2007)
原著論文18
Shindoh R, Kim C-L, Song C-H, et al.
The region approximately between amino acids 81 and 137 of proteinase K-resistant PrPSc is critical for the infectivity of the Chandler prion strain.
J. Virol.  (2010)
原著論文19
Kikuchi Y, Kakeya T, Nakajima O, et al.
Hypoxia induces expression of a GPI-anchorless splice variant of the prion protein.
FEBS J. , 275 , 2965-2976  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-