医薬品を巡る環境の変化に対応した日本薬局方の改正のための研究

文献情報

文献番号
200940004A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品を巡る環境の変化に対応した日本薬局方の改正のための研究
課題番号
H19-医薬・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 早川堯夫(近畿大学薬学総合研究所)
  • 山口照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 川原信夫(医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 中村 洋(東京理科大学 薬学部)
  • 四方田千佳子(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 宮田直樹(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方(JP)に収載されている通則や一般試験法などについて、医薬品を巡る環境の変化および分析法等の科学技術の進歩に応じた検討を行い、今後の改正のための研究を行った。
研究方法
第16改正日本薬局方以降さらに改定が必要と考えられる項目について、主要な関連領域に応じて調査ならびに実験による検証を行った。
結果と考察
1.局方国際調和関連:局方の国際調和にむけての課題、および国際調和作業の進捗状況をまとめた;2.化学合成医薬品関連:システム適合性に関連して,分析法バリデーションで得られた「真度と精度」の推定値の妥当性に関して,統計学の手法を適用し,消費者危険と生産者危険の観点に立って評価する方法を示した;3.生物薬品関連:バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針について解説した;4.生薬関連:ショウキョウ及びカンキョウの成分含量測定法案について市販品の測定等を行い、妥当性を検証した結果、これらの生薬の成分含量測定法として設定可能であると考えられた;5.医薬品添加剤関連:医薬品添加剤の機能関連特性(FRC)の意義と規格化に関する検討-: USPのPharmacopeial Forumに提案されたGeneral Information <1059> EXCIPENT PERFORMANCEを参考に,USPのFRCに対する対応をEPと比較し,同一試験項目でも試験方法が異なる例があることから、試験法調和の必要性を考察した;6.理化学試験法関連:高周波誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)の応用研究として、金チオリンゴ酸ナトリウム(リウマチ治療薬)をラットに投与し、生体サンプル中のAu(Ⅲ)量を測定することにより、Au(Ⅲ)の生体内移行を捉えることに成功した;7.経皮吸収製剤の放出試験法についてツロブテロール貼付剤をモデルに検討した結果、USPやEPが採用しているパドルオーバーディスク法に加え、シリンダー法を採用、さらに拡散セル法を取り込むことが妥当と考えられた;8.名称関連:JP収載の化学薬品類のうち多価酸塩や多価塩基塩にみられる構造式と化学名の不整合について各国の局方などと照らし合わせた検討を行い、修正が必要な点を明らかにした。
結論
日本薬局方の一般試験法(ICP-AES,放出試験法)、参考情報(分析法バリデーション)、および共通性の高い各条規格(バイオ後続品、生薬)の改正のための検討を行うとともに、国際調和に向けた課題をまとめた。さらに、医薬品添加物各条へのFRCの取込の方策,化学薬品の名称についてまとめた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200940004B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品を巡る環境の変化に対応した日本薬局方の改正のための研究
課題番号
H19-医薬・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 早川堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
  • 小嶋茂雄(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 山口照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 川原信夫(医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
  • 吉岡澄江(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 中村 洋(東京理科大学 薬学部)
  • 松田芳久(神戸薬科大学 薬学部)
  • 四方田千佳子(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 宮田直樹(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方(JP)に収載されている通則や一般試験法などについて、医薬品を巡る環境の変化および分析法等の科学技術の進歩に応じた検討を行い、今後の改正のための研究を行った。
研究方法
改定が必要と考えられる項目について、主要な関連領域に応じて調査ならびに実験による検証を行った。
結果と考察
1.局方国際調和関連:局方の国際調和にむけての課題、および国際調和作業の進捗状況をまとめた;2.化学合成医薬品関連:(1)製薬用水関連の各条規格、関連各項、製薬用水に関する参考情報案を作成し (2)日局参考情報「システム適合性」案を作成し、分析法バリデーションについて解説した;3.生物薬品関連:我が国のバイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針に記載すべき内容について検討し、指針案を作成するとともに、その解説をまとめた;4.生薬関連:5種の生薬の成分含量測定法案、2種の確認試験法案の設定等の研究を行い、局方収載時の試験法として妥当であることを確認した;5.医薬品添加剤関連:医薬品添加剤のFRC(functuinality related characteristics:機能関連特性)の局方記載の意義と記載方法について検討するとともに、FRCの日局への取込方針をまとめた;6.理化学試験法関連:高周波誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)について、金チオリンゴ酸ナトリウム(リウマチ治療薬)を例に、生体サンプルからのAu(III)の選択的捕集・回収条件、定量条件を検討し、ラットに投与、Au(Ⅲ)の生体内移行を捉えることに成功した;7.物性試験法関連:(1)粉体粒度測定(レーザー回折法)における乾式分散法を検討、 (2)吸湿性評価の観点から、各種結晶性及び高分子添加剤について水分の吸脱着特性と水分活性値測定の有用性を検討した;8.製剤試験法関連:(1)溶出試験の校正、および溶出試験器のゆがみの影響を検討、さらに(2)経皮吸収製剤の放出試験を検討し、JPではパドルオーバーディスク法とシリンダー法を採用、さらに拡散セル法を取り込むことが妥当とした;8.名称関連:JP収載あるいはJP収載予定生物由来の医薬品(生物薬品)の本質(構造)情報の記載内容について調査、問題点を整理するとともに、化学薬品類のうち多価酸塩や多価塩基塩にみられる構造式と化学名の不整合を指摘、修正が必要な点を明らかにした 。
結論
日本薬局方の一般試験法、参考情報、および共通性の高い各条規格の改正のための検討を行うとともに、国際調和に向けた課題をまとめた。さらに、医薬品添加物各条へのFRCの取込の方策,医薬品の名称についてまとめた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本薬局方(JP)に収載されている試験法や医薬品各条規格などについて、医薬品を巡る環境の変化および分析法等の科学技術の進歩に応じた記載内容の検討を行い、改正案の根拠となる試験を行いつつ、改正案の作成、改正案の解説の作成、さらには今後の改正に向けた提言を行うための研究を行った。本研究の成果は、JPの第15改正第一追補以降の改正に反映され、またICH(日米欧国際医薬品規制調和会議)やPDG(薬局方調和検討会議)等の国際的な場での日本側の主張に科学的根拠を与える。
臨床的観点からの成果
本研究成果を反映してJPが改正されることにより、収載医薬品の本質や品質を総合的に保証するための規格及び試験法を正確且つ速やかに医療従事者に周知することが可能になるとともに、報告書の公表により改正の背景、意図についての医療関係者の理解が深まる。また、JPは、製薬企業が医薬品を承認申請、品質管理する際の規格および試験法の標準書として活用されているため、JPの改正によって医薬品の品質確保がより確かなものとなり、国民の安心安全、健康確保に大きく貢献する。
ガイドライン等の開発
第15改正第一追補以降のJPの告示の原動力となっているにとどまらず、日米欧国際医薬品規制調和会議(ICH) のICH-Q4B文書「薬局方テキストをICH地域において相互利用するための評価および韓国」および付属文書の作成に反映されている。またバイオ後続品関連ガイドライン(「バイオ後続品の承認申請について」; 2)「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」; 3)「バイオ医薬品の承認申請に際し留意すべき事項について」)などの医薬品品質関連ガイドラインにも反映されている。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、JP改正に関する審議を行う局方委員会(総合委員会、化学薬品委員会、生物薬品委員会、生薬等委員会、医薬品添加物委員会、製剤委員会、理化学試験委員会、物性試験法委員会、医薬品名称委員会、国際調和検討委員会等)での審議に活用され、委員会での議論に科学的根拠を与えるものとなった。すなわち、本研究は、医薬品の承認審査における品質審査の基準、あるいは、監視指導での品質確保の標準書として活用されるJPの改正を通じて、医薬品の品質に関する薬事行政の推進に貢献している。
その他のインパクト
JPの改正を通じて、医薬品の品質に関する情報を国民に適切に伝えることができた。また、国際的学術雑誌や国内の専門誌にも本研究の成果を掲載し、我が国の承認医薬品の品質確保に関する最新動向を広く周知することができた。また、本研究をもとに公表されたバイオ後続品ガイドラインをもとに、既に2つの後続品が承認され、さらに承認申請が続いている。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
41件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
33件
その他成果(普及・啓発活動)
13件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyazaki, T., Yoshioka, S., Aso, Y., Kawanishi, T
Crystallization rate of amorphous nifedipine analogues unrelated to the glass transition temperature,
Int J Pharm, , 336 , 191-195  (2007)
原著論文2
Aso, Y., Yoshioka, S., Miyazaki, T., et al.
Miscibility of nifedipine and hydrophilic polymers as measured by (1)H-NMR spin-lattice relaxation,
Chem Pharm Bull , 55 , 1227-1231  (2007)
原著論文3
N. Hashii, N.Kawasaki, Y. Matsuishi, et al.
Study on the quality control of cell therapy product: Determination of N-glycolylneuraminic acid incorporated into human cells by nano-flow liquid chromatography/Fourier transformation ion cyclotron mass spectrometry
J. Chromatogr. A, , 1160 , 263-269  (2007)
原著論文4
Yamaguchi, T. Uchida, E.
Regulatory Aspects of Oncolytic Virus Products.
CCDT Journal , 7 , 203-208  (2007)
原著論文5
Kojima, T., Onoue, S., Katoh, et al.
Effect of spectroscopic properties on photostability of tamoxifen citrate polymorphs
Int, J. Pharm. , 336 , 346-351  (2007)
原著論文6
Kojima, T., Kato, F., Teraoka, R., et al.
hysicochemical characterization of tamoxifen citrate pseudopolymorphs, methanolate and ethanolate,
Chem. Pharm. Bull., , 55 , 407-411  (2007)
原著論文7
K. Izutsu, C. Yomota, N. Aoyagi.
Inhibition of mannitol crystallization in frozen solutions by sodium phosphates and citrates
Chem. Pharm. Bull , 55 , 565-570  (2007)
原著論文8
Yoshioka, S., Aso, Y., Osako, T., Kawanishi, T.
Wide-ranging molecular mobilities of water in active pharmaceutical ingredient (API) hydrates as determined by NMR relaxation times,
J Pharm Sci , 97 , 4258-4268  (2008)
原著論文9
Kadoya, S., Izutsu, K., Yonemochi, E., et al.
Glass-state amorphous salt solids formed by freeze-drying of amines and hydroxy carboxylic acids: effect of hydrogen-bonding and electrostatic interactions,
Chem Pharm Bull. , 56 , 821-826  (2008)
原著論文10
Itoh, S., Hachisuka, A., Kawasaki, N., et al.
Glycosylation analysis of IgLON family proteins in rat brain by liquid chromatography and multiple-stage mass spectrometry
Biochemistry , 47 , 10132-10154  (2008)
原著論文11
Hashii, N., Kawasaki, N., Itoh, S., et al.
Alteration of N-glycosylation in the kidney in a mouse model of systemic lupus erythematosus: relative quantification of N-glycans using an isotope-tagging method
Immunology  (2008)
原著論文12
Harazono, A., Kawasaki, N., Itoh, S., et al.,
Simultaneous glycosylation analysis of human serum glycoproteins by high-performance liquid chromatography/tandem mass spectrometry
J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. , 869 , 20-30  (2008)
原著論文13
Kojima, T., Katoh, F., Matsuda, Y., et al.
Physicochemical Properties of tamoxifen hemicitrate sesquihydrate,
Int. J., Pharmaceu , 352 , 146-151  (2008)
原著論文14
Izutsu, K., Kadoya, S., Yomota, C., et al.
Freeze-drying of proteins in glass solids formed by basic amino acids and dicarboxylic acids
Chem Pharm Bull, , 57 , 43-48  (2009)
原著論文15
Aso, Y., Yoshioka, S., Miyazaki, T., Kawanishi, T.
Feasibility of 19F-NMR for Assessing the Molecular Mobility of Flufenamic Acid in Solid Dispersions,
Chem Pharm Bull., , 57 , 61-64  (2009)
原著論文16
Sakamoto, T., Matsubara, T., Sasakura, D
Chemical mapping of tulobuterol in transdermal tapes using microscopic laser Raman spectroscopy
Pharmazie, , 64 , 166-171  (2009)
原著論文17
Izutsu, K., Hiyama, Y., Yomota, C., Kawanishi, T.
Near-infrared analysis of hydrogen-bonding in glass- and rubber-state amorphous saccharide solids,
AAPS PharmSciTech, , 10 , 524-529  (2009)
原著論文18
Shibata, H., Saito, H., Yomota, C., Kawanishi, T.
Pharmaceutical quality evaluation of lipid emulsions containing PGE1: alteration in the number of large particles in infusion solutions
Int J Pharm , 378 , 167-176  (2009)
原著論文19
Sakamoto, T., Portieri, A., Taday, P. F., et al
Detection of tulobuterol crystal in transdermal patches using terahertz pulsed spectroscopy and imaging,
Pharmazie, , 64 , 361-365  (2009)
原著論文20
Izutsu, K., Kadoya, S., Yomota, C.
Stabilization of protein structure in freeze-dried amorphous organic acid buffer salts,
Chem Pharm Bull , , 57 , 1231-1236  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-