OECDのSHA手法に適用可能な保健医療支出推計の速報化とCOVID-19関連費用算出に関する研究

文献情報

文献番号
202401009A
報告書区分
総括
研究課題名
OECDのSHA手法に適用可能な保健医療支出推計の速報化とCOVID-19関連費用算出に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
石川 智基(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 満武 巨裕(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本における保健医療支出の国際比較可能性を高めるため、OECDが提唱するSHA(System of Health Accounts)2011に準拠し、以下の課題に取り組むことである。
・COVID-19関連費用の推計方法の検討と実施(2020~2022年度)
・保健医療支出の速報値(t-1)の推計モデルの開発
・地方単独事業費の計上を含めたSHA推計の精緻化
研究方法
 これまで日本では、COVID-19関連費用およびt-1速報値について、SHA基準に準拠した定量的な推計手法について検討されておらず、国際比較の観点から課題となっていた。本研究はこの未対応領域を解消するものであり、4つの研究課題を設定した。
 第一に、COVID-19関連費用について、OECDの推計マニュアルに準拠し、SHA2011の7つのカテゴリ別に整理しながら、2020年度から2022年度にかけての算出を行った。第二に、精度を確保しつつ迅速化するt-1推計モデルを開発するため、既存の概算医療費や介護給付費の月次統計を基に速報値を算出し、その妥当性を検証した。第三に、保健医療支出の精緻化をねらい、COVID-19関連費用や速報推計の検討プロセスで得られた地方自治体による保健医療関連の事業費用情報をもとに、SHAへの追加計上が可能な支出を選定した。
結果と考察
 2019年度から2022年度におけるSHA範囲内のCOVID-19関連費用はそれぞれ2兆5,632億円、5兆4,470億円、5兆3,725億円であり、3年間の累計で約13.3兆円に達した。最も多くの割合を占めるのが医療提供体制支援などを目的とした「その他の関連費用」であるが、年度ともに「ワクチン接種費用」の割合が増加していた。
 概算医療費や介護給付費統計の月報を用いたt-1年度推計モデルを作成した。2022年度では、確報値が62,818億円(対GDP比:11.2%)であるのに対し、t-1モデルによる推計値は63,792億円(対GDP比:11.3%)であり、誤差率は1.55%であった。このように過去データに基づく誤差率評価や誤差要因分解による精度検証を踏まえ、確報値との誤差率を最大でも2%未満に抑えた推計モデルを作成した。 
SHA推計精緻化の一環として地方単独事業費の追加計上を検討した結果、約0.88兆円追加計上した。全体への上乗せは約1.4%に相当する。
結論
 本研究により作成した推計値の一部は、すでにOECDへの報告に用いられ、日本のCOVID-19関連支出に関する情報やt-1速報値が初めて国際統計に実装されている。これにより、国際比較の早期化、広範化が可能となった。また、従来の統計では反映されなかった支出の一部をSHA体系に位置づけることが可能となり、国全体の保健医療支出の網羅性と政策的説明力を向上した。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202401009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究は、SHA2011に準拠したCOVID-19関連費用の推計手法およびt-1速報値モデルを新たに開発し、日本の保健医療支出統計の精緻化と速報性の向上を同時に実現した。国際基準に則った推計手法を構築し、COVID-19下の例外的な財政支出を定量的に整理した。得られた成果はOECD統計に反映され、国際比較可能性の向上に寄与する。
臨床的観点からの成果
 本研究では、公的支出を中心に、COVID-19に関連する治療・予防・医療提供体制整備や感染対策支援費用を体系的に分類・推計することで、配分の実態を明らかにした。治療・検査・ワクチン接種などの公的支出について経年変化を記述し、医療提供体制の整備と予防医療への支出に関する推移を可視化した。今後のパンデミック対応や医療資源配分の議論に資する国際的・社会的意義を有する。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
 本研究の成果は、新たな枠組みが加わった保健医療支出の構造を国際基準に基づき整理・推計したものであり、OECDへの報告が可能となった。特に、COVID-19関連費用や速報値をはじめとした報告の開始により、保健医療に関連する財政や行政施策の議論過程で、国際比較から得られる知見の広範化、早期化に対する貢献が期待できる。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202401009Z