文献情報
文献番号
202401005A
報告書区分
総括
研究課題名
総合的な診療能力を有する医師の活躍推進方策に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小林 大輝(東京医科大学 茨城医療センター総合診療科)
研究分担者(所属機関)
- 福井 次矢(聖マリア病院)
- 小松 康宏(群馬大学)
- 石丸 裕康(関西医科大学)
- 有岡 宏子(聖路加国際大学 聖路加国際病院一般内科)
- 山田 雅子(学校法人聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
- 比良野 圭太(京都大学 医学研究科人間健康科学系専攻)
- 大杉 泰弘(藤田医科大学 連携地域医療学)
- 久我 弘典(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
- 前野 哲博(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
3,483,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 福井次矢
所属機関名:東京医科大学 (令和3年10月1日~6年9月30日)
→ 所属機関名:聖マリア病院 (令和6年10月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は以下3つからなる。
① 総合診療専門医に求められる役割の多角的調査研究:本研究の目的は、総合診療医の役割を多角的に調査し、その知見を育成や確保に活かすことである。
② 主要国の総合診療医の育成・確保、役割、生涯教育に関する調査:本研究は、総合診療医の確保と育成が喫緊の課題となる中、特に米国の制度や教育の現場に着目し、その実態を明らかにすることで、日本の制度設計に資する提言を導くことを目的とした。
③ 専門領域医師の総合的な診療能力獲得プログラムの効率化に関する研究:本研究の目的は、地域で活躍する総合診療医の数を増やすために、すでに他の専門領域で診療に従事している医師がリカレント教育を通じて総合診療医としての能力を獲得し、地域医療に貢献できるような仕組みを構築することである。
① 総合診療専門医に求められる役割の多角的調査研究:本研究の目的は、総合診療医の役割を多角的に調査し、その知見を育成や確保に活かすことである。
② 主要国の総合診療医の育成・確保、役割、生涯教育に関する調査:本研究は、総合診療医の確保と育成が喫緊の課題となる中、特に米国の制度や教育の現場に着目し、その実態を明らかにすることで、日本の制度設計に資する提言を導くことを目的とした。
③ 専門領域医師の総合的な診療能力獲得プログラムの効率化に関する研究:本研究の目的は、地域で活躍する総合診療医の数を増やすために、すでに他の専門領域で診療に従事している医師がリカレント教育を通じて総合診療医としての能力を獲得し、地域医療に貢献できるような仕組みを構築することである。
研究方法
① 医師や看護師、介護士、療法士、ケアマネジャーなど多職種が所属する19の団体に対し、総合診療医に対する期待や役割認識、現場での過不足に関するオンライン調査を実施する体制を整備した。調査項目は全38項目に及び、倫理審査は聖路加国際大学の倫理審査委員会にて承認された。
②米国ハワイ州を中心に、家庭医療や腫瘍内科の専門家に対して半構造化インタビューを行い、専門医制度、教育課程、地域連携、政策支援の現状を調査した。さらに、総合診療医のキャリア選択に対する政策的介入の有効性を検討するためにシステマティックレビューを実施し、その知見をもとに日本の育成制度改革に向けた提言を検討した。
③従来の同期型ライブ研修だけでは限界があることから、本研究では、非同期型e-learningによるオンデマンド学習と、短時間の同期型ライブ研修を組み合わせたハイブリッド型研修プログラムを開発・導入し、その教育効果の向上と効率化を検証した。
②米国ハワイ州を中心に、家庭医療や腫瘍内科の専門家に対して半構造化インタビューを行い、専門医制度、教育課程、地域連携、政策支援の現状を調査した。さらに、総合診療医のキャリア選択に対する政策的介入の有効性を検討するためにシステマティックレビューを実施し、その知見をもとに日本の育成制度改革に向けた提言を検討した。
③従来の同期型ライブ研修だけでは限界があることから、本研究では、非同期型e-learningによるオンデマンド学習と、短時間の同期型ライブ研修を組み合わせたハイブリッド型研修プログラムを開発・導入し、その教育効果の向上と効率化を検証した。
結果と考察
① 研究は計画通り、むしろ一部は前倒しで進行しており、2025年3月時点で6団体が協力を承諾し、そのうち4団体から既に会員への調査参加依頼が行われている。これにより、医療・介護職種間での総合診療医に対する役割認識の差異を明らかにする基盤が整備され、今後の制度設計や教育政策の根拠となるデータ収集の足がかりが得られた。
②インタビューの結果、米国では家庭医療が専門領域として明確に確立されており、地域医療や多職種連携、緩和ケア、がん診療の初期対応など多様な研修内容が制度的に支援されていることが確認された。特に大学附属病院を持たないハワイ州においても、地域医療機関との連携により質の高い研修が実現されていた。一方で、日本では総合診療専門医のキャリアパスの不透明さや報酬体系、資格の社会的評価の低さが、医学生や若手医師の志向を妨げているという課題が浮き彫りとなった。また、文献レビューにより、包括的な教育プログラムや地域密着型臨床経験、優れたロールモデルの存在が、キャリア選択において有効な因子であることも明らかになった。
③具体的には、moodleという国際的に広く利用されているe-learningシステムを用いて非同期学習用のプラットフォームを構築し、教材作成用にはMicrosoft Wordによる汎用フォーマットを開発した。この教材をmoodleに移植するためのノウハウと業務フローも整備し、行動変容や小児領域の研修においてハイブリッド形式のトライアルを実施した。また、オンライン上での研究同意取得フォームの整備と、受講開始時から修了後に至るまでの複数タイミングでの継続的データ収集体制を確立し、筑波大学の倫理委員会の承認も得た。
②インタビューの結果、米国では家庭医療が専門領域として明確に確立されており、地域医療や多職種連携、緩和ケア、がん診療の初期対応など多様な研修内容が制度的に支援されていることが確認された。特に大学附属病院を持たないハワイ州においても、地域医療機関との連携により質の高い研修が実現されていた。一方で、日本では総合診療専門医のキャリアパスの不透明さや報酬体系、資格の社会的評価の低さが、医学生や若手医師の志向を妨げているという課題が浮き彫りとなった。また、文献レビューにより、包括的な教育プログラムや地域密着型臨床経験、優れたロールモデルの存在が、キャリア選択において有効な因子であることも明らかになった。
③具体的には、moodleという国際的に広く利用されているe-learningシステムを用いて非同期学習用のプラットフォームを構築し、教材作成用にはMicrosoft Wordによる汎用フォーマットを開発した。この教材をmoodleに移植するためのノウハウと業務フローも整備し、行動変容や小児領域の研修においてハイブリッド形式のトライアルを実施した。また、オンライン上での研究同意取得フォームの整備と、受講開始時から修了後に至るまでの複数タイミングでの継続的データ収集体制を確立し、筑波大学の倫理委員会の承認も得た。
結論
① 本研究によって構築された調査体制と得られた知見は、今後、大学や教育機関、学会、行政、地域医療機関などと連携し、総合診療医の制度設計、教育政策、実務研修の充実に活用される予定である。
②これらの成果は、日本における総合診療医制度の改善に向けた重要な示唆を与えるものであり、今後はがん診療や緩和ケアなどを含む包括的ケア能力の育成に加え、制度内での資格の明確化、地域との協働体制の整備、教育的インセンティブの導入を通じて、持続的な総合診療医の育成が期待される。
③非同期型と同期型を組み合わせたハイブリッド型教育プログラムの枠組みとその実践モデルを開発したことで、他の研修テーマへの応用の可能性が広がった。今後はノンテクニカルスキルを含む全ての研修分野においてこの形式の導入を進め、その教育効果の実証を通じて、持続可能かつ効果的な医師研修の構築が期待される。
②これらの成果は、日本における総合診療医制度の改善に向けた重要な示唆を与えるものであり、今後はがん診療や緩和ケアなどを含む包括的ケア能力の育成に加え、制度内での資格の明確化、地域との協働体制の整備、教育的インセンティブの導入を通じて、持続的な総合診療医の育成が期待される。
③非同期型と同期型を組み合わせたハイブリッド型教育プログラムの枠組みとその実践モデルを開発したことで、他の研修テーマへの応用の可能性が広がった。今後はノンテクニカルスキルを含む全ての研修分野においてこの形式の導入を進め、その教育効果の実証を通じて、持続可能かつ効果的な医師研修の構築が期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-06-27
更新日
-