文献情報
文献番号
202401003A
報告書区分
総括
研究課題名
小児医療費無償化が医療利用と健康アウトカムに与える影響:因果効果と異質性の評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
福間 真悟(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 比良野 圭太(京都大学 医学研究科人間健康科学系専攻)
- 秋田 智之(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 杉山 文(広島大学大学院 医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 堤 悠介(独立行政法人国立病院機構水戸医療センター救急科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,469,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
エビデンスに基づく政策決定(EBPM)を推進するため、小児医療費無償化制度が医療利用および健康アウトカムに与える因果効果とその異質性を、疑似実験デザインである回帰不連続デザインを用いて評価することを目的とした。信頼性の高い制度評価を通じて、効果的な政策設計に資するエビデンスを創出する。
研究方法
全国規模の保険者データベースに回帰不連続デザインを用いて、小児医療費無償化制度が医療利用、健康アウトカムに与える周辺因果効果(基準制限年齢周辺における因果効果)を推定した。小児医療費無償化の対象となる可能性があるすべての小児から、医療費上位1%の者を除外して解析対象とした。生年月日と小児医療費無償化制度の基準生年月日(それ以前に生まれた場合は無償化制度の対象とならない日付)の差分を割り付け変数とした。主なアウトカム変数は、医療利用(外来受診日数、医療費)、健康アウトカム(入院回数)とした。Sharp型回帰不連続デザインを用いて、各アウトカムの平均値の差(小児医療費無償化による外来医療利用の変化、入院回数の変化等)を推定した。
さらに、臨床仮説に基づくサブグループ解析及び、機械学習を用いた探索によって、対象者特性による小児医療費無償化の影響に関する異質性を検討した。
さらに、臨床仮説に基づくサブグループ解析及び、機械学習を用いた探索によって、対象者特性による小児医療費無償化の影響に関する異質性を検討した。
結果と考察
全国規模の保険者データ(解析対象者数45万人)を用いた回帰不連続デザインにより、小児医療費無償化制度の対象から外れると、外来受診日数(-1.04日/年)、時間外受診(-0.14回/年)、総医療費(-5,192円/年)、抗アレルギー薬処方(-0.06回/年)、気管支喘息薬処方(-0.04回/年)がいずれも統計的に有意に減少した。一方で入院回数には有意な変化が見られなかった。
また、小児医療費無償化制度が医療利用へ与える影響には対象者の特性によって違いがあり(異質性)、前年度の医療利用が多い群や年齢基準の高い自治体で大きかった。
小児医療費無償化制度が医療利用にどのような影響を与えているか、適切な因果推論の手法で検討することによって、制度設計の改善に反映することができる。外来受診日数、総医療費は医療利用の総合的指標として解釈される。医療リソースの最適な配分という視点からは、外来受診を過剰に増加させず、入院を増加させないことが重要である。
抗アレルギー薬、抗生物質など、特定のプラクティスにおいては、今回の結果を活用して、医療の適正使用につながるような制度設計が必要である。
また、小児医療費無償化制度が医療利用へ与える影響には対象者の特性によって違いがあり(異質性)、前年度の医療利用が多い群や年齢基準の高い自治体で大きかった。
小児医療費無償化制度が医療利用にどのような影響を与えているか、適切な因果推論の手法で検討することによって、制度設計の改善に反映することができる。外来受診日数、総医療費は医療利用の総合的指標として解釈される。医療リソースの最適な配分という視点からは、外来受診を過剰に増加させず、入院を増加させないことが重要である。
抗アレルギー薬、抗生物質など、特定のプラクティスにおいては、今回の結果を活用して、医療の適正使用につながるような制度設計が必要である。
結論
小児医療費無償化制度の対象から外れることによって、外来受診日数、時間外受診日数、総医療費、抗アレルギー薬処方、気管支喘息薬処方は減少することが示された。入院回数については関連を認めなかった。外来医療利用への影響が大きな集団は、前年度医療利用の多い集団、年齢基準の高い集団であった。
本研究結果を医療利用の適正化につながる補助制度設計に活用することが重要である。
本研究結果を医療利用の適正化につながる補助制度設計に活用することが重要である。
公開日・更新日
公開日
2025-06-27
更新日
-