文献情報
文献番号
202401012A
報告書区分
総括
研究課題名
レセプト情報・特定健診等情報を用いた医療保健事業・施策等のエビデンス構築等に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 明神 大也(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
- 宮脇 敦士(東京大学 大学院医学系研究科)
- 板橋 匠美(東京医療保健大学 総合研究所)
- 小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部 大学院看護学研究科)
- 牧戸 香詠子(東京大学 大学院医学系研究科生物統計情報学講座)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
22,547,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 明神大也
奈良県立医科大学(令和6年4月1日~令和6年9月15日)
→浜松医科大学(令和6年9月16日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、都道府県は医療費適正化計画を策定し、住民の健康保持や医療の効率的提供を推進することが求められている。2024年度からは第4期医療費適正化計画が開始されたが、その中では従来の取組に加え、「効果が乏しい医療の適正化」や「外来医療資源投入量に地域差のある医療の適正化」などが新たな目標として挙げられている。さらに、特定健診・特定保健指導の制度が改正され、成果評価型に移行することを受け、これらの施策の効果を科学的に検証する必要性も高まっている。こうした背景のもと、本研究では、①効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療、②医療資源の投入量に地域差がある医療③疾病の罹患状況や重症疾患の発生状況等を含めた特定健診等の効果測定の3点を目的に、匿名医療保険等関連データベース(NDB)を用いた定量的分析を行った。
研究方法
本研究は、厚生労働省の匿名医療情報提供制度に基づき提供を受けた2022年度のNDB特別抽出データおよび奈良県KDB等の既存データベースを用いて実施された。分析は以下の3領域に分けて行った。
①LVCに関する分析では、急性上気道感染症(ICD-10:J00–J06)に対する抗菌薬の初回外来処方を対象とし、年齢別・地域別・医療機関別に処方傾向を集計した。医療機関の処方集中度を可視化するため、施設別累積割合も算出した。
②医療資源の地域差分析では、臨床検査(特に訪問診療下の超音波検査)、リフィル処方、病理診断(迅速病理診断の実施率)、高性能放射線機器(CT・MRI)の稼働実態などを取り上げた。各指標については、人口あたり検査数、台数あたり収支差などを算出し、都道府県・二次医療圏単位で評価した。
③特定健診等の効果分析では、健診受診群と非受診群を比較するコホート設計を導入。健診歴と心筋梗塞・死亡等の発生との関連を、Intention to TreatおよびPer Protocol解析により評価した。また、健診結果に基づく受診勧奨の後の行動変容についても16パターンに分類し、追跡分析を行った。
①LVCに関する分析では、急性上気道感染症(ICD-10:J00–J06)に対する抗菌薬の初回外来処方を対象とし、年齢別・地域別・医療機関別に処方傾向を集計した。医療機関の処方集中度を可視化するため、施設別累積割合も算出した。
②医療資源の地域差分析では、臨床検査(特に訪問診療下の超音波検査)、リフィル処方、病理診断(迅速病理診断の実施率)、高性能放射線機器(CT・MRI)の稼働実態などを取り上げた。各指標については、人口あたり検査数、台数あたり収支差などを算出し、都道府県・二次医療圏単位で評価した。
③特定健診等の効果分析では、健診受診群と非受診群を比較するコホート設計を導入。健診歴と心筋梗塞・死亡等の発生との関連を、Intention to TreatおよびPer Protocol解析により評価した。また、健診結果に基づく受診勧奨の後の行動変容についても16パターンに分類し、追跡分析を行った。
結果と考察
3領域の分析結果及び考察は以下のとおりである。
①LVC分析の結果、2022年度における風邪に対する抗菌薬処方は約955万件、薬剤費は約60億円と推算され、0~4歳および30代前半で処方率が高い傾向を示した。また医療機関別には、上位5%の施設が全体の43%、上位20%で60%の処方を占めるなど、一部施設への処方集中が明らかとなった。この結果は地域の医療体制や競争環境などを踏まえた効果に乏しい医療のばらつきの要因の探索が、LVCの効果的な削減のために今後必要であると考えられた。
②医療資源投入量の地域差においては、訪問診療下の超音波検査では、地域によって心臓精密検査と全般簡易検査の同時算定率に差が目立ち、訪問診療体制や診療報酬運用の差異が影響していると示唆された。リフィル処方では、約51万件の処方レセプトが確認され、特に都市部で利用率が高かった。病理診断では、乳がん手術における迅速病理診断の実施率に最大50%以上の地域差があり、代替的に病理検査が用いられている地域もあった。放射線機器の分析では、64列以上のCTや3.0T以上のMRIは高い収益性を示す一方、旧式機器では赤字運用が多く、検査件数とのミスマッチが効率性低下を招いている可能性がある。
③特定健診の効果測定では、PP解析を通じて、交絡因子の制御後に死亡率の差異が縮小するなど、健診の効果を厳密に評価する必要性が明らかになった。また、HbA1c高値や血圧高値群の受診行動を追跡することで、健診が受診促進に寄与することが示唆された。心筋梗塞のリスク因子としては、高血糖(HR=1.31)、喫煙(HR=1.25)、脂質異常症(HR=1.22)などが有意に関連していた。これらの知見は、今後の保健指導における重点化や、健診のあり方を見直す上での重要な基盤となると考えられる。
今後は、さらに詳細な領域ごとの指標設定や、他疾患におけるLVC・地域差の検討を実施していく。
①LVC分析の結果、2022年度における風邪に対する抗菌薬処方は約955万件、薬剤費は約60億円と推算され、0~4歳および30代前半で処方率が高い傾向を示した。また医療機関別には、上位5%の施設が全体の43%、上位20%で60%の処方を占めるなど、一部施設への処方集中が明らかとなった。この結果は地域の医療体制や競争環境などを踏まえた効果に乏しい医療のばらつきの要因の探索が、LVCの効果的な削減のために今後必要であると考えられた。
②医療資源投入量の地域差においては、訪問診療下の超音波検査では、地域によって心臓精密検査と全般簡易検査の同時算定率に差が目立ち、訪問診療体制や診療報酬運用の差異が影響していると示唆された。リフィル処方では、約51万件の処方レセプトが確認され、特に都市部で利用率が高かった。病理診断では、乳がん手術における迅速病理診断の実施率に最大50%以上の地域差があり、代替的に病理検査が用いられている地域もあった。放射線機器の分析では、64列以上のCTや3.0T以上のMRIは高い収益性を示す一方、旧式機器では赤字運用が多く、検査件数とのミスマッチが効率性低下を招いている可能性がある。
③特定健診の効果測定では、PP解析を通じて、交絡因子の制御後に死亡率の差異が縮小するなど、健診の効果を厳密に評価する必要性が明らかになった。また、HbA1c高値や血圧高値群の受診行動を追跡することで、健診が受診促進に寄与することが示唆された。心筋梗塞のリスク因子としては、高血糖(HR=1.31)、喫煙(HR=1.25)、脂質異常症(HR=1.22)などが有意に関連していた。これらの知見は、今後の保健指導における重点化や、健診のあり方を見直す上での重要な基盤となると考えられる。
今後は、さらに詳細な領域ごとの指標設定や、他疾患におけるLVC・地域差の検討を実施していく。
結論
1年目の文献レビューやヒアリング、既存のレセプト等のデータベースを用いた分析を受けて、2年目の本報告書はNDBを中心に実施した全国の分析結果を記載した。今後、より深堀した分析を進めていく。
公開日・更新日
公開日
2025-06-27
更新日
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