腸管粘膜免疫組織パイエル板上皮細胞バリアの分子基盤に立脚した迅速かつ簡便な食物アレルギー予測評価系の開発

文献情報

文献番号
200939058A
報告書区分
総括
研究課題名
腸管粘膜免疫組織パイエル板上皮細胞バリアの分子基盤に立脚した迅速かつ簡便な食物アレルギー予測評価系の開発
課題番号
H21-食品・若手-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昌夫(大阪大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,409,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、claudin(CL)発現抑制性転写因子Snailを利用してCL発現低下をレポーター遺伝子発現によって迅速かつ簡便に評価する系を構築し、本評価系を出発材料として、CLバリア評価系としての妥当性を検証、最適化し、腸管粘膜免疫組織パイエル板(PP)上皮細胞バリアを指標にした食物アレルギーリスク評価系を構築することを目的とする。
研究方法
PPで高発現しているCL4に着目し、CL4遺伝子のゲノム領域周辺で進化的に保存されており、Snail結合配列を含む転写開始点上流約600 bpをクローニングした。次に、本クローニング領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に結合したコンストラクトを作製した。本レポーター遺伝子の発現を解析するために、MCF7細胞、HaCat細胞、HT1080細胞、SiHa細胞におけるSnailおよびCL4発現量を解析し、作成したレポータープラスミドのSnail応答性を検討した。また、作成したレポータープラスミドをMCF7細胞に導入し、安定発現細胞株の樹立を試みた。
結果と考察
種々の細胞におけるSnailおよびCL4発現量を解析したところ、Snail発現が低くCL4発現の高い細胞株(MCF7細胞、HaCat細胞)、Snail発現が高くCL4発現の低い細胞株(HT1080細胞、SiHa細胞)を見出した。これらの細胞を用いてCL4発現レポータープラスミドの発現を解析したところ、Snail発現量依存的にレポーター遺伝子の発現は抑制されていたことから、Snail依存的なレポーター遺伝子発現系が構築できたものと推察された。そこで次に、当該プラスミドをMCF7細胞に導入した安定発現細胞株の樹立を試みた。CL4の発現抑制活性が報告されているサイトカインとしてTGF-bが知られている。そこで、TGF-bを用いて樹立した細胞株のレポーター遺伝子発現を解析したところ、複数の株で有意なレポーター遺伝子発現抑制が観察されたことから、CL4発現変動をレポーター遺伝子発現によりモニターするシステムの構築に成功した。
結論
本年度は、Snail依存的なレポーター遺伝子発現系を構築し、当該レポーター遺伝子安定発現細胞の樹立し、CLバリア評価系の構築に向けた基盤を確立した。これらの成果を踏まえ、平成22年度は引き続きCLバリア評価系の最適化を推し進めると同時に、食品添加物のCLバリア制御活性の解析を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-20
更新日
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