在宅医療現場における多職種連携課題の把握に関する研究

文献情報

文献番号
202401008A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療現場における多職種連携課題の把握に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 就将(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 柏木 聖代(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,305,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、在宅医療のニーズが高まっており、それを担う多職種連携の強化が求められている。2023年6月に閣議決定された規制改革実施計画においても、在宅医療における多職種連携の現状及びその課題について、調査を行うこととされた。2023年度に本研究班は全国50医療圏の全診療所、全訪問看護ステーション、全薬局を対象とした質問紙調査を行い、在宅医療の多職種連携に係る問題は、資源の乏しい地域において、より顕在化しやすい可能性を明らかにした。一方で、同地域において在宅医療を受けている患者の容体悪化を医療職種がどのように認識し、他の医療職と連携しながら対応しているかは十分に理解されていない。本研究では、これら地域での在宅医療における患者の容体変化時における連携の状況、これらの各職種において他の医療職との連携がうまくいかずに最適なタイミングで必要な医療が提供できなかった事例の発生頻度ならびにその詳細を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1)2023年度に実施した全国調査データを用いた詳細分析
2)「医療資源が少ない地域」の診療所、訪問看護ステーション及び薬局を対象とした調査:調査方法は、Webアンケート調査。調査対象は「医療資源が少ない地域」に所在する、診療所、訪問看護ステーション、薬局の管理者とした。最終的に、診療所1588か所、訪問看護ステーション299か所、薬局1212か所を調査対象とした。調査内容は、(1)各施設の基本属性、(2)他の医療職と連携がうまくいかずに最適なタイミングで医療が提供できず患者が不利益を被った事案の発生頻度と発生した事例の詳細、(3)在宅患者の予期しない容体の変化時の対応、(4)所在地域における医療職種間の連携の現状とした。
3)現地視察による関係者へのヒアリング:2025年3月に、沖縄県島尻郡久米島町ならびに長野県伊那郡高森町での現地視察を行い、関係者からヒアリングを行った。
結果と考察
【結果】1)2023年度に実施した全国調査データを用いた詳細分析
(1) 困難事例発生に関連する要因ならびに困難事例の質的記述的分析の結果:診療所が、訪問看護ステーションとの対応で困ったことの具体的な内容としては、「訪問看護師と主治医間の意向・対応の不一致」「訪問看護ステーションとの間での情報共有不足」「訪問看護ステーション側の対応の問題」等が抽出された。訪問看護ステーションが、診療所との対応で困ったことの具体的な内容として、「急変時等に主治医に連絡がとれない」「在宅療養支援診療所の主治医が時間外の対応をしない」「訪問看護指示書を作成してくれない」こと等が抽出された。薬局に関連するものとしては、薬剤の在庫に関するもの等が抽出された。
(2) 訪問看護ステーションにおける夜間・休日・時間外での利用者の急変時の対応: サービス利用を行っていた269件を分析対象とした。夜間・休日・時間外での利用者の急変時の対応に関して、連携医療機関との間で共通の取り決めを交わしている事業所は30件(11.2%)、連携する医療機関ごとに異なる取り決めを交わしている事業所は121件(45.0%)、同じ医療機関であっても医師ごとに異なる取り決めを交わしている事業所は60件(22.3%)、事前取り決めを交わしていない事業所は58件(21.6%)であった。
2)「医療資源が少ない地域」の診療所、訪問看護ステーション及び薬局を対象とした調査:診療所は120件(回収率7.9%)、訪問看護ステーションは52件(回収率17.4%)、薬局は119件(回収率9.8%)から回答を得た。「過去6カ月間に他の医療職種と連携がうまくいかずに、最適なタイミングで医療が提供できず、患者が不利益を被った事案」があったと回答したのは、診療所は6施設、訪問看護ステーションは3事業所、薬局は4施設であった。
3) 現地視察による関係者へのヒアリング:沖縄県久米島町及び長野県高森町ともに、在宅医療を担う関係者が互いに“顔の見える関係”を築いており、連携不足を原因として、患者に不利益が及ぶ事案は生じていないとのことであった。
結論
在宅医療に係る多職種連携強化のためには、明確な事前指示書の作成・共有を含めた地域におけるルールの明確化が重要と考えられた。他方、医療リソースの乏しい地域においては、今後さらに増大が見込まれる在宅医療ニーズに対応するためには、看護師の資質向上が重要であるが、特定行為研修修了に意義があるものと示唆された。同時に、そもそも限られた体制の中で研修受講のハードルも高いという課題が存在することも分かった。
今後、医療提供側のみならず、患者の視点での深堀りとともに、医療密度の低い地域における特定行為研修終了看護師の果たす役割および、厳しい勤務体制の中での受講のあり方などの更なる検討の必要性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202401008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、国際的にもエビデンスが限られている、在宅医療に従事する診療所、訪問看護ステーション、薬局が経験した連携困難事例の発生件数ならびにその具体例の全国規模での把握、さらに、医療資源の少ない地域において、他の医療職種と連携がうまくいかずに、最適なタイミングで医療が提供できず、患者が不利益を被った事案の発生件数ならびに夜間・休日等、時間外における在宅患者の容体急変時の対応をはじめて明らかにした研究であり、学術的・国際的・社会的意義がある。
臨床的観点からの成果
在宅患者の急変時の円滑対応ならびに医療資源の少ない地域における効果的な連携体制に関する示唆が得られ、臨床的観点からも意義ある研究成果が得られたと考える。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
本研究は、規制改革実施計画に位置付けられている政策課題の検討を学術的に確かな方法で行うことを可能とする効果がある。本研究成果は、今後、厚生労働行政において検討される在宅医療における医師、看護師、薬剤師間の連携における課題について、議論の立脚点を提供することになると考える。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202401008Z