質量分析、分子イメージング、リンパ組織構築等を有効活用した機能性人工タンパク質製剤の高感度な安定性評価法、抗原性試験法の確立

文献情報

文献番号
200940008A
報告書区分
総括
研究課題名
質量分析、分子イメージング、リンパ組織構築等を有効活用した機能性人工タンパク質製剤の高感度な安定性評価法、抗原性試験法の確立
課題番号
H19-医薬・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 鎌田 春彦(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 阿部 康弘(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 遺伝子導入制御プロジェクト)
  • 末松 佐知子(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 免疫細胞制御プロジェクト)
  • 吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター・薬剤学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗体医薬やサイトカインに代表されるバイオ医薬は、これまで有効な治療法のなかった難治性疾患に対する特効薬として臨床されている。中でも、野生型のタンパク質とは構造の異なる “機能性人工タンパク質”を医薬品として利用した「第三世代」のタンパク質製剤が開発されつつある。しかしこのような第三世代のタンパク質製剤は、野生型のタンパク質と一次配列が異なることから、抗原性の発揮等新たな問題を生み出しており、機能性人工タンパク質製剤のレギュレーションに必須な安定性、抗原性の新規評価法を確立が求められている。そこで本研究課題では、機能性人工タンパク質製剤のレギュレーションに向けた安定性、抗原性の新規評価法の確立を目的とした研究を行った。
研究方法
本年度は、抗原性を規定するリンパ組織の構成細胞であるリンパ管内皮細胞の特性評価、抗原性発揮の原因となる変性タンパク質の立体構造とその生物活性との連関評価、リンパ球などの免疫細胞に対する変性タンパク質の影響、サイトカイン産生法としてのアデノウイルスベクター開発、人工リンパ組織構築法の確立に向けた基礎検討を行った。
結果と考察
タンパク質に対する抗原性惹起の中心組織であるリンパ組織の構成細胞であるリンパ管内皮細胞の特性解析に向けた基礎検討を行い、リンパ管誘導制御法開発に向けての評価系に関する有用な知見を得た。また質量分析を用いたタンパク質の構造変化解析法に関する基礎検討を行い、抗体医薬の立体構造変化とその薬理活性が相関していることを明らかにした。E3領域に外来遺伝子を挿入したRCAを生じないアデノウイルスベクターは、従来のアデノウイルスベクターと同様に優れた遺伝子導入ベクターとなりうることが明らかとなった。人工リンパ組織が二次リンパ組織よりも効率よく抗原特異的免疫反応を示すことを具体的に証明し、そのメカニズムが人工リンパ組織内での抗原特異的エフェクター及びエフェクターメモリータイプT細胞の濃縮による可能性を示す結果が得られた。さらに、抗体医薬を熱処理することで、蛋白質変性が生じ、マクロファージの活性化を惹起することが示唆された。
結論
本結果から得られた要素技術の有用性を検証すると共に最適化することで、バイオシミラー等に代表されるタンパク質製剤の品質(抗原性・安定性)評価法が確立できるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200940008B
報告書区分
総合
研究課題名
質量分析、分子イメージング、リンパ組織構築等を有効活用した機能性人工タンパク質製剤の高感度な安定性評価法、抗原性試験法の確立
課題番号
H19-医薬・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 鎌田 春彦(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 阿部 康弘(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 創薬プロテオミクスプロジェクト)
  • 水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 遺伝子導入制御プロジェクト)
  • 末松 佐知子(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部 免疫細胞制御プロジェクト)
  • 吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター・薬剤学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生物学的あるいは化学的アプローチにて、疾病治療効果や安定性に優れた機能性人工タンパク質を創出し、これらを医薬品として臨床応用しようとする試みがなされつつある。特に近年のバイオシミラーの開発も相俟って、機能性人工タンパク質を利用した第三世代のタンパク質製剤の開発が注目されている。機能性人工タンパク質は、野生型のタンパク質とは構造が異なるため、医薬品として臨床応用した場合に、抗原性の発揮という新たな問題が明らかになりつつあり、タンパク質製剤のレギュレーションの策定が喫緊の課題となっている。そこで本研究課題では、機能性人工タンパク質製剤のレギュレーションに資する安定性と抗原性の新規評価法を確立することを目的とし研究を行った。
研究方法
タンパク質製剤の抗原性評価方法の確立に向けて、タンパク質の細胞内導入技術、変性タンパク質の質量分析法を用いた評価系の基礎検討、サイトカイン産生法としてのアデノウイルスベクター開発、人工リンパ組織構築法の検討、リンパ管内皮細胞の特性解析およびHLAアレイ構築に向けた基礎検討を行った。
結果と考察
タンパク質を効率よく細胞内に導入するために、導入効率に優れた新規細胞侵入ペプチドを作製した。タンパク質の抗原性を規定するリンパ組織の理解を深めるために、リンパ管内皮細胞の特性評価をプロテオーム解析するとともに、ヒト人工リンパ組織の構築にむけた基礎検討を行い、体内に存在するリンパ組織の特徴をもつ、人工リンパ組織を作製することができた。タンパク質の抗原性惹起メカニズムの一端を解析するために、立体構造が変化した機能性タンパク質の免疫細胞への影響を検討した結果、マクロファージなどの免疫担当細胞から炎症性サイトカインを産生させる可能性が示された。また、次世代の質量分析機を利用することで、タンパク質の立体構造変化を解析できることが明らかとなり、立体構造変化と薬理活性の変化が相関する可能性を示すデータを得た。さらに、タンパク質の機能解析を行うためのツールとして、新規遺伝子ベクターの開発に取り組み、遺伝子発現効率の低い細胞群に対しても高い遺伝子発現を惹起可能な新規ウイルスベクターの構築に成功した。
結論
機能性人工タンパク質製剤の安定性・抗原性を評価するための、上記要素技術を確立することで、レギュレーションに有用な抗原性、安定性等の評価法確立に向けた基礎情報を集積することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果から、現在臨床応用されている生物学的製剤(抗体医薬)の品質評価法、とりわけ抗原性の評価に資する新規評価法の開発への可能性が示された。また、これらの抗原性を示す可能性のある抗体医薬が、免疫細胞に作用し、炎症を惹起する原因になっている可能性が明らかになった。これらの成果は、抗体医薬のレギュレーションの策定に寄与するだけでなく、開発中の抗体医薬の抗原性予測にも利用できる可能性があり、薬物開発のための基礎情報の収集にも貢献できたと考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究は、抗体医薬等のバイオ医薬品の品質評価法の確立を目的としているため、臨床的関連からの成果に該当するものはない。
ガイドライン等の開発
該当無し。
その他行政的観点からの成果
該当無し。
その他のインパクト
該当無し。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamada H., Okamoto T., Kawamura M. et al.
Creation of novel cell-penetrating peptides for intracellular drug delivery using systematic phage display technology originated from Tat transduction domain.
Biol. Pharm. Bull. , 30 (2) , 218-223  (2007)
原著論文2
Shibata H., Kamada H., Nishibata K. et al.
Role of amino acid residue 90 in bioactivity and receptor binding capacity of tumor necrosis factor mutants.
BBA - Proteins and Proteomics. , 1774 (8) , 1029-1035  (2007)
原著論文3
Shibata H., Kamada H., Yoshioka Y. et al.
Creation and X-ray Structure Analysis of the Tumor Necrosis Factor Receptor-1-selective Mutant of a Tumor Necrosis Factor-alpha Antagonist
J.Biol. Chem. , 283 (2) , 998-1007  (2008)
原著論文4
Imai S., Mukai Y., Takeda T. et al.
The effect of protein properties on display efficiency using the M13 phage display system.
Pharmazie , 63 (10) , 760-764  (2008)
原著論文5
Yoshikawa T., Sugita T., Mukai Y.et al.
Organelle-targeted delivery of biological macromolecules using the protein transduction domain: Potential applications for peptide aptamer delivery into the nucleus.
J. Mol. Biol. , 380 (5) , 777-782  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2017-05-30